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藤原岳(鈴鹿セブンマウンテン)で花の百名山を楽しむ|深掘り登山ガイド 鈴鹿山脈 #03
東海地方の登山者に人気の鈴鹿山脈は、南北に60kmも連なる大きな山域です。随所に露出する奇岩や、花の百名山にも選ばれているほど豊かな高山植物など見所も盛りだくさん。
その鈴鹿の魅力を中京圏以外の登山者にも広めたいと手を上げてくれたのが地元に住むYAMAPユーザーの山本都紀さん。地元民ならではの温泉やグルメ情報も特別に教えてくれました。
今回は、鈴鹿セブンマウンテンの中で一番「お花」が楽しめる山と言われる、藤原岳を紹介します。
目次
鈴鹿山域の中でもお花好きが集まる山が藤原岳
藤原岳の標高は1144m。鈴鹿セブンマウンテンの中では一番北に位置していて「花の百名山」に選定されています。フクジュソウの群生地としても知られていて、花のシーズンには観光バスツアーも運行されるほどたくさんの人で賑わいます。一般的なルートは大貝戸道からの往復で、登山口には立派な休憩所やトイレもあり、駐車場も無料です。
早春の頃、八合目あたりの斜面にフクジュソウの群生が見られます。頂上付近には山荘(藤原山荘と呼ばれる避難小屋)があって風の強い日など室内でヤマメシを作ることもできます。山頂へは山荘から20分ほどです。
実は藤原岳という名称は、山頂の標柱のある展望台を含むいくつかのピークの総称で、最高点は藤原岳ではなく、少し北に位置する天狗岩で標高は1171m。展望台からの眺望は全方位のパノラマが待っていて、西には御池岳の広大なテーブルランドが広がり、南にはなだらかな山容の竜ヶ岳を望むことができます。
孫太尾根は、高山植物の宝庫として人気上昇中
私も春になるとお花の達人さんの案内で毎年一緒に歩いています。春には「春の妖精」という意味のスプリングエフェメラル(春先に花をつけるとあとは地下で過ごす花)、フクジュソウやカタクリ、ミスミソウなどが。夏にはバイケイソウやエイレンソウ、秋にはトリカブトなどと春から秋にかけてたくさんのお花が楽しめます。
登山口は集落の墓地からのスタートです。もともとはバリエーションルートだったために駐車場などは整備されていません。10台ほど駐車できるスペースはありますが、住民の方の迷惑にならないようマナーを守りましょう。
なお、フクジュソウの開花時期、各登山道の駐車場は埋まってしまうことが多いので鉄道利用もおすすめです。その場合、今回紹介のルートとは別の大貝戸ルートが便利。三岐鉄道終点の西藤原駅から登山口まで歩いて15分ほどです。
登山口からしばらくの間、樹林帯を歩くと孫太の尾根道へ。 その途中にも季節の花々があちこちに咲いていて、カメラを抱えた私たちはなかなか前へ進むことができません。ひとつ花を見つけてはシャッターを切り、またひとつ見つけてはほふく前進です。私は毎年訪れてはいるものの藤原岳に咲く花は数十種類。なかなか名前を覚えられず、せいぜい毎年1~2種類の花の名前を覚えるのが精いっぱいです。
尾根道を抜けて多志田山からは一度下って目の前に近づいた山頂を目指します。この孫太尾根、実はなかなかのロングルートなのです。それに加えてお花たちの足止めです。この日もコースタイムなら3時間ちょっとの山頂まで、なんと5時間! 出かけられる時はなるべく余裕を持った登山計画を立ててくださいね。
山頂が見えるようになったら、最後の難所ザレザレの急斜面を登ります。途中にフクジュソウの群生地があってまたまたシャッタータイム。足場が悪いので転げ落ちないように要注意です。ざれ場を抜け振り返ると歩いてきた尾根が一望出来ます。
お花の達人市川さんと行く藤原岳
山のお花は小さいです。写真で見るのとは違って実際の花はびっくりするほど小さいんです。初めて藤原岳でフクジュソウを見たとき、あまりの小ささに驚いたことを覚えています。菊の花ほどの大きさだと思っていたのだから今思うと笑えます。そんな私に一緒に歩き藤原岳に咲くお花を教えてくれる「鈴鹿のお花の達人 市川英子さん」。普通に歩いていれば見落としてしまいそうな小さな花も彼女は見逃しません。
「ほら、あそこに大きな岩があるでしょ?そこに1輪だけヒロハノアマナが咲いているよ」と。
見逃さないどころか花の声が聞こえるようなのです。そして、どの花がどのあたりに咲いているかも市川さんの頭の中の地図にはしっかりと刻み込まれているのです。
フクジュソウが咲く山として人気の藤原岳ですが、「花の百名山」の名の通り季節に咲く数十種類小さな名もなき高山植物を探しながら歩く楽しさも教えてもらいました。
ひとりで行く山歩きも楽しいけれど、山を熟知した達人と歩くと新しい発見があったり知識が増えたり楽しさも倍増します。いつか私も彼女のように花の声を聴くことができるのかな? そう考えながら足元の小さな花を探して歩くのでした。
おまけ
西側に位置する御池岳から眺めた藤原岳。町から眺める東側斜面は砕石により山肌が削り取られていてなんとも痛々しい姿をしているのです。砕石が進めば山や自然は山に咲く花がどうなってしまうんだろう。本来は緑豊かな山だったはずの藤原岳を見つけて嬉しくなったのでこの一枚をあげておきます。
下山後のお楽しみ温泉情報
六石温泉「あじさいの湯」は宇賀敬キャンプ場から車約15分。ホテルに併設する小さな温泉ですが。混雑も少なくゆっくりと利用できます。営業時間は13時~22時(平日は16時~22時)。入用料金は800円。穴場でおすすめです。
フリーライター
山本 都紀
登山歴4年目のご当地ヤマッパー。初めて歩いた熊野古道便石山「象の背」からみた絶景に背中のスイッチが入りました! 雪山スタートという規格外ながら山の魅力に取りつかれ3年半で登った山は200座。日本百名山38座。初心者目線・女子目線でホームマウンテン鈴鹿の魅力をお伝えします!伊勢志摩在住フリーライター。
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