投稿日 2025.03.28 更新日 2025.03.28

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富士山が見える山|季節の花と楽しめる山特集

日本最高峰であり、世界文化遺産にも選定されている富士山(3,776m)。堂々とそびえるその姿は古来から数多くの文芸作品にも登場し、日本人にとっては精神的に大きな存在です。

関東・甲信・東海地方など、さまざまな山から富士山を望めますが、今回は季節の花と富士山の眺望の両方が楽しめる、とっておきの山を紹介します。

登山中の稜線、あるいは山頂から、美しい富士山の姿を望むことができれば、おのずと高揚感や畏怖の念など、何かしらの感情が芽生えることでしょう。

目次

【神奈川県】ミツバ岳(834m)|可憐なミツマタ群落と富士山

ミツバ岳のミツマタと富士山(ふじもんさんの活動日記

和紙の原料として有名なミツマタ。和紙になるのは樹皮の部分で、その強い繊維質により強度のある良質な和紙ができるため、紙幣にも利用されています。

春先になると、その名の通り3本に分かれた枝先に可憐な黄色い花が咲きます。複数の枝があるため一株に数十輪もの花が咲くことがあり、見応え抜群です。

同じく丹沢のミツマタ名所として有名な不動尻(424m)をはじめ、多くの群生地は森の中や谷間となりますが、山頂付近のミツマタ群落と富士山を同時に楽しめるのがミツバ岳(別名:大出山、834m)です。

コースの随所で見られるミツマタ(初音ミク3901さんの活動日記

ミツマタの花はミツバ岳山頂付近だけではなく、北に連なる権現山(世附=よづく=ごんげんやま・1,018m)やスタート・ゴール地点となる丹沢湖畔への稜線の至るところで、例年3月中旬〜4月上旬にかけて楽しむことができます。

ただしこのルートは登山道が不明瞭な場所もあり、道迷いには注意が必要。初心者は経験者同行で歩くのがおすすめ。さらに経験者でも、地図やYAMAPなどの登山GPSアプリで、常に現在地を把握しながら歩きましょう。

コース情報

浅瀬入口バス停-ミツバ岳登山口-大出山-権現山-菩薩山-尾園ノ頭 周回コース

コース定数:21(コース定数とは
コースタイム:5時間
歩行距離:7.3km
累計標高差(上り):1,025m
累計標高差(下り):1,026m

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【静岡県・山梨県】白鳥山(567m)|恋人の聖地とミツマタの群落

恋人の聖地モニュメントからの富士山(miyatadaさんの活動日記

静岡・山梨の県境にそびえる白鳥山(しらとりやま、567m)は、山梨百名山でもっとも低い山でありながら関東の富士見百景に選ばれている展望峰。堂々とそびえる富士山はもちろん、駿河湾や富士川を見下ろすことができます。

山頂は恋人の聖地(恋人の聖地プロジェクト選)となっており、ハート型にくり抜かれたモニュメントが設置されています。このハート越しに望む富士山は、白鳥山ならではの絶景です。

白鳥山森林公園のミツマタ(トモさんの活動日記

今回は静岡県からのモデルコースを紹介しますが、山梨県側からは山頂直下の白鳥山森林公園駐車場までクルマでアクセス可能です。この場所はミツマタの群生地となっており、静岡県側から登った場合でも山梨県側に少し降りてみるのがおすすめです。

例年3月中旬〜4月上旬の見頃には駐車場付近から山頂へと続く遊歩道沿いの随所で可憐な黄色い花を楽しむことができ、山頂に着くと一気に広がる富士山のパノラマとの対比が印象的です。

コース情報

白鳥山 往復コース

コース定数:11(コース定数とは
コースタイム:2時間50分
歩行距離:3.5km
累計標高差(上り):496m
累計標高差(下り):496m

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【山梨県】お伊勢山(550m)|低山ながら桜と富士山の見事な調和

お伊勢山の桜と富士山(ジーコさんの活動日記

全室露天風呂付き客室の宿として温泉好きには憧れの大月市・真木(まぎ)温泉。その近くにあるのがお伊勢山(550m)。大月市が選定している秀麗富嶽十二景・20座のうち、もっとも低いなだらかな山です。

この山の魅力は何といっても、山頂周辺に植えられた約3,000本の桜です。例年3月下旬から4月中旬には山肌全体が薄いピンク色に染まり、その奥にそびえる残雪の富士山との調和を楽しむことができます。

大神社の鳥居と富士山(ともさんの活動日記

お伊勢山は山頂周辺や山麓に5つの社寺があり、これらを巡る五福めぐりも体験できます。山頂の大神社(天照皇太神宮)は家内安全、愛宕神社は火災鎮護、天満宮は学業成就、根神神社は家庭円満にご利益があり、山麓の福正寺を締めくくりに参詣します。

桜・富士山だけでなく神社の社殿や鳥居など、まさに日本を代表する風景を一度に楽しむことができる山なのです。

コース情報

上真木バス停-大神社-お伊勢山-花咲山登山口-花咲山-叉平 縦走コース

コース定数:13(コース定数とは
コースタイム:3時間30分
歩行距離:6.5km
累計標高差(上り):494m
累計標高差(下り):637m

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【山梨県】百蔵山(1003m)|桃太郎伝説の山頂から見る桜と富士山

百蔵山の桜と富士山(mihoさんの活動日記

前項の秀麗富嶽十二景にも選定されているのが、百蔵山(ももくらやま、1,003m)です。位置的に三ッ峠山(1,785m)をはじめとする御坂山塊などを前景に、奥行きのある富士山の眺望を楽しむことができます。

山頂付近には桜が植えられており、例年4月中旬に見頃を迎えます。富士山と桜のコンビネーションを楽しめる場所は数多くありますが、標高1,000mを超えた山頂からの風景は、百蔵山ならではの絶景です。

桃太郎が鬼退治をしたという岩殿山(資料によって記述が異なる場合も)(撮影:鷲尾 太輔)

大月市は桃太郎伝説の舞台であるとの伝承も。おばあさんが洗濯中に、桃の木が多かった百(桃)蔵山から転げ落ちて流れてきた大きな桃を拾ったのは、市内を流れる桂川。周辺には犬目・鳥沢・猿橋など家来の動物ゆかりの地名が残っています。

同じく秀麗富嶽十二景に選定されている大月駅南側の九鬼山(くきやま、970m)、大月駅北側の岩殿山(いわどのさん、634m)にも桃太郎伝説が伝わり、桃太郎一行の鬼退治と深く関わりのある山と考えられています。市内にはほかにも、桃太郎伝説ゆかりの地が点在しています。

コース情報

【周回】百蔵山(JR猿橋駅)

コース定数:19(コース定数とは
コースタイム:4時間20分
歩行距離:8.7km
累計標高差(上り):823m
累計標高差(下り):823m

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【山梨県】蛾ヶ岳(1278m)|四尾連湖の湖畔を彩る桜と富士山

四尾連湖畔の桜(ばんびさんの活動日記

かつて「尾崎龍王」という龍神が棲み、人々が雨乞いに訪れたという四尾連湖(しびれこ)。現在はキャンプ場が整備されており、人々の憩いの場になっています。湖畔に植えられた桜は例年4月中旬〜下旬に見頃を迎え、静かな湖面に美しい桜並木が映り込みます。

富士山周辺にはふもとっぱらや浩庵など人気のキャンプ場が点在していますが、四尾連湖には水明荘・龍雲荘というキャンプ場があり、比較的静かに過ごすことが可能。女子高生がキャンプを楽しむ様子を描いた人気アニメ『ゆるキャン△』の舞台にもなっています。

蛾ヶ岳からの富士山(せらんらんさんの活動日記

四尾連湖の南東に連なる稜線上にあるのが、蛾ヶ岳(ひるがたけ、1,278m)。山梨百名山・日本百低山にも選ばれている名峰です。山頂からは大迫力の富士山はもちろん、眼下の四尾連湖や、振り返れば甲府盆地や八ヶ岳の山並を望むことができます。

下山途中に立ち寄る大畠山(おおばたけやま、1,118m)にも展望案内板が設置されており、南アルプスや奥秩父の山並を一望。桜シーズンに登れば、残雪をまとった日本有数の高峰の展望台となります。

コース情報

蛾ヶ岳-大畠山-四尾連峠 縦走コース

コース定数:15(コース定数とは
コースタイム:4時間10分
歩行距離:6.9km
累計標高差(上り):580m
累計標高差(下り):580m

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【山梨県】ハンゼノ頭(1686m)|初夏を告げるツツジ群落と残雪の富士山

ヤマツツジと富士山(nobo1274さんの活動日記

山梨県甲州市の国道411号線沿いに位置する柳沢峠(1,481m)。大菩薩連嶺から続く笛吹川(富士川支流)と多摩川の分水嶺となる稜線上にある峠です。この西側に広がるのが三窪高原で、関東の富士見百景にも選ばれています。

三窪高原にはさまざまなツツジが群生しており、その美しい花々と富士山のコントラストが魅力です。ピンク色のミツバツツジは例年5月下旬〜6月上旬、真紅のヤマツツジは例年6月上旬から中旬に見頃を迎えます。

ヤマツツジのトンネルを歩くコース(HAREOTOKOさんの活動日記

柳沢峠からは三窪高原を経てハンゼノ頭(1,686m)、柳沢ノ頭(1,671m)を周回する 標高差の少ないコースがあり、ツツジの群落の中を散策しながら手軽な山歩を楽しむことができます。

コース上からの展望も良好。富士山はもちろん、南アルプス連峰や奥秩父の山々を一望できます。今回紹介するコースの中ではもっとも体力的にやさしいので、家族連れや登山初心者同行の方にもおすすめです。

コース情報

柳沢峠-ハンゼノ頭 周回コース

コース定数:6(コース定数とは
コースタイム:1時間40分
歩行距離:3.3km
累計標高差(上り):273m
累計標高差(下り):271m

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【山梨県】甘利山(1742m)|南アルプス前衛の山から見るレンゲツツジと富士山

早朝の甘利山から望むレンゲツツジと富士山(太陽さんの活動日記

初夏の花登山で代表的な植物のひとつが、鮮やかな赤い花を咲かせるレンゲツツジ。毒性があるため野生動物による食害を受けにくく、さまざまな山でその群落を鑑賞することができます。

そんなレンゲツツジを前景に富士山を望むことができるのが、山梨百名山にも選定されており、南アルプスの前衛峰でもある甘利山(あまりやま、1,742m)。6月上旬から中旬にかけて、見頃を迎えます。

千頭星山付近からのオベリスク(Beniさんの活動日記

登山口(約1,640m)までは車でアクセス可能。至近には宿泊施設・グリーンロッジもあります。見頃は梅雨時にかかりますが、早朝なら梅雨の季節でも晴天率が高いため、ここに前泊すれば早朝からレンゲツツジと富士山の絶景の絶景が楽しめます。

甘利山だけであれば1時間足らずで往復可能ですが、歩き足りなければ同じく山梨百名山に選定されている千頭星山(せんとうぼしやま、2,138m)まで足を延ばすのもおすすめ。山頂付近からは、日本百名山・鳳凰山の一座である地蔵岳(2,764m)のシンボルである岩塔・オベリスクを間近に望むことができます。

コース情報

甘利山-千頭星山(広河原駐車場)往復コース

コース定数:16(コース定数とは
コースタイム:4時10分
歩行距離:7km
累計標高差(上り):661m
累計標高差(下り):661m

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季節の花と富士山を楽しもう!

金山からのツツジと富士山(テッペイさんの活動日記

登山の最中、富士山が眺望できるだけでも嬉しいものですが、春から初夏に可憐な花々と富士山との調和を楽しむことができる山は、まだまだたくさんあります。

特に5月中〜下旬頃までの富士山はたっぷりと雪をまとっており、カラフルな花とのコントラストがより引き立つ季節。

ぜひ富士山を望む花登山へ、出かけてみませんか。

執筆=鷲尾 太輔(山岳ライター・登山ガイド)
トップ画像=ともーさんの活動日記

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