登る
渓谷×手軽な山歩きで絶景と癒しを両どり|東京近郊の山歩道(さんぽみち)7選
絶景と癒しをダブルで楽しめる「渓谷×山歩」。夏は涼しさ、秋には紅葉を求めてー。夏休みやシルバーウィークの行き先としてもおすすめできる、東京近郊の素敵な山歩道(さんぽみち)を紹介します。
※ 山歩(さんぽ)とは、山や身のまわりの自然の中を気持ちよく歩くこと。当企画「⚪︎⚪︎山歩」では、さまざまなテーマをかけ合わせ、思い立ったらすぐ行ける山歩コースの提案をしています。
目次
水の恵みを肌で感じる「渓谷×山歩」で最高の癒しと絶景をチャージ!
山歩(さんぽ)とは、都会から少し足を伸ばすだけで出会える自然を、無理せず自分のペースで歩きながら楽しむこと。長距離移動の大旅行ではなく、思い立ったらすぐに出かけることができるプチトリップです。ふと予定が空いた休日や天気が良い日は絶好の山歩日和。手持ちの歩きやすい服装と履き慣れた滑りにくい靴があれば準備OKです。
今回ご提案するのは、より絶景と癒しを楽しむことができる「渓谷山歩」。豊かな日本の森林に育まれた清流を間近で感じる渓谷は、山歩にぴったりの場所なのです。苔むした岩や神秘的な色の水をたたえた瀬・淵・滝などが織りなす非日常の空間は、夏には涼をもたらして、秋には周囲の木々が鮮やかに色づいて目を楽しませてくれます。
なお、今回の山歩道選定の目安は以下の通りです。
・歩行時間:3時間以内
・歩行距離:5km以内
・上り累積標高差:400m以下
これは、ハイキング初心者でも無理なく気軽に歩ける数値。これから山や自然の中で遊びたいと思っている人にもぴったりです!
※一部、上記目安を超えるコースもあります。
※自然災害の発生などにより、現地の登山道や遊歩道、交通機関が通行止めになる場合もあります。お出かけ前に現地の最新情報を確認するようにしましょう。
【等々力渓谷】東京23区唯一の渓谷は静寂に包まれた都会のオアシス|東京・世田谷
※注意※ 等々力渓谷は2023年7月に発生した倒木により、2024年8月時点で公園内への立入り、遊歩道は通行止めとなっています。日本庭園、等々力不動尊は利用可能で、2025年度に全面開放予定です。お出かけの際は最新の現地情報を確認するようにしてください(世田谷区ホームページ)。
一歩足を踏み入れたら喧騒を忘れる別世界!清らかな湧水が育む渓谷美
多摩川の支流・谷沢川が武蔵野台地を浸食して生まれた、全長約1kmの等々力渓谷。入口の階段を下ると、雰囲気は一変、気温も下がります。周辺は都道311号線や第三京浜道路が走り、交通量が多い場所ですが、緑に包み込まれた渓谷沿いの散策路は静寂に満ちています。
両岸の地層の隙間からは無数の湧水が流れ込んでおり、溜池や湿地も点在。渓谷の流れとともに水辺のオアシスを創り出しています。
山歩のアクセントも充実! 祈りやくつろぎのスポットでのひと時
渓谷下流には桜や紅葉の名所として知られる等々力不動尊があり、そばにある不動滝では、滝行を行う参拝客の姿が見られることも。等々力不動尊は正式には「滝轟山明王院」といい、この名が示すように、一説では不動滝の轟く音が「等々力」の地名の由来といわれています。
対岸には竹林が美しい日本庭園があり、奥にある書院では無料でお茶を頂くこともできます。山歩の足を休めて一服するのも一興ですよ。
コースの歩行時間・歩行距離・アクセス
・歩行時間:40分
・歩行距離:1.5km
・上り:45m
・アクセス
電車で:東急大井町線・等々力駅よりすぐ
・コースを詳しく見る
【鳩ノ巣渓谷】青い水と白い岩が織りなす多摩川上流の渓谷美|東京・奥多摩
大多摩ウォーキングトレイルのハイライトをめぐる山歩道
笠取山(1,942m)付近を水源に、奥多摩湖から流れる多摩川。その上流部にあたるJR青梅線・奥多摩駅〜古里駅には、大多摩ウォーキングトレイルという流域の景観を楽しむ遊歩道が整備されています。
中でも、鳩ノ巣駅〜白丸駅の区間は絶景の連続。青い水をたたえた多摩川上流の清流を、時には吊橋の上から、時には河原から、さまざまなアングルで鑑賞することが可能です。ゴール手前の数馬峡橋(かずまきょうばし)からの、山桜や紅葉と清流のコントラストは、写真愛好家にも人気です。
2023年で運用開始60周年! 白丸ダムで生き物への配慮も見学しよう
コース中盤に現れるのが、白丸ダム。多摩川を堰き止めて、都営地下鉄などの電力をまかなうために1963年に造られました。近年、多摩川を遡上する魚たちの往来を妨げないための魚道が整備され、流域の生き物にも配慮した施設です。この魚道は、不思議な景観の螺旋階段を通って見学することができます。
コースの歩行時間・歩行距離・アクセス
・歩行時間:1時間10分
・歩行距離:2.3km
・上り:198m
・アクセス
<行き>
電車で:JR青梅線・鳩ノ巣駅よりすぐ
<帰り>
電車で:JR青梅線・白丸駅
・コースを詳しく見る
【嵐山渓谷】町名の由来にもなった本場・京都に匹敵する景勝地|埼玉・嵐山
岩畳を滑る槻川(つきかわ)の水辺を山歩しながら季節を感じる
激しい水流によって浸食され、河原の小石がなく岩肌がむき出しになった岩畳。埼玉県では長瀞が有名ですが、この嵐山渓谷でも同じく岩畳が広がり“新長瀞”とも呼ばれていました。昭和初期にこの地を訪れた林学博士・本多静六氏が京都の嵐山によく似た景観であることから“武蔵国の嵐山”と命名し、現在では町名にもなっています。
渓谷沿いの山歩道には飛び石で川を渡るポイントもあり、増水時には注意が必要ですが、その清流を身近に感じることができる場所でもあります。
嵐山の街を一望する絶景の展望台へも寄り道しよう
嵐山渓谷の北側にある大平山(179m)へは20分ほどで手軽に登ることができるので、立ち寄ってみましょう。山頂手前の東屋がある広場からは眺望抜群。眼下に広がる嵐山町はもちろん、空気が澄んだ日には日本百名山・筑波山(877m)を望むこともできる絶景スポットです。
コースの歩行時間・歩行距離・アクセス
・歩行時間:1時間30分
・歩行距離:2.9km
・上り:158m
・アクセス
車で:関越道・嵐山小川インターチェンジから嵐山渓谷バーベキュー場駐車場まで約25分
電車で:東武東上線・武蔵嵐山駅から嵐山渓谷バーベキュー場駐車場まで徒歩約30分
・コースを詳しく見る
【養老渓谷】マイナスイオン豊富な清流と滝をめぐる山歩道|千葉・大多喜
潤いの水辺をのんびりと楽しみたい房総の奥座敷
東京湾へと注ぐ養老川の上流にある養老渓谷は、房総の奥座敷と呼ばれる風光明媚な景勝地です。川の流れとほぼ同じ高さに、歩きやすい山歩道が整備されており、その渓谷美を間近に感じ取ることができるのも魅力。ゆらめく水面に映る四季折々の木々や空を眺めながら、のんびりと歩きましょう。
山歩のゴールは川沿いに湧き出る温泉を楽しむことができる「滝見苑けんこう村 ごりやくの湯」。巨石が配置された野趣あふれる露天風呂をはじめ、山歩の心地よい汗を流すのにぴったりです。
たおやかな風情をたたえた房総半島最大の滝がハイライト
千代の滝・金神の滝などが点在する養老渓谷でもっとも規模が大きく、房総一とも言われるのが粟又の滝です。100mに渡って岩肌をゆるやかに流れ落ちる優美な滝は風情満点! 11月下旬から12月上旬と関東でもかなり遅くまで紅葉の見頃が続く場所としても有名です。
コースの歩行時間・歩行距離・アクセス
・歩行時間:1時間40分
・歩行距離:4.6km
・上り:168m
・アクセス
<往路>
電車で:小湊鉄道・養老渓谷駅から原ノ台バス停まで小湊鐵道バスで約12分
車で:館山道・市原ICより小沢又駐車場まで約50分
<復路>
電車で:粟又・ごりやくの湯バス停から養老渓谷駅まで小湊鐵道バスで約18分
車で:ごりやくの湯駐車場から館山道・市原ICまで約1時間
・コースを詳しく見る
【花貫渓谷】優美な滝や淵をめぐって名物の吊橋を渡る山歩道|茨城・高萩
高萩市の水源へと続く清流沿いに広がるのどかで優しい渓谷美
茨城県北部に位置する高萩市は、さまざまな映画やテレビ番組のロケ地・赤浜海岸で知られていますが、その水源である花貫ダムの上流には美しい渓谷美が広がっています。その名も美しい花貫(はなぬき)渓谷は、お隣の北茨城市にある花園渓谷と並ぶ、人気の景勝地です。
不動滝・乙女滝をはじめとする滝や神秘的な淵など、どこかのどかで優しい雰囲気の渓谷美を堪能することができます。
ハイライトの汐見滝吊り橋から渓谷を一望
花貫渓谷のハイライトが、長さ約60mの汐見滝吊り橋です。橋の上からは眼下に流れ落ちる汐見滝の絶景を鑑賞できるだけでなく、吊り橋自体もフォトジェニックです。
周囲の木々に溶け込んだその姿は、春の新緑や秋の紅葉時期にはひときわ美しく、渡る人や写真を撮る人が絶えない人気スポットです。
コースの歩行時間・歩行距離・アクセス
・歩行時間:1時間
・歩行距離:2.6km
・上り:112m
・アクセス
車で:常磐道・高萩インターチェンジから花貫駐車場まで約15分
・コースを詳しく見る
【尚仁沢】名水百選の湧水が注ぐ原生林の中の渓谷美|栃木・塩谷
おいしい水第一位にもなった清流沿いは絶景が連続する渓谷美
釈迦ヶ岳(高原山、1,794m)の中腹から湧き出る伏流水はイヌブナなどの自然林を流れ下り、尚仁沢(しょうじんざわ)湧水として環境庁認定の名水百選にも名を連ねています。口当たりのよい軟水は、1997年の岐阜県でのイベントで、全国37都道府県から集められたおいしい水の中で第1位も獲得しました。
飲用やそば打ちのためにポリタンクを持って訪れる人も多い尚仁沢ですが、山歩にも最適。階段や橋が整備された清流沿いを歩けば、苔むした岩肌を縫うように流れる絹糸のような水が、さまざまな景観を創り出しています。
名水を育んだ豊かな自然林も見上げてみよう
この豊かな湧水を育んだのが流域の自然林であることは前述の通り。足元を流れる水だけでなく、視線を上方に向ければ、新緑や紅葉など季節ごとに彩りを変える森林が広がっています。中には不思議な樹形をした木も多く、耳を澄ませば野鳥のさえずりが聴こえてくることもありますよ。
コースの歩行時間・歩行距離・アクセス
・歩行時間:1時間
・歩行距離:1.9km
・上り:150m
・アクセス
車で:東北道・矢板インターチェンジから尚仁沢湧水駐車場まで約30分
・コースを詳しく見る
【吾妻峡】国指定名勝の切り立った断崖に刻まれた渓谷美|群馬・東吾妻
深山幽谷の趣を醸す険しい岩肌を削り取って流れる渓谷
吾妻川の急流が火山岩を深く浸食して形成された吾妻峡は、渓谷そのものだけでなく両岸の断崖絶壁も特徴的です。特に今回の山歩道の前半は“八丁暗がり”と呼ばれ、吾妻峡の中でも最も川幅が狭い区間です。
特に鹿飛橋周辺はその地名の通り鹿が飛んで渡れそうな幅2〜3mの場所で、橋の上から望むと青い水と苔むした岩肌のコントラストが見事。周辺には布袋岩・竜尾岩などの巨岩も点在しています。
八ッ場ダムを正面から望む展望台
山歩道の折り返し地点である吾妻峡見晴らし台(小蓬莱)から正面に見える巨大なコンクリート建造物が八ッ場(やんば)ダムです。1952年の構想開始から、水没する長野原町を中心とした反対運動や2009年の突然の建設中止宣言とその後の再検証を経て、2020年にようやく完成。関東の治水や水資源の確保に一石を投じた存在です。
コースの歩行時間・歩行距離・アクセス
・歩行時間:1時間20分
・歩行距離:2km
・上り:199m
・アクセス
車で:関越道・渋川伊香保インターチェンジから十二沢パーキングまで約1時間強
・コースを詳しく見る
「渓谷×山歩」で癒しと絶景を両どりしよう
生命の源でもある“水”を身近に感じることができる渓谷は、癒しにもリフレッシュにもぴったりの山歩スポットです。マイナスイオン豊富な清流と木々が放つ芳香、ダイナミックな景観を満喫しに、渓流×山歩に出かけましょう。
ーーーーー
トップ画像:yamakkoさんの活動日記より
執筆・編集協力:鷲尾 太輔
YAMAP MAGAZINE 編集部
登山アプリYAMAP運営のWebメディア「YAMAP MAGAZINE」編集部。365日、寝ても覚めても山のことばかり。日帰り登山にテント泊縦走、雪山、クライミング、トレラン…山や自然を楽しむアウトドア・アクティビティを日々堪能しつつ、その魅力をたくさんの人に知ってもらいたいと奮闘中。
この筆者の記事をもっと読む公式SNSで山の情報を発信中
自然の中を歩く楽しさや安心して山で遊べるノウハウに関する記事・動画・音声などのコンテンツをお届けします。ぜひフォローしてください。