投稿日 2024.07.30 更新日 2024.07.31

YAMAP

iPhone圏外でも衛星経由で緊急SOSが可能に|YAMAPと合わせて遭難リスク減に期待

携帯電話の電波やWi-Fi環境がない状況でも、衛星経由で緊急SOSを発信できるiPhoneの新サービスがスタートしました。

緊急SOSを受け取った同社の衛星中継センターが要救助者の容態や位置情報を把握。国内の警察、消防、海上保安庁に電話で通報する仕組みです。iPhone14と15の全モデルが対象。

登山GPS地図アプリYAMAPが遭難の予防であるなら、iPhoneの緊急SOSサービスは遭難発生後のバックアップ的な位置付けになり、圏外の山域での遭難リスクをさらに減らすことができそう。登山者目線でAppleに聞いた、サービスの詳細をお伝えします。

目次

衛星中継センターから救助機関に通報

携帯電話やWiFiの電波がない圏外での緊急SOS発信サービスは、2022年にアメリカなど海外で先行してスタート。2024年7月末時点ですでに16カ国でサービスが展開されており、日本は17カ国目。

日本では、緊急SOSが発信された場合に対応する衛星中継センターを独自に設置。日本の警察(110)や消防(119)と海上保安庁(118)は電話での通報が基本のため、救助機関との連携で研修を受けた日本語ができる担当者が常駐します。

遭難者から受け取った情報をもとに、圏外の事故現場にいる要救助者や救助者の代わりに通報します。

衛星経由の緊急SOSの新サービスでは、携帯電話通信やWi-Fiの電波がなく、119番などの緊急通報サービスに接続できない場合に、緊急テキストを促すメッセージが表示され、緊急事態に関する簡易な質問に回答していきます。

例えば、「どのような緊急事態ですか?」という質問では、

・車両または船舶で起きた問題
・遭難または閉じ込められている
・病気または不要

などから回答の選択肢をタップ。

呼吸状態や緊急事態の内容に関する質問などに回答した後は、画面の案内に従い、上空の衛星の位置に動きに合わせるように端末を持ちながら衛星通信に接続します。

衛星に接続すると、緊急通報サービスの担当者とのテキスト通信を開始。ヘルスケアアプリで登録する名前や血液型、緊急連絡先情報などのメディカル IDのほか、緊急事態に関する質問への回答、通報者の位置情報、バッテリー残量を伝えます。

家族もメッセージを把握

衛星経由の緊急SOSで緊急通報サービスにテキスト発信する際、ヘルスケアアプリで設定した緊急連絡先に知らせ、情報を共有するかを選択できます。

この情報を共有する選択肢を選んだ場合、緊急連絡先にはメッセージが自動送信され、指定された家族やパートナーらがiPhoneユーザーでなくても確認できます。

ただし、「緊急連絡先との個別のメッセージのやりとりのほか、通話やウェブ閲覧、マップアプリでの地図情報の取得はできません」(Apple広報担当者)。衛星電話のようにコミュニケーションができる機能ではないことは留意しておきましょう。

15秒ほどでメッセージを送信

衛星通信に接続するには、スマートフォンのGPS機能と同様、上空の衛星につながりやすい視界の開けた屋外にいる必要があります。

Appleはメッセージの平均サイズを3分の1に縮小するテキスト圧縮アルゴリズムを開発。可能な限り高速化することで、通常時は15秒ほどでメッセージが送信されます。ただし、「木の下では1分以上かかる場合があります」(同)。

葉が密に茂った木の下だけでなく、丘や山、渓谷などにいたりする場合も衛星との接続を遮る可能性があり、登山者は知っておく必要があるでしょう。

iPhone14と15で2年無料

日本国内での緊急SOSの新サービスは、iOS 17.6以降を搭載したiPhone14とiPhone15のすべてのモデルが対象。すでにiOSのアップデートが済んでいれば、衛星緊急SOSの機能が備わっており、アプリなどを別途ダウンロードする必要はありません。

日本国内では、既存の対象機種のユーザーは2024年7月30日のサービス開始日から、新品購入の場合はアクティベーション後から2年間無料で利用できます。無料期間の終了後に利用料はかかるとみられますが、詳細は未公表。

緊急SOSの詳細:Apple公式サポートページ

滑落などで意識がない場合には

圏外で緊急SOSを簡易に発信できるようになるとはいえ、登山時の滑落などによる重傷や低体温症などで意識が朦朧とした状態では操作は難しいかもしれません。

Appleによると、衛星緊急SOSの操作が途中でできない状態になった場合にも、最初に現在地だけ送信していれば、やりとりが止まった異変を衛星中継センターが覚知。救助機関に通報する対応もできるといいます。

激しい衝突を検知して緊急通報サービスにつながる「衝突事故検出」が機能すれば、圏外であれば、衛星経由で自動通報ができます。

衝突事故検出の詳細:Apple公式サポートページ

衛星経由の緊急SOSのデモも試せる

万が一の状況下でいきなりの操作で混乱することがないよう、デモモードも内蔵。次回の登山前にぜひ予習しましょう。

使い方も簡単。設定の緊急SOSを開き、最下部にある「衛星経由の緊急SOS」の項目から、「デモを試す」を押すと、モバイルデータ通信接続が一時的にオフになり、実際の衛星の位置を検索する画面や、緊急連絡サービスのチャット例が表示されます。

Apple Watchにも対応

Apple Watchのセルラーモデルであれば、近くにiPhoneが無い場合でも緊急SOS機能で通報できます。

家族や友人と位置情報を共有

携帯電話通信やWi-Fiの電波が届かない所に出かけている時に、緊急時でなくても、友人や家族に居場所を知らせることも可能に。「探す」アプリを開くと、衛星経由で位置情報を共有できます。

衛星通信経由で登山中の家族や友人の位置情報を確認するには、iPhoneにiOS 16.1以降がインストールされている必要があります。衛星による緊急SOSの対象機種であるiPhone14またはiPhone15である必要はありません。

連絡先に登録されている人から衛星通信経由で位置情報が送信されると、「探す」アプリで、その人の写真の横に衛星アイコンが表示。テキストの横に「衛星通信経由の位置情報」と表示されるようになっています。

位置情報送信の詳細:Apple公式サポートページ

海外でも日本語サポートが可能

海外での日本語利用については、「端末の設定から『言語と地域』で『日本語』を選んでいれば、衛星中継センターのサポートは日本語で受けられる」とのことです。

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