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富士山・静岡「富士宮ルート」は最短距離、関西・名古屋から好アクセス|登山ガイドがコースを解説
山開きの7月から閉山の9月上旬まで、多い年で30万人を超える登山者が国内外から押し寄せる国内最高峰・富士山(3,776m)。主要登山道4つのなかで、標高が最も高い位置から最短距離で登頂でき、道迷いの可能性も低いのが「富士宮ルート」です。
静岡県側からのルートなので、特に関西・名古屋方面からアクセスしやすいほか、途中に山小屋も多く、駿河湾の景色を見渡しながらの山登りが楽しめます。
ルートの魅力だけでなく、安全に登山を楽しむための注意点も交え、登山ガイドの上田洋平さんに解説いただきます。
目次
富士山富士宮ルートのおすすめポイント
富士山の登頂ルートは主に、山梨側の吉田ルートと、静岡側の富士宮ルート、須走(すばしり)ルート、御殿場ルートの4つがあります。
今回取り上げる富士宮ルートは、そのなかでも標高が最も高い富士宮口五合目(約2,400m)から出発するため、山頂まで最短距離、標高差約1300mの登りで山頂を目指せます。
登りと下りが同じ道なので、ハイシーズンは渋滞しやすいというデメリットはあるものの、道迷いの可能性が低いのは、初心者にとって安心できるポイント。
ルート上の山小屋の数は、最も登山人口の多い山梨側の富士山吉田ルートよりはやや少ないものの、約1時間の距離で山小屋があり、トイレ休憩や水・食料などの補給もできます。
最短距離で日本一の頂へ|富士山・静岡側 富士宮ルート 往復コース【約7時間50分】
ポイント
①関西、名古屋方面からアクセスしやすい登山口
②最初はなだらかなでウォーミングアップに良い登山道
③駿河湾の景色を見渡しながらの山登り
コース情報
コース定数:31(コース定数とは?)
コースタイム:7時間50分
歩行距離:8.1km
累積標高差(上り)1,391m
累積標高差(下り)1,391m
マイカーの場合は、二合目にある「水ヶ塚公園駐車場」へ
マイカーで富士宮ルートへアクセスする場合、二合目にある「水ヶ塚公園駐車場」に車を駐めてシャトルバスに乗り換えます。
富士登山協力金(任意)はバス停の近くで支払えます。
シャトルバスで富士宮口五合目まで移動して降車し、駐車場の階段を登ると登山口があります。ここでも富士登山協力金(任意)を支払えます。
スタート標高は2,400m。最初のゆるい砂利道はゆっくりと
登山口の階段を少し登った所にある富士宮口五合目の看板。ここから富士登山のスタート。
歩き始めのうちは勾配のゆるい砂利道が続きます。
ここでは速く歩いてしまう人が多いのですが、高山病対策のため、ゆっくり歩きましょう。
五合目からゆっくりと登って30分程度で六合目に到着です。
六合目から先はつづら折りの急登の道が出てきますので、ここからが本格的な登りになります。
宝永山のシルエットで大噴火に思いを馳せる
登っていると右手側に宝永山(2,693m)が見えるようになってきます。
宝永山は、江戸時代の宝永4年(1707年)に起こった「宝永の大噴火」によって隆起してできた山です。南側の麓から富士山を眺めると、宝永山のシルエットも確認できます。
六合目から約1時間登ったところで、新七合目(2,790m)にある御来光山荘に到着です。
新七合目(2,795m)から約50分ほどで元祖七合目(3,027m)の山口山荘です。
元祖七合目からさらに50分登ると、八合目(3,224m)の池田館に到着です。
このあたりから空気が薄くなってくるのを実感するかと思います。ゆっくりペースで呼吸を深くして歩いて下さい。
午前2時から営業開始する「萬年雪山荘」
九合目(3,400m)の萬年雪山荘では、午前2時から食堂の営業が開始されるので、御来光を目指す登山者にとっての格好の休憩場所になります。山荘内で休憩するときは何か注文するのがマナーです。
鳥居を抜ければ、まもなく山頂
九合目から約35分、途中で九合五勺の胸突山荘を越え、さらに45分進むと山頂手前の鳥居が見えます。この鳥居を抜けると、まもなく富士宮ルートの山頂になります。
御来光を目指す場合、深夜に出発してヘッドライトの明かりを頼りに進みます。
週末やお盆は、九合目から先は渋滞する可能性が高いので、時間にゆとりを持った行程で登ることをおすすめします。
御来光のおすすめは朝日岳
御来光を見るおすすめスポットは、富士宮口山頂から東にある朝日岳(3,733m)です。
日本一の山の頂まで登れた達成感、御来光の素晴らしさに、自然と感動がこみ上げてくる瞬間です。
山頂から東側は眼下に山中湖をはじめ、道志山塊(どうしさんかい)や丹沢の山々を望むことができます。
御来光を望んだ後は、日本最高地点の剣ヶ峰(3,776m)を目指します。
西側へ進んで砂礫の道を注意しながら登ると左手側に階段があり、階段を登れば剣ヶ峰へ到達。
剣ヶ峰は、御来光直後は写真撮影のため、渋滞になることが多いです。
時間や体力があれば、富士山の火口を一周する「お鉢めぐり」をしてもよいでしょう。
一周約1時間30分程度かかります。
下りは往路を戻ります。
富士宮ルートの頂上と御殿場ルートの頂上は近くにあるため、間違えないようにして下さい。
山頂に着いた安心感から呼吸が浅くなると高山病になりやすいため、深い呼吸を意識しながら下ります。疲れが出てくるときなので、転倒や滑落には注意しましょう。
時間に余裕を持った計画を立てましょう。
トイレ情報
各合目毎にある山小屋に有料(200〜300円/回)のバイオトイレが設置されています。
コイン式で硬貨を入れると個室の扉が開くタイプや、トイレの入口で料金を支払うタイプなど、さまざまです。小銭は忘れずに持っていきましょう。
富士宮ルートのおすすめ休憩場所
各山小屋の周辺
山小屋付近には休憩するのに適したテーブルやベンチ、スペースがあるのでゆっくり休めます。
繰り返しになりますが、山荘内で休憩するときは何か注文するのがマナーです。
富士山富士宮ルート 近隣の名店
富士宮焼きそば
富士宮名物の「富士宮焼きそば」は静岡県富士宮市のご当地グルメ。あっさりしたソースが特徴です。
富士山 富士宮ルートの近隣にある温泉
富士山富士宮ルート周辺には、良質の温泉が多くあります。下山後にお風呂で山の汗を流せば、最高の休日が出来上がります。
富嶽温泉 花の湯
「富嶽温泉花の湯」は富士宮市街の国道139号線沿いにあり、大露天風呂、高濃度炭酸泉、死海の塩の湯など、多彩な湯が楽しめるのが特徴。
お風呂のみをメインに使う場合、80分利用の立ち寄り券だとお得に利用できます。
詳細はこちら:公式サイトを見る
富士八景の湯
「富士八景の湯」は国道138号線沿いにある温泉です。車で来た場合は御殿場ICへの帰り道にあり、アクセス至便です。
その名の通り富士山を一望できる露天風呂が魅力。自分が登ってきた山をながめながら、達成感にひたる湯船は最高です。
詳細はこちら:公式サイトを見る
富士宮口へのアクセス
公共交通機関
<東京方面から>
・JR御殿場線 御殿場駅経由 殿場駅→富士宮口二合目 水ヶ塚公園(バス乗換)→富士宮口五合目
・東海道新幹線 三島駅経由 三島駅→富士宮口五合目
<大阪・名古屋方面から>
・東海道新幹線 新富士駅経由 新富士駅→富士宮口五合目
・JR身延線 富士宮駅経由 富士宮駅→富士宮口五合目
マイカーを利用する場合
富士山 富士宮口五合目は7月10日~9月10日の山開き期間にマイカー規制が行われます。2合目の水ヶ塚公園 駐車場(マイカー規制期間は1,000円/台)を利用し、シャトルバスかタクシーに乗り換えます。
満車の場合は臨時駐車場が利用できるので、係員の案内に従いましょう。
初心者が意識すべき富士山登頂達成のためのポイント
富士山では開山期(7月上旬〜9月上旬)になると、初心者も含め多くの人々がその山頂を目指します。
登山道は整備されていて歩きやすいですが、3,776mの日本一の頂に立つのは簡単ではありません。
初心者の方は、以下の3つを準備していくと登頂率を上げることができます。
1.装備
整備されているとはいえ、大小の石がゴロゴロと転がっているのが富士山の登山道。
スニーカーでは滑りやすく転倒の危険があるため、登山靴を履くようにしたいところ。
登山靴は足首までサポートされていて足を捻りにくくソールが硬いため、不整地や岩場を歩いても安定して歩くことができ、疲れにくくなります。
突然の天候急変に備えてレインウェアも必須装備。上下セパレートタイプのものを準備しましょう。
また、夏でも朝の山頂付近は約5℃程度と平地の真冬と同じくらいの寒さとなるので、防寒着(ダウンジャケット等)も必要になります。
近年、主に外国人の軽装登山が問題になっていますが、現地で大変な思いをしないように、必要な装備はしっかりと揃えましょう。
装備について詳しく知る:「まず揃えたい山道具の基本6アイテム|登山装備のチェックリスト」
急にそんなに揃えられないし、富士山に登った後、登山を続けるか分からない、という方は山道具をレンタルするのもよいでしょう。五合目の登山口にレンタルショップがあるので、受け取り、返却が現地でできて便利です(要事前予約)。
ちなみに、YAMAPレンタルでも山道具のレンタルサービスを展開しており、道具別のレンタルのほか、初めて富士登山に挑む方向けのこだわりの山道具をパッケージにした「富士登山7点セット」(13,500円/3泊〜)も提供しています。
2.体力
富士山は五合目(プリンスルートは富士宮ルートと同じで2,400m)から登れるとはいえ、約1,400mの標高を登る必要があるため、体力が必要です。
富士山に登る前に、ほかの山へ練習登山に行くのがおすすめです。
登山が初めての場合、標高差(登山口から山頂までの高低差)300mくらいの山からスタートし、標高差1,000mの山を日帰りで登れるようになっておくと、富士山本番では楽に登れるようになります。
3.高山病対策
富士山は標高3,776mの山のため、高山病対策も不可欠。
寝不足は避け、ゆっくり登る、水分をたっぷり摂取することを意識して下さい。
頭痛やめまいが激しければ登山はあきらめ、高度を下げましょう。
高山病について詳しく知る:高山病の発症しやすい条件と予防、対処法、|三俣山荘・診療所の伊藤医師が解説【山登り初心者の基礎知識】
執筆・写真協力:登山ガイド・上田洋平
登山ガイド
上田洋平
1979年2月10日生まれ。愛知県名古屋市出身、神奈川県藤沢市在住。2児の息子の父。日本の山々だけでなく、海外の山々(アフリカ最高峰キリマンジャロ、南米最高峰アコンカグア)への登山経験を経て、2017年から富士山の登山ガイド。2019年4月に日本山岳ガイド協会登山ガイドステージI資格、2022年4月に登山ガイドステージII資格を取得し、専業ガイドに。山岳写真を撮るため、フルサイズ一眼レフ、ジッツォの三脚、雲台、標準ズームレンズ、望遠ズームレンズを担いだドM登山も敢行。キャンプ、空手、筋トレ、旅行、読書、トレイルランニング、ギター、ゲームなど趣味多数。https://y-hey.com/
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