投稿日 2023.11.15 更新日 2023.11.15

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ひげ隊長、山と川をつなぐ旅を語る|山頂〜太平洋150km流浪旅【番外編】

川旅の醍醐味といえば、やはり河原でのキャンプ。都心の川とは違い、キャンプの好適地が随所に点在しているのも那珂川の魅力です。ここまできて「ひげ隊長とは何者なのか」と気になった読者のため、ひげ隊長の思いと山好きだからこそ魅了されるであろう川旅の魅力について、野営地で焚き火をしながら話してもらいました。


山頂〜太平洋までの150km流浪旅 前編を見る

── ひげ隊長といえば川旅のイメージがありますが、きっかけは何だったのでしょうか。

ひげ隊長:小さい頃から遊び場が川だったんだよね。山でもなく川だった。カヌーに乗りはじめたのは大学生のころ。20歳くらいかな。親父がアウトドアマンだったから、山も海も行っていたけれど、やっぱり川が好きだった。カヌーにテントを積んで何日も川下りを楽しんでいた。

一番影響を受けたのは、やっぱり(カヌーイストで小説家の)野田知佑さんだよね。高校生のときに野田さんの本を読んで、自分もこういう旅がしたい、こういう大人になりたいと思ったんだ。あれだけハッキリと世の中に文句も言えて、気に食わないことに噛みついていける。大人でもこういうことを言っていいんだって、純粋に憧れたんだよ。

── 野田さんからアウトドアマンとしての生き方、人としての生き方を学んだと。

ひげ隊長:どうしたら野田さんみたいな人になれるかを考えていた。まずは同じことをしてみようと、ひとりで鹿児島から北海道に行って、カヌーでずっと旅をしていたよ。

── のちに屋久島で登山ガイドをするわけですが、山に目が向いたのは理由があったのですか?

ひげ隊長:当時はちょうど、屋久島が世界自然遺産になったタイミング。登山ガイドはたくさんいたんだよ。でも川専門のガイドはいなかったら、得意なカヌーからキャリアをはじめたんだよね。

でもさ、川ってシーズン短いじゃん(笑)。冬とかは仕事がなくなるんだよね。だから、ガイドで食べていくなら山もやらないと、ということで、登山ガイドもはじめたんだけど、やってみたら面白かった。

しかも山を知ると、川のガイドも面白くなった。川は山があってこその自然環境だから、山と川のつながりの話をすると、お客さんも興味を持って聞いてくれる。川がもっと身近になるんだよね。

── YAMAPユーザーでも、山は身近でも川はまだという方は多いと思います。もっと多くの人に川に目を向けてもらいたいなと思っているのですが。

ひげ隊長:川で遊んでみることで、山が違って見えてくる。アウトドアの遊びがもっと深く広がっていくと思うんだ。自分がよく訪れていた、アラスカとかカリフォルニアのアウトドアマンたちは、季節にあわせていろんな自然の遊びをしているんだよね。

春はハイキングして、夏はカヌーをしてというアクティビティの多様さはもちろん、天気や気候を見て遊びを決めていた。

日本は北から南まで自然の多様性がすごい。もっと山以外のアクティビティにも挑戦してみてほしいと思う。それに、川旅のよさは自由を感じられることだと思うんだ。山は登山道を外れちゃいけないし、テントを張る場所も決まっている。

でも川は自由。都会の川はダメなところもあるけれど、河原は誰のものでもないし、どこを漕いでもいいし、どこでキャンプをしてもいい。これこそアウトドアの本質的な楽しみ方だと思う。

── そして、北海道でもなく、アラスカでもなく、関東のここ那珂川でサーモンが遡上するというのは、やはりロマンがありますよね。

ひげ隊長:東京から近い関東の川で見られるのは興味深いこと。アラスカで川下りをしたときはたくさんサーモンを見たけれど、同じようなことをここでもできるのかと。もうそれだけで心が躍る。

遡上してきて産卵を終えたサケが死んで、その栄養で森が育つっていうじゃない。那珂川も、遡上する数は少ないのかも知れないけれど、サケを介して山と川がつながる営みがいまだに綿々と続いているのは奇跡だね。

── 茶臼岳の山頂から見えた海へと続く景色は、川を意識しなかったら見えてこなかった風景。これまでは頂上に着いて「景色が綺麗!」で終わっていたと思うんです。でも、山から川、川から海へという水の流れを思い描くことで、全ての自然がつながっているんだと気づけました。

ひげ隊長:20代くらいまでは川しか知らなかった。ただ綺麗な水が流れている川を下るのが楽しかった。でも、山を知るようになると、川が山からの恵で成り立っていて、流域には自然と文化もあることに気づいて、アウトドアの遊びがより楽しくなった。だからこそ、山の人が川を知ることで、もっと山が好きになるんじゃないかなと確信してるね。

写真・文=小林昂祐

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