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北アルプス・涸沢で日本一の絶景紅葉を見たい! 見頃とおすすめコースの選び方
北アルプスは穂高連峰。氷河が悠久の時をかけて山肌を削り取り、まるで山岳地帯に現れた円形劇場のような涸沢カールは、日本有数の山岳紅葉を見ることができる地として、多くの登山者の憧れの対象となってきました。せっかく涸沢の紅葉を見に行くのなら、ベストな時期を外さず、絶景を楽しめる山歩きになるようプランを立てたいところ。「涸沢の紅葉の見どころ」「紅葉の見頃」、上高地を出発地点とした「おすすめのコース」について紹介していきましょう。
目次
涸沢カールの紅葉、登山者なら一度は見たいそのわけは
「涸沢」は登山者にとって憧れの聖地、北アルプス・穂高連峰の山々にぐるりと取り囲まれた日本有数のカール(氷河によって山肌が削り取られたお椀状の地形)地帯。奥穂高岳(3,190m)、前穂高岳(3,090m)、涸沢岳(3,110m)、北穂高岳(3,106m)など、3,000m級の名山が連なる中にあって「涸沢の紅葉見ずして穂高を語るなかれ」と言われるほど、日本を代表する山岳紅葉ポイントとして多くの人を魅了してきました。その魅力はどこにあるのでしょうか。
①紅葉とのコントラストをより際立たせる雄大な地形
涸沢は2万年前に氷河が山を削った、日本有数のカール地帯。その幅は2kmに及び、明るく広大な、スプーンでえぐられたような地形を呈しています。標高2,300mほどのカールの底部から周囲を囲む3,000m級の山々との標高差は900mほど。切り立った岩壁が迫りくるような迫力と紅葉のコントラストは圧巻。ここまで登った人にしか見ることができない、一大パノラマを堪能できます。
②山ならではの寒暖差がもたらす赤や黄色の一面の紅葉
ナナカマドの「赤」、ダケカンバの「黄」が中心となり、そこにハイマツなど常緑樹の「緑」が加わることで、涸沢カールの息を呑むような紅葉が展開されていきます。その豊かな彩りは、2,300mもの高地ゆえの厳しい冷え込みや、遮るもののない日照などの希少な環境が生み出す唯一無二の景観。ここに晴天の「青い空」が加われば、文句なしの絶景が完成です。
③涸沢は景色だけじゃない! 山小屋グルメに時間の移ろい…楽しみがたくさん
涸沢はたくさんの「ご褒美」が待っているのも嬉しいポイント。涸沢ヒュッテと涸沢小屋、2軒の山小屋には、おでんやソフトクリームといった名物が。また、ピーク時には1,000張を超える日もあるというカラフルなテントは、なんとも可愛らしい風物詩のひとつです。
夜には、そのテントから漏れる光と、空一面に広がる星空が繋がっていくかのように見える情景。朝には、ほんの束の間だけ朝日を浴びた山肌が赤紫色に輝くモルゲンロート…。そこには、冷え込む秋の紅葉シーズンを存分に楽しむ舞台が広がっています。
ここからは、魅力あふれる紅葉の涸沢を満喫するために、「いつ行くべきか?」「どんな行程を取るべきか?」、押さえておきたい2つのポイントをご紹介していきましょう。
いつ行く?|絶景紅葉の見頃を逃さないコツ
年によって異なる紅葉の色づき。ポイントとなる気候条件は?
涸沢で紅葉が綺麗に見られる時期は、例年9月下旬から10月10日前後まで。涸沢ヒュッテを運営する山口さんにお話を伺ったところ、以前と比べてここ5年程は見頃が早まってきているとのこと。
「以前は10月に入ってから紅葉が深まり、10日前後にピークが来ることが多かったのですが、最近は9月の最終週から10月の第1週までがピークになることが多くなりました」(涸沢ヒュッテ・山口さん)
また、紅葉の色づき具合は、気象条件によって毎年異なるそうです。
「しっかりと冷え込む日が続くこと、日照時間が確保されること、適度な水分があることなどが重要です。ここ5年の間では、2019年が紅葉の当たり年でした。
2022年は9月に長雨が続き日照があまり確保されなかったため、色づかないまま落ちてしまった葉もありました。一方で、ナナカマドの赤い実は例年より大きくなっています。見どころは年によってさまざまですね」(涸沢ヒュッテ・山口さん)
▼涸沢ヒュッテのホームページでは、過去の紅葉状況が写真でわかる
https://karasawa-hyutte.com/autumn_colors_cat/2019/
見頃はわずか2週間! 前半、ピーク、後半、いつを狙う?
涸沢の紅葉の見頃はわずか2週間。さらにその2週間は大きく3つの時期に分けることができます。
前半期:
標高が高いところから低いところへと紅葉は進んでいきます。そのため、まずは森林限界直下のダケカンバが徐々に黄色く色づいてくる様子が見られ、山小屋周辺や登山道ではまだ青々とした木々もある時期です。
ピーク:
冷え込みが続き、涸沢カール全体が紅葉の大舞台となります。この時期に登ることができればいうことはありません。ただし、その間に長雨や台風に当たってしまうと葉が傷んで落ちてしまうことも。すべての条件が揃うのは、なかなか大変なことです。
後半期:
紅葉が終盤を迎えるとカール内の葉が落ち始め、年によっては涸沢にも初雪が降り、紅葉と雪の共演を楽しめる可能性もあります。また、カール内の紅葉が終わりかけていても、そこへ向かう登山道では遅れてピークを迎えるため、紅葉を楽しむことができます。
YAMAPとクラブツーリズムの登山ツアーを企画する責任者の窪田さんによると、
「ツアー会社としては、早すぎて紅葉が見られなかった…という事態は避けたいところ。終盤でも紅葉は残っているため、どちらかというとピークから終盤にかけてを狙います。10月第1週はツアーの予約開始とともに、毎年すぐに完売してしまいます」(YAMAP/クラブツーリズム企画責任者・窪田さん)
どの時期を狙うかは好みが分かれ、運も大いに影響するということがわかります。
とにかく混雑がすごい…。少しでも混雑を避けるコツは?
日本一の紅葉、そして期間が限られるとなると、その時期を目指して多くの人が集中するのは必至。
「涸沢ヒュッテは、宿泊日の1か月前の朝8時から予約できる仕組みなのですが(※)、朝から電話が鳴り続けます。ホームページなどで、留守番電話メッセージのみでの予約や着信への折り返しは受け付けないと記載しているにも関わらず、不在着信が2万件にも及んだときがあったほどです」(涸沢ヒュッテ・山口さん)
このお話からもお分かりのように、事前の山小屋の予約(事前の予約が必須)、交通手段の確保は早いに越したことはありません。それに加え、可能な限り紅葉シーズンの土日は避けることがオススメです。山小屋のトイレも混雑する時間帯は長蛇の列となり、数十分待ちになることもあるのだとか。
また、10月に入ると積雪の可能性も出てきます。雪、低気温を見越した装備が必須です。汗冷えしないドライな下着やベースレイヤー・ミドルレイヤーを着用すること、防風ジャケットやレインウエアを携帯することはもちろん、ダウンなどの保温着やグローブなども必ず持っていきたいところ。ボトムスは厚手のパンツがオススメです。
どんな行程で行く?|涸沢までのオススメのコースを徹底解説
涸沢の紅葉を目的地とする場合、コースは上高地の発着となります。ここでは基本のコースと、1泊、2泊それぞれの場合のコースをご紹介しましょう。
涸沢を目的地とするなら「上高地バスターミナル−涸沢 往復コース」
上高地を出発して涸沢に向かうコースは大きく分けて2つのパートに分けられます。まず上高地から「明神」、「徳沢」を経て「横尾」に至る前半部分では、登りがほぼなく、気持ちのよい梓川沿いの樹林帯を歩きます。これが、往路全体が15.5kmのうち、約10kmを占めます。
そして後半部分では、横尾から「本谷橋」を経て「涸沢」に到達するまでの、より登山らしい登りが続く道を進みます。樹林帯を徐々に抜けるに従い山岳地帯の様相が見え始め、穂高連峰の懐深くに入り込んでいく感覚を味わうことができます。
前半、後半の特徴がはっきりと異なるため、身体と頭のスイッチを切り替えられるのがこのコースの面白いところかもしれません。
<上高地から涸沢までのダイジェスト>
限られた時間を有効活用する「1泊コース」、涸沢の紅葉を心ゆくまで堪能する「2泊コース」
限られた時間を有効活用する「涸沢 1泊コース」
多くの人が選ぶのが、涸沢に1泊するこちらのコース。なかなかまとまった休みが取れない方や、土日だけで登る方に向いています。朝早めの時間に上高地バスターミナルに到着し、涸沢までの約16km・6時間程度(休憩は別)を1日で歩ききります。秋は日没も早くなることから、山小屋、もしくはテント場に15時までをめどに到着するようコースタイムを組むようにしましょう。
そのため、上高地へは前日発の夜行バスで向かうか、早朝にシャトルバスに乗り換えられるよう、自家用車で沢渡や平湯駐車場などへ到着する必要があります(上高地は通年マイカー規制。詳細はこちら)。東京や関西を朝出発すると、上高地の到着は昼前後に。その時間から涸沢に向かうのは、相当健脚な方を除いては無理のある行程となるためオススメできません。
涸沢の紅葉を心ゆくまで堪能する「徳沢(横尾)・涸沢 2泊コース」
せっかくの涸沢の絶景紅葉を堪能するなら、断然オススメなのはこちらの2泊コースです。昼前後に上高地を出発し、1日目は爽やかな樹林帯をトレッキングしながら、2〜3時間ほど歩き、徳沢か横尾に宿泊。2日目は朝からゆっくりと登り始めて、昼前には涸沢に到着します。最終日は涸沢から上高地への復路となります。
登山ツアーのスペシャリストとして何度も涸沢を訪れた経験もある窪田さん(前出)のオススメも2泊コースとのこと。その理由をお聞きしました。
「涸沢でゆっくりできるのは、これに勝るものなしと思える至福の時間です。屋外のウッドデッキで、ビールを片手に穂高の山々と紅葉、そしておでんを肴にしながら、時間の移ろいを楽しんでもらいたいですね。1年に数日しかないせっかくのチャンスですから。
なお、涸沢でテント泊の予定の方は、場所の確保は先着順ですので、前日は横尾に泊まると時間的なアドバンテージがあります。横尾山荘はお風呂もいいですね。徳沢も周辺の散策ができるので1日目の宿泊地としてオススメです。2軒ある山小屋のうち、徳澤園ではレストランさながらの料理が振る舞われるなど、”山で楽しく過ごす”ことを大切にしているオーナーの思いが伝わってきます」(YAMAP/クラブツーリズム企画責任者・窪田さん)
▼山小屋やその他宿泊先の情報はこちら
・涸沢ヒュッテ(例年の営業期間:4月下旬〜11月初旬)
・涸沢小屋(例年の営業期間:4月下旬〜11月初旬)
・横尾山荘(例年の営業期間:4月下旬〜11月初旬)
・徳澤園(例年の営業期間:4月下旬〜11月初旬)
▼上高地までの交通アクセスはこちら
https://www.kamikochi.or.jp/access
実際に足を運んだ人だけが味わうことのできる、来たる紅葉シーズンに向けて、涸沢の絶景紅葉登山を計画してみてはいかがでしょうか?
Top画像:PIXTA
YAMAP MAGAZINE 編集部
登山アプリYAMAP運営のWebメディア「YAMAP MAGAZINE」編集部。365日、寝ても覚めても山のことばかり。日帰り登山にテント泊縦走、雪山、クライミング、トレラン…山や自然を楽しむアウトドア・アクティビティを日々堪能しつつ、その魅力をたくさんの人に知ってもらいたいと奮闘中。
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