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山で遊ぶ人が、山を豊かに。|自然特化型クラウドファンディング「YAMAP FUNDING」が始まります
YAMAPでは2021年7月以降、循環型コミュニティポイント「DOMO(ドーモ)」を活用した山の保全活動を行ってきました。この仕組みをさらに広げ、山の再生、自然環境の保全に貢献していくため、自然に特化したクラウドファンディング「YAMAP FUNDING」をリリースします。
この記事ではYAMAP代表取締役CEOの春山慶彦へ「YAMAP FUNDING」立ち上げに込めた想いを聞き、インタビュー形式でお届けします。
目次
循環型コミュニティポイント「DOMO」のこれまで
─ DOMOをリリースしてから早1年が経ちました。
2021年7月にYAMAPはそれまでの「いいね」を廃止し、YAMAP独自の循環型コミュニティポイント「DOMO」をはじめました。リリースはじめは、戸惑いや反発のお声もいただきましたが、今は多くのユーザーさんにご理解をいただき、結果として、1年間でDOMO支援プロジェクト14個、延べ支援者数28万1544人、支援に活用されたDOMO総数9億489万3300(日本円換算で3067万7560円)の実績を積み重ねることができました(2022年7月27日現在)。
私自身もユーザーさんたちと一緒に熊野古道での植樹プロジェクトや英彦山での植樹プロジェクトに参加しました。参加者の方が植樹を楽しんでくれただけでなく、林業に携わっている方々から「登山者の方々が林業の役割や山の価値に気づいてくれて嬉しい」という声をいただきました。
山や森という共有財産をどういうふうに社会で維持し、手入れをしていくか。YAMAPユーザーさんを含む登山者の方々、自然を愛するみなさんと一緒に、前向きに楽しんで取り組んでいけたらと思います。
循環型コミュニティポイント「DOMO」の詳細についてはこちらをご覧ください >>
ヤマップがクラウドファンディングに取り組む理由
─ YAMAP FUNDINGをリリースする背景を教えてください。
背景には「共助」の仕組みを育てたいという思いがあります。
自分のことは自分でやる「自助」、行政や自治体が主に行う「公助」。この間に、みんなで助け合う「共助」があります。例えば登山道整備など、今までは自治体や国に予算があったからできていた「公助」も、人口減少が進み経済が縮小していくなかでは、登山道の維持管理が難しくなるケースが出てきています。そういったケースは、今後増えていくでしょう。
そんな時に、同じ価値観を持つ人たちが、「私たち」を主語にして、自治体や国とも連携しながら、自分たちの大切な場を自分たちも関わりながら手入れしていく。これが、これから求められる「共助」の姿です。
DOMOのリリースから約1年。「山で遊ぶ人が、山を豊かにする」。YAMAPコミュニティがこれまで培ってきた“共助”の仕組みをさらに広げるため、自然に特化したクラウドファンディング「YAMAP FUNDING」をリリースします。
クラウドファンディングは、共助の仕組みのひとつです。YAMAPにとって大事な共助を、外部のクラウドファンディングサービスに頼るのではなく、YAMAP内で独自に展開する方が、共助の仕組みを身近にできるのではないか。DOMOとも連携するクラウドファンディングは、オリジナリティがあり、可能性があるのではないか。登山コミュニティと自然に特化したクラウドファンディングは相性がよいのではないか。そういった議論を社内で積み重ねながら、自然に特化したクラウドファンディングをYAMAP内でリリースするにいたりました。
YAMAP FUNDINGの支援方法
─ YAMAP FUNDINGとはどんなクラウドファンディングですか?
YAMAP FUNDINGの大きな特徴は、自然に特化したクラウドファンディングで、かつ、YAMAPというコミュニティプラットフォームの中で展開する点です。
クラウドファンディングサービスはすでにいくつかあるものの、自然分野に特化したものは現在ありません。YAMAP FUNDINGでは、自然に特化したクラウドファンディングのプロジェクトをまとめることで、「共助による自然保護」の流れをつくり出していきたいと思っています。
YAMAPには、山登りの趣味を持つ人たちのコミュニティが各地域にあります。クラウドファンディングのプロジェクトはYAMAPのサービス内で告知されるので、プロジェクトオーナーにつながりがなくても、自然や山に興味関心のある人たちへお知らせすることができます。同じ趣味、似た価値観の人同士が、同じプラットフォーム内で「共助」の仕組みでサポートし合えることは、YAMAP FUNDINGの大きな強みだと思っています。
─ YAMAP FUNDINGとDOMOのつながりについて教えてください。
YAMAP FUNDINGは、DOMOの支援プロジェクトの延長線上にあります。バージョン1がDOMOによる支援の仕組み、バージョン2がYAMAP FUNDINGという位置付けです。
現状、DOMOの原資はすべてYAMAPが負担しています。そのため、DOMOでの支援プロジェクトは数を限定せざるを得ませんでした。これまでは、YAMAPの運営側から声をかけたり、各地で活動されている方々との出会いを通じて、プロジェクトを実施してきました。今の形で公開できる支援プロジェクトの数は月1、2件が限界でした。
ただ、支援プロジェクトのニーズが、月1、2件での対応では難しいくらい高まっていました。そこで、クラウドファンディングサービスという形に発展させることにしました。そうすることで、支援プロジェクトを今以上に増やすことができ、登山業界・自然関連分野に共助の仕組みをより広めることができるのではないか。そう考えました。また、支援方法はDOMOだけでなく、日本円(クレジットカード経由)でも支援ができるようにしました。
支援方法の詳細を下記にお伝えします。
クレジットカード経由で、日本円にて支援する場合
▼ 支援金額
1,000円〜100,000円までの範囲内で支援が可能です。
▼ 支援回数
支援回数の制限はありません。プロジェクトが終了するまで何回でも支援できます。これまでユーザーさんより「複数回支援したい」というご要望を数多くいただいておりました。今後は応援したいプロジェクトに対して、日本円にて複数回の支援ができます。
DOMOで支援する場合
▼ DOMOの日本円換算率と原資負担
これまで通り「100 DOMO=1円のレート換算(2022年7月時点)」です。原資もこれまで通りYAMAPの運営側が負担し、プロジェクトオーナーへ資金をお渡しします。
▼ 支援回数
DOMOでの支援回数は1回のみです
支援プロジェクトの表示と操作方法
アプリで対象の支援プロジェクトを表示して「このプロジェクトを支援する」をタップすることで、支援することができます。支援プロジェクトは、ホーム画面から、もしくはマイDOMOから表示することができます。
支援プロジェクトを表示するための方法は以下を参照してください。
画面上部のDOMOアイコンから表示する場合
ホームの「支援プロジェクト」から表示する場合
詳細な操作方法については、以下のヘルプページを参照してください。
どうやって支援をすれば良いですか? – YAMAP ヘルプセンター
2022年8月のリリース時点では、YAMAPアプリ上でのみ支援が可能です。Webサイト上での支援は、今後対応していく予定です。
─ YAMAP FUNDINGのプロジェクト手数料は?
YAMAP FUNDINGを立ち上げたのは、既存のクラウドファンディングサービスの手数料が高いという理由もあります。2020年のコロナ禍で、YAMAPが主体となり山小屋を支援するクラウドファンディングプロジェクトを実施しました。その際、クラウドファンディングの手数料の高さを実感しました。(*YAMAPが実施した「山小屋支援プロジェクト」の報告記事)
ありがたいことに約6200万円もの資金をお預かりしたんですけれども、結局、手数料で815万円近くをクラウドファンディングの運営会社に対して払わないといけない形になってしまいました。その経験から、もう少し手数料をおさえたクラウドファンディングがあってもいいのではと利用者の立場から率直に思いました。
そうした背景から、YAMAP FUNDINGの手数料を次のように設定しました。YAMAPが実質いただく手数料は6.4%を予定しています。加えて、決済サービス会社へ支払う決済手数料が3.6%かかります。6.4%+3.6%でYAMAP FUNDINGの手数料は10%(税別)になります。(大手のクラウドファンディングサービスのサポート込み手数料は平均で約17~20%)。手数料で得た収益をDOMOの原資に充て、持続可能な共助の仕組みにしていきたいと思います。
具体例で説明します。YAMAP FUNDINGで100万円を目標金額としたプロジェクトがあるとします。このプロジェクトが目標額(100万円)を達成して終了した場合、100万円から上記の手数料が引かれ、プロジェクトオーナーへは90万円が渡されます(正確には消費税分も差し引いた金額がプロジェクトオーナーに渡されますが、わかりやすく消費税分を除いて計算しています)。差し引かれた手数料10万円の内訳は、YAMAP FUNDINGのサービス手数料(運営費)として6.4万円、決済サービス会社へ支払う決済手数料が3.6万円になります。
透明性の高いクラウドファンディングサービスを目指していきます。
─ どういったプロジェクトが支援対象になりますか?
これまでと同様、登山道整備や植樹による森づくり、バイオトイレの整備、山小屋支援など山や登山に関係する内容が主な支援対象になります。
─ リターンの設計はどうなっていますか?
一般的なクラウドファンディングでは、支援時のリターンとして物品を受け取るケースが多いです。YAMAP FUNDINGでは、プロジェクトオーナーの負担を軽減し、支援プロジェクトそのものに注力してほしい思いもあり、過度な返礼品はなく、活動報告やお礼メッセージなどのシンプルなリターンにしています。(支援時のリターンの形態は、今後、ユーザーのみなさんのご意見をいただきながら、メッセージ以外のリターンの方法も模索してまいります。)
第一弾は、公開10周年『おおかみこどもの雨と雪』の舞台でおこなう「森づくり」
─ YAMAP FUNDINGのプロジェクト第一弾は?
スタジオ地図さん(細田守監督)の作品に『おおかみこどもの雨と雪』という映画があります。北アルプス立山連峰の山麓・富山県上市町を舞台のモデルにした映画です。この映画にちなんだ「おおかみこどもの森づくり」プロジェクトを、YAMAP FUNDINGの第一弾としてリリースします。
映画の世界観を大事にしながら、この映画を愛する方々、山を愛するYAMAPユーザーさん、地元の方々と力を合わせて、100年続く広葉樹の森をつくっていくプロジェクトです。立山連峰の麓で、実際に森をつくっていくプロジェクトからYAMAP FUNDINGの第一弾をはじめることができることに、私たちとしてもワクワクしています。
YAMAP FUNDING「おおかみこどもの森づくり」の詳細についてはこちらをご覧ください >>
山や自然を豊かにするプロジェクトを大募集
─ YAMAP FUNDINGの今後は?
今後は定期でも支援できるリターンの形態をつくっていく予定です。また、自治体と連携しながら、ふるさと納税の活用も視野に入れています。ユーザーのみなさんのご意見をいただきながら、「自然に関するクラウドファンディングならYAMAP FUNDING」と言っていただけるサービスに育てていきたいと思います。
また、YAMAP FUNDINGでは山小屋維持や登山道整備、森づくりなど山や自然を豊かにするプロジェクトを随時募集しております。もしこれらの活動に尽力しているプロジェクトオーナーや、プロジェクトをご存知の方がいれば、以下のページよりお気軽にご応募・ご紹介ください。
YAMAP MAGAZINE 編集部
登山アプリYAMAP運営のWebメディア「YAMAP MAGAZINE」編集部。365日、寝ても覚めても山のことばかり。日帰り登山にテント泊縦走、雪山、クライミング、トレラン…山や自然を楽しむアウトドア・アクティビティを日々堪能しつつ、その魅力をたくさんの人に知ってもらいたいと奮闘中。
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