投稿日 2023.02.25 更新日 2024.06.14

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冬山装備・ピッケルの選び方と使い方|雪山登山の基本 #08

今回のテーマは、雪山登山の必須装備・ピッケル。雪山ツアーも数多くこなす登山ガイドの石川高明さんに、ピッケルの部位の名称から選び方、基本の使い方まで、初心者が知っておくべきピッケルの基本情報を教えていただきました。

雪山初心者必見!登山ガイドが教える「雪山登山の基本」 #08シリーズ一覧

目次

私がガイドツアーを行うときは、まずピッケルの各部位の名称をお教えすることから始めます。というのも、「ピックを刺す」「スピッツェを突く」など、使い方を解説する際に、各部位の名称が頻出するから。これを押さえておかないと混乱必至です。

また、ここでは基本的な使い方を解説しますが、雪山登山のレベルが高まっていくほど、さまざまなピッケルワークを駆使することになります。基本情報を押さえたら、ガイドツアーや講習会でピッケルワークを学び、きちんと身につけることをおすすめします。

ピッケルの種類|ピッケルの部位の名称と用途を覚えよう!

ピッケルの部位の名称

ピッケルは各部位に名前がついています。それぞれ形状や使い道が違うので、合わせて覚えましょう。

スピッツェやピックは雪や氷に刺して使うので、鋭く尖っている。ブレードは雪や氷を削り取るのに有効。足場を作るときなどに使う

まず、ピッケルの棒の部分、これをシャフトといいます。長さや形はピッケルによってさまざまです。シャフトの下部先端には、スピッツェ(石突、スパイク)があり、雪や氷に刺して使います。シャフトの上部には、ヘッドという部分があり、その形は前後で異なっています。幅広の刃はブレードといい、氷や雪を削るのに使います。細く尖ったほうはピックといい、氷や雪に振り下ろして突き刺せるようになっています。

ピッケルは尖った部分が多いので、持ち運ぶときには要注意。専用のカバーをつけたり、布を巻いたりして、刃をむき出しにしないようにしましょう。

写真はYAMAP STOREの「PETZL(ペツル)ピックスパイクプロテクション/オレンジ」。雪山装備のラインナップはこちら

ピッケルの種類は2つ

ピッケルの種類は大きく分けて、縦走用とアイスクライミング用の2つがあります。

上から3本は縦走用。一番下のピッケルはアイスクライミング用。シャフトが大きく曲がっていて、ピックの形状がかなり鋭い

普通の雪山登山では、ピッケルのヘッドを握り、シャフトを杖のように地面に突いて使うことが多くなります。そのため、縦走用のピッケルはシャフトが長めで、真っ直ぐ〜やや曲がっています。

登山用品店では、シャフトが大きく曲がったピッケルも売られていますが、こちらはアイスクライミング用のもの。アイスクライミングでは、ピックを氷に突き刺し、それを手がかりにして登っていきます。シャフトが大きく曲がっているのは、ピッケルを振り下ろすときに力をかけやすくするため。ピッケルによっては、スピッツェ付近の形状がグリップしやすくなっているものもあります。

ピッケルの選び方と装着方法|ポイントはシャフトの長さ

杖として使いやすい長さが◎

普通の雪山登山で使うのであれば、ピッケルのヘッドを握ったときに、スピッツェが地面から10cmほど離れるものがベスト。先ほども解説しましたが、普通の雪山登山では、スピッツェを雪や氷に刺し、ピッケルを杖のようにして使うことが多くなります。そのため、短すぎると地面を突きにくくなってしまうのでNG。

長ければよいかというと、そうでもありません。ピッケルが長すぎると、滑落停止の操作など、杖以外の用途で扱いにくくなってしまいます。

ヘッドを握ったとき、スピッツェが地面から10cmくらい離れていると◎。目安としては、足のくるぶしの上あたり

ピッケルバンドも一緒に購入しよう

雪山でアイゼンが外れると非常に危険なのと同様に、雪山でピッケルを手放すようなことがあれば死活問題です。どんな状況に陥っても、ピッケルを落としてしまわないように、ピッケルバンドを使うようにしましょう。

ピッケルバンドは、肩掛けにして使うショルダータイプと、手首にループをかけて使うリストタイプの2種類があります。ショルダータイプはバンドが長いため、ピッケルを左右で持ち替えやすく、初心者にはおすすめです。リストタイプは万が一滑落したときに、ピッケルを手繰りやすいというメリットがあります。ただし、ピッケルを左右で持ち替えるときに、リストバンドも必ず付け替えなくてはならないので、注意が必要です。

ショルダータイプ。肩掛けにした黄色いバンドに、ピッケルを結んだ黒いバンドをつなげている。使わないときは、バンドにかけて持ち運べる

リストタイプ。輪になった部分に、手首を通して使う。左右で持ち替えが必要

ピッケルの使い方|基本は「ピックを斜面に向ける」

滑落すると危険な場所では必須

装着のタイミングの目安は、アイゼンと同様、森林限界以上になります。ストックが刺さらないような硬い雪や氷が出てきたときは、ピッケルに持ち替えるということです。また、滑落すると危険な場所では、必ずピッケルを使いましょう。これは滑落停止の操作をピッケルで行うためで、雪や氷の硬さとは関係なく持ち替える必要があります。

ピッケルはアイゼンとワンセットで使われがちですが、バランスを取ることだけを考えればストックの方が扱いやすいです。例えば、雪がさほど硬くなく広い斜面で滑落の恐れがなければ、ストックを使った方が歩きやすいはず。ピッケルとストックは、場面に合わせて使い分けるようにしましょう。

基本は「ピックを斜面に向ける」

ピッケルの使い方はいろいろありますが、多用するのは、スピッツェを地面に突いて杖のように使う方法です。その際に重要なのが、ピックを斜面に向けておくことです。

登りのときは、ピックが進行方向に向いているので、つまづいたり転んだりして前方へ倒れたときに、ピックが斜面に突き刺るようになっています。逆に、下りのときは、ピックが進行方向とは逆に向いているはず。これは、下りはスリップして転びやすいため。尻もちの姿勢になるので、ピッケルのヘッドをそのまま地面に押しつければ、ピックが雪や氷にしっかりと刺さります。

登りはピックを進行方向に向ける

下りはピックを進行方向とは逆に向ける

ピッケルの用途は、歩行時の杖だけではありません。転倒したときに体を一瞬で止める初期制動にも使いますし、滑落停止の操作や耐風姿勢を作るのにも使います。こういった使い方は、中級〜上級の雪山では必須の技術ですが、練習しないとなかなか身につかないもの。「ピッケルを持っていれば滑落しない」といったものではありません。道具と技術は車の両輪なのです。基本を押さえたら、ガイドツアーや講習会などに参加して、きちんと学ぶことがおすすめです。

ピッケルワークは簡単には身につかないもの。練習&経験を重ねて、きちんと習得しよう!(写真提供・石川高明)

雪山登山シリーズは今回が最終回です。冬にしか出会うことができない美しい雪山を多くの人が安全に登ってくれることを期待して、今シリーズを終わりにしたいと思います。みなさんと、どこかの山でお会いできることを楽しみにしています!

写真/宇佐美博之(提供写真以外)


ピッケル、冬山装備は「YAMAP STORE」へ

1点1点をとことん吟味し、商品ラインナップに加えているYAMAP STORE。冬山装備や道具も揃えられます。今回の記事で役割や使い方について紹介したピッケルを含めて、雪山へチャレンジを本格的に検討している方は、一度覗いてみてはいかがでしょうか。

数あるピッケルのなかでも、「PETZL(ペツル)/グレイシャー」は、初心者〜中級者向けのオーソドックスなスタイルのピッケル。歩行時の安定、滑落時の停止に使うのがメインです。表面はザラザラした塗装が施してありますが、アルマイト処理という金属の腐食を防ぐ加工。さらに先端部は窪みが設けられているため、グローブをしていても滑りにくく、しっかりグリップすることができます。

PETZL(ペツル)
グレイシャー 60cm・68cm/シルバー/¥11,000(税込)
詳細ページはこちら

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