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縦走・テント泊登山の応急処置はOK?ロングトレイル経験者のファーストエイドキット大公開
皆さんは、普段からどのような備えで山を楽しんでいるでしょうか。ケガや病気、ギアの故障…。単独行(ソロ登山)やテント泊縦走など、山をひとりで、あるいは長く歩く場合には、それ相応のトラブルへの備えが必要です。「ファーストエイド」はその最たるもの。
国内外のロングトレイルを歩き、各種メディアやイベントで現地の様子を届けている写真家・飯坂大さんに、初心者やソロハイカーでも参考になるような、長く山を歩くときのファーストエイドの考え方、持参するキットの中身、軽量化のコツを教えていただきました。
はじめようテント泊|登山テントの選び方、おすすめアイテム、活用アイデア #02/シリーズ一覧はこちら
目次
長く山道を歩くときこそ「ファーストエイド」が重要
僕自身はこれまで、大雪山や大峯奥駈道をはじめとした国内の長い縦走路や、海外ではニュージーランドのグレートウォークやアルゼンチン、ヨセミテなどのトレイルを旅してきました。いわゆる「ロングトレイル」と言われるスタイルです。その多くは、5日から長くても1週間程度の食料を背負って山を歩き、一度は町で補給をして、またその続きを始めるというものですが、僕が毎年のように通う、ネパールの東西1,700kmを横断するグレートヒマラヤトレイル (GHT) の旅の最中では、そうはいきません。1ヶ月間、町に降りることができないため、電気もガスも水道もなく電波の入らない山の中を村を頼りにしながら、そこにある食材をその都度補給させてもらいながら進みます。当然、病院などの頼れる施設もほとんどありません。
先進国や都市を基準にしたら何もないといえばそうなのですが、あるものは自然です。そのような環境を前にして、どう準備して臨むのか。
山は、元来より自己完結のフィールド。自分の身は自分で守ることが原則になります。山行中に予期せぬ負傷や病気などをした場合に応急処置を行うためのファーストエイドキットは、登山の必須アイテムです。自分自身のためだけでなく、仲間や、怪我をした登山者を助ける際にも有効になります。
以下に、ヒマラヤでの長い旅で実際に携行していた、具体的な中身を紹介していきます。
山のケガ、ギア補修に。テント泊や縦走に持参したいファーストエイドキット
・三角巾
骨折時の固定や止血や圧迫など、多用途に使える。実際に腕などを固定できるように練習しておく。
・包帯
防水のハイドロコロイドシートがおすすめ。
・ガーゼと絆創膏
傷口の保護と止血。靴擦れ対策。酒精綿は消毒用として。
・水
写真には載せていないが、怪我をしたら傷口をすぐに綺麗な水で洗い流す。かさばるマキロンなどの消毒液より効果的で、これが実はあまり知られていない大切なポイント。飲み水を常に残しておく。
・衛生手袋とマスク
医療用の手袋が望ましい。出血がある場合など、感染症の予防に活躍。マスクは山小屋の中だけではなく、予備としても使える。
・医療用のハサミ
テーピング用にだけではなく、皮膚を傷つけることなく衣服を切れる。
・テーピング
捻挫の際や骨折の固定に。非伸縮のものと、伸縮性のあるキネシオテープなどの両方をできたら揃えておきたい。かなりかさばるのがネック。僕は、GHTの途中で実際にひどい捻挫をしながら旅を続け、固定するテープが足りなくなった経験がある。その後、接骨院の友人が教えてくれた、マジックテープのテーピングを携帯するようになった。おかげで捻挫の際のアイシングや整復や固定の仕方もしっかり覚えることができている。
・常備薬
葛根湯。風邪薬。整腸剤。ロキソニンは痛み止め、炎症止めとして。ビタミン剤は、野菜や果物が不足する長旅の栄養補給・疲労軽減対策。(GHT旅では、友人のドクターのアドバイスにより、ほぼ毎日服用した。)瓶からジップロックに小分けにして、わからなくならないように油性ペンで用途を記載する。
・経口補水パウダー
脱水症状時、熱中症予防として、水に溶かして飲む。液状のものに比べて軽量。下痢などが続く際には食事を摂らず、正露丸も飲まずにこれだけをひたすら飲み続ければ治ると、アジアの長期旅行の際に出会ったドクターに教えてもらってからは、お守りのように信じ活躍する。旅先の薬局でも手に入るはず。
・ワセリン
保湿だけでなく、火傷や乾燥、靴擦れ、リップの代わりとしても活躍。日差しも厳しいヒマラヤ、様々な用途に使え、持っていてよかったものの No.1。
・エマージェンシーシート
防水防寒暴風の効果があり、悪天候や遭難時などの緊急時に体温の低下を防ぐ。寝袋の周りに巻くだけでも保温性がアップする。夏山でも長く雨にさらされると低体温症で死に至るケースもある。日帰り山行でも必ず携帯していたい。パッキングは、専用袋に入れずに単独でもよい。
・虫対策
ポイズンリムーバーは、蜂や毒虫に刺された場合に。虫除け・虫刺され薬も場所やシーズンによっては大事になる。
・その他
マッチとライター、火は命。目薬は使い切りタイプのものでもよい。綿棒。ホイッスルは救護を呼べるように常に携帯。
・ファーストエイドキットの入れ物
ファーストエイド専用の袋は目立つように、大抵が赤色になっている。自分自身のためだけでなく、他の登山者にとっても、取り出しやすく、想像できるような場所にパッキングしておきたい。軽量化のために止むを得ずジップロックなどを使用する場合もわかりやすくしておく。山行仲間に収納場所を共有しておくのもいいだろう。
ロングトレイルならではのファーストエイドの装備と工夫、軽量化
ただでさえ、荷物が多い縦走やロングトレイル旅は出来るだけ軽量化を図りたいところ。
僕自身はカメラ機材もあるのでバックパックの重量は20kg以上になってしまうこともしばしば。UL系の最新の道具もおり混ぜつつ、できる限りの工夫をして、身の安全や仲間を守るための道具は備えておきましょう。
・リペア用品
ダクトテープはテントやウェアーの補修など道具の修繕に。かさばる場合は潰しておく。ホームセンターなどでも売っている。安全ピンも同じような用途に。針と糸は、GHTにて実際に手袋の穴あきを繕った。普段は不要。細引きは、何かと使える。長めに用意して、ロープワークも勉強しておきたいところ。
・爪切り
長旅では、ないと不便する。軽量のものを選択。
・軽量化の工夫
かさばる箱やケースは、ジップロックやスタッフザックにまとめて入れ替える。長旅では道具の替えが効かないため、自分で直す。共有できる装備は、グループで一つにする。但し、ファーストエイドは単独行動時に必要になる。GHT旅の場合は、ダクトテープなどのリペア用品と、かさばるテーピング類を共同装備にしていた。
これは、あくまで僕のこれまでの経験として捉えてください。ファーストエイドの講習会への参加も勉強になります。実践あるのみです。どうぞ、ご自分のスタイルや山行、体力に合わせて足し算引き算、カスタマイズしてみてください!
いつか長い山旅をしたい、ロングトレイルを歩いてみたい方々へ
ロングトレイルという憧れ。テント泊もいつかはしてみたい。けれど、一年のうちに長い休みは何度も取れないという方がほとんどだと思います。私は体力がないから無理だと思っている方も多いかもしれません。
現在、山のプロと呼ばれていると有名な登山家もベテランハイカーも最初はみな初心者でした。僕自身も、20代の前半から山歩きに出会い、たくさんの山の先輩に山の楽しさや厳しさを教えていただきました。今考えても不思議と導かれゆっくりと惹かれていったのだと思います。
ステップアップしていく際には、道具を揃える楽しさもあります。先ずは、近くの森や里山、低山からでも構いません。日帰りから山小屋泊、テント泊。身の丈にあった場所から無理な計画をせずに歩きはじめてみてください。次第に体力も経験値も備わってくると思います。
大切なのは山に対する謙虚な気持ちです。その先にはロングトレイルも夢ではありません。日本でも海外でもいい。北アルプスでもジョンミュアトレイルでもGHTでも、ワクワクする目標を決めて一歩一歩。一度きりの人生です。
山での経験値は、ファーストエイドの知識に限らず、日常の中のふとした瞬間に自分や家族を支えてくれます。災害が増えている落ち着かない近年ではありますが、いざという時は突然やってきます。大切なものを守るためにも、想像力の幅を広げて、備えと実践。これからも長く山を楽しんで付き合っていけるように、安全で健康でいたいものです。
僕自身はまだまだ道半ばですが、この記事が少しでも皆さんのお役に立てたのであれば嬉しく思います。公開される頃には、世の中の日常が少しでも明るく戻ってきていることを願っています。
山へ深呼吸をしに、行きましょう!
登山にあたり、命を守るために身につけておくべき装備・道具や、知っておくべき知識・技術は色々ありますが、登山保険もぜひ入っておきたい、大事な備えのひとつ。
YAMAPグループの「外あそびレジャー保険」は、いざ遭難救助が必要になったときの高額費用や、部位・症状別のケガの補償をしてくれるだけでなく、登山以外での外遊びや日常のケガの補償もしてくれます。
また、遭難・行方不明時には、同じ山に登っていたYAMAPユーザーから目撃情報を募ることができるサービスも提供。
期間は7日から選べるので、単発での山行にも対応。登山や海・川でのアクティビティによく行く方にも便利な保険です。
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写真家
飯坂 大
国内外を多く旅し、そこに生きる人々や自然に寄り添う暮らしを撮影。山に魅せられ、世界各地のトレイルを歩く。『 TRANSIT 』『 PEAKS 』をはじめ、山と旅やライフスタイルの分野など、様々なメディアで活動する。ネパールを横断するグレートヒマラヤトレイルを踏査する日本初の試み「 GHT Project 」を仲間と推進中。 これまでにイベントを、山と渓谷社・パタゴニア社など、全国で多数開催している。今夏に「Great Himalaya Trail の写真集」と「GHT Project の旅のZINE」を同時に発表予定
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