投稿日 2026.08.25 更新日 2026.08.25

登る

はじまりの地、木曽駒ケ岳へ再び|メンバー小田さんが新連載【スーパー登山部の道草日誌】

2023年の結成から名古屋を拠点に活動し、山好きにはすっかりおなじみとなった5人組バンド「スーパー登山部」。楽器を歩荷して北アルプスなどで演奏を続け、今夏には、日本最大級の音楽フェス・フジロックフェスティバルでパフォーマンスするなど、年々、活躍の幅を広げています。

山で鍵盤ハーモニカを吹くバンドの中心メンバー・小田智之さん(Key)が、メンバーとの思い出の中央アルプス・木曽駒ケ岳(2,956m)を再訪。メンバーとの初登山や父親との富士山の思い出などを交えながら、寄稿してくれました。

目次

スーパー登山部の思い出の地、木曽駒ケ岳

2026年7月4日(土)

私はひとり車を運転しながら、木曽駒ヶ岳に向かっていた。時刻は朝6時を過ぎたころで、窓を開けると涼しい朝風が肌に触れる。

カーステレオからはビートルズのHere Comes The Sunが流れている。青い空、白い雲、流れていく隣の山並みがキラキラと美しくみえる。天気も悪くなさそうだ。私はこれから3年ぶりに木曽駒ヶ岳に登るんだ。

初登山のことを思い出す。中学1年の頃、父に連れられて登った富士山。そのときは日帰りで本八合目まで。

もう遠い記憶になってしまったが、夏とは思えない心地いい涼しい風は今でも覚えてる。

高いところに登るのが好きだった。

遊具でもなんでも見つけたらとりあえず頂上までよじ登り、そこからの景色を眺めるのが好き。そして、そこから雲に向かって、届かないと分かっていても手を伸ばしたものだった。ちなみにゲームでもそうだった。(マリオ64では迷わずボム兵城に登ったし、マイクラでは高い場所を好んで家を建てた)

メンバーとの初登山

木曽駒ヶ岳は、私のやっているバンド「スーパー登山部」のみんなと初登山をした場所だ。

3年前、バンド活動を始めたばかりの頃。初ライブをするタイミングでバンド名を考えた。ドラムの深谷さんの口からぽっと出た「スーパー登山部」。

私が登山の話をよくしていたので、てきとうに思いついたみたいだけど、私以外の4人は登山未経験。せっかくこの名前にするなら登山もしてみようと声をかけると、みんなも興味があるみたい。そうしてメンバーとの初登山計画を立てることになった。

「どの山がいいかなあ」と、山までのアクセスやコースタイム、そして頂上からの景色や下山後のご飯や温泉処をそれぞれ調べる。初登山は大切だ。この登山で次も登るか、もう2度と登りたくないとなるか決まるといっても過言ではない。

だからこそ、この登山は、なんと3回も延期した。5月下旬に予定していた登山は雨予報。不安定な天気では登らないことを決めていたが、季節が梅雨に入ってしまったので、結局みんなでの初登山は7月27日までずれ込んでしまった。

しかし結果的には、夏山ハイシーズンの木曽駒ヶ岳に登ることができたのだった。

3年前の千畳敷カール。まだ私の笠も三度笠でした。

木曽駒ヶ岳は長野県にある標高2,956mの高山だ。ほぼ3,000mの山にも関わらず、この山には登山初心者も多く訪れる。なぜなら駒ヶ岳ロープウェイに乗ることで、2,612mまで登ることができるからだ。標高差は約300m、およそ4時間で往復できるため、高山帯の絶景を比較的気軽に楽しめる。

菅の台バスセンターからバス→ロープウェイと乗り継いで登山口まで向かう。バスの列が本当に長くて、なんと2時間も待ちました…。

久しぶりに乗ったロープウェイは霧の中に突入して何も見えなくなってしまった。駅にたどり着いて、ロープウェイを降りるとぐんと気温が下がって少し寒いくらいだ。晴れ予報でも山の上は雲に包まれていて何も見えないことはよくある。

ちょっと残念だなと思いながら、そのまま駅を抜けて建物を出ると、なんと霧は無く、眼の前にきらきらとした千畳敷カールが広がっていた。

ロープウェイ駅から出てすぐに、今回登る宝剣岳の険しい稜線が目の前に!

予想外の絶景に思わず、周りの人達と同じように声が漏れ出る。あの時のメンバーも声を出して景色に感動していたっけ。3年ぶりの景色を眺めながら出発の準備を始めた。

木曽駒ヶ岳へ続くメインルートは、登山口にあたる駒ヶ岳神社を右に進み、千畳敷カールと呼ばれるお椀型の谷地形の真ん中を突き抜け、八丁坂を登り、乗越浄土へと続いていく。

遠目からみても本当にたくさんの人が登っていくのが見えるのだけど、今回自分は極楽平の方へ。駒ヶ岳神社を左に曲がり、人が少なくて心地よい登山道を自分のペースで登っていく。極楽平まで登ると稜線に上がるので、ぐっと景色が開けて嬉しい。前回はすぐに右に曲がっていたけれど、今回は左の方にある島田娘という地点まで寄り道ピストンしてみることに。

八丁坂の方の景色。本当に多くの登山客が登っていくのが見える。

道中の座り込む女性

すると道中に座り込んでしまっている女性の方を見つける。心配になって「大丈夫ですか?」と声をかけて覗き込むと、自分の角度からは見えなかったが足元に咲く小さな花の写真を撮っていた。「ウスユキソウ」と言うんですと彼女は教えてくれた。

山の花の名前はきいてもなぜかすぐ忘れてしまうので、携帯にメモしておく。白い小さな花だけど、より近くで見るとふさふさとした質感でなんだか不思議。植物に詳しくなると山がもっと楽しくなるんだろうなといつも思う。(でも覚えられない)

正式には「コマウスユキソウ」という。意外とふさふさしてる

島田娘に到着し、空木岳方面のダイナミックな稜線(本当にどこまでも続いているように見える)も拝みつつまた戻ってくる。

そして、その後は3度目となる険しい岩の稜線を越えて宝剣岳、そこを降りると宝剣山荘・乗越浄土に辿り着いて、メインルートに合流。私はこの宝剣岳のあるゴロゴロとした稜線が大好き。

クライミングの要領で両手を使って大きな岩壁を登ったり下ったり、岩の隙間を通ったり。断崖絶壁の場所はドキドキするのだけど、そうしたアスレチックなことも昔から好きだった。私はこれを「高所興奮症」と呼んでいる。

山での一期一会

宝剣岳山頂にて。

バンド活動を始めてから、ソロ登山をする回数はぐっと減ってしまって、むしろソロ登山のほうが新鮮な感覚になる。

一人だと話す人がいないから寂しいかと思いきや、意外と一人のほうが声をかけられたり、山行を通して深く仲良くなる人がいたりするのも面白い。

西穂高岳にソロで登ったときに、同じくソロで登りに来ていた人たちと道半ばでなんとなくのパーティになり意気投合した。その人たちとは今でも交流があったりして、登山部のライブを観に来てくれる人もいるのだから人生は何があるか分からないなと思う。

木曽駒ヶ岳での道中は「スーパー登山部の方ですか?」と、今までで一番声をかけられた。演奏をリクエストされて、宝剣岳の山頂でも鍵盤ハーモニカを吹いた。

バンドの認知度が上がってきていることもあるが、山の性質もあると思う。高尾山や南アルプスの北岳だとあまり声をかけられないのだ。高尾山は山界隈というより一般層の割合が多く、逆に北岳はSNSを観ないコアな登山層の方が多いのではと思ったりする。

逆に、地元の愛知の山(御在所岳や猿投山)やSNSをよく見る初心者や若い人が登る北アルプス・燕岳の方が声をかけられるのだ。

声をかけてくれるのは純粋に嬉しいし、活動のエネルギーになっている。山での一期一会には、いつも感謝の気持ちです。

エーデルワイスのリクエスト

初めて山セッションしたのは、この頂上山荘前だったな。

宝剣山荘から木曽駒ヶ岳までの間には、稜線伝いに中岳というピークを一つ挟む。全体的に緩めな道のりではあるけど、今回は中岳はスキップできる巻き道を選んでトラバースしていく。

途中、少し足選びを考えるような岩岩とした場所があって好きなのだ。その巻き道を歩いているときにすれ違った登山者から鍵盤ハーモニカでの演奏をリクエストされる。

「何か聴きたい曲はありますか?」と訊くと「エーデルワイス」と。子供の頃ヤマハ音楽教室で歌っていたときのことを思い出しながら演奏する。あとから、さっきの女性に教えてもらった白い花、ウスユキソウが、エーデルワイスの仲間だということを知った。

木曽駒ヶ岳山頂で「風を辿る」を歌うHina。2023年7月27日撮影。

ようやく木曽駒ヶ岳の山頂に到着した。残念ながら全体的に薄いガスで覆われていて展望はない。記念に山頂標識の前で写真を撮りたいが、あいにく今回はソロ登山。

そこで極楽平くらいから、抜かしたり抜かれたりしながら、実質一緒に登っていたカップルのお二人にお願いして写真を撮ってもらった(自分もその後に頼まれて、何組か写真を撮っていた)。

木曽駒ヶ岳の山頂部は広いのでテキトウなところで腰掛け、ザックの中身を取り出していく。さて、お昼ご飯を食べよう!

木曽駒ヶ岳(標高2,956m)登頂しました!

ガスバーナーを貸して気づく、山での楽しみ

山頂ご飯を食べるべくガスバーナーでお湯をあたためていると、女性3人組から声をかけられる。山頂標識の前で同じタイミングで記念撮影していた人たちだ。

なんだろうと思ったら、ガスバーナーの火が点かなくて困っているそう。なんと彼女たちは私と全く同じガスバーナーとガス缶を持っていて、それに気付いて、もしかしたらと話しかけてくれたそうだ。私も試してみたが、ガスの匂いはするんだけど確かに点かない。おそらく初期不良でどうにもならなそうだったので、ガスバーナー一式を貸した。

全く同じ組み合わせでびっくり

彼女たちは今回が初めてのアルプスで、そのためにガスバーナーなども気合を入れて用意してきたそう。3人の笑顔がとても素敵だったので写真を撮らせてもらった。なんか、いいな。自分たちもまさにそうだったな。山ご飯や楽器を持って行って、山の上でゆっくり楽しむ。そうした小さな楽しみの共有の積み重ねが嬉しいんだ。

不思議なもので、タイミングを図ったかのかように少し霧が晴れて青い空と広い景色が眼の前に広がる。自分の心も晴れていることに気付く。子供の頃手を伸ばしていた、あの雲の上に今こうして自分自身の足で立っている。

山での出会いって面白い。

そのあとは、環境省の福田さんと合流して、宝剣山荘へ戻る。

実は今回木曽駒ヶ岳に足を運んだのは、環境省の方にお声がけいただき、

中央アルプス(木曽駒ヶ岳周辺)でのライチョウ調査のお手伝いをするためだったんだけど、それはまた次の日のお話。

メンバーと初登山した木曽駒ヶ岳は、

私にとってこれからも特別な山でありつづける。

あなたの初登山は、どこでしたか?

小田さんの木曽駒ヶ岳の活動日記
https://yamap.com/activities/25741042

スーパー登山部ホームページ
https://superclimbingclub.com/

YAMAPが運営する登山・アウトドア用品の
セレクトオンラインストア

すべての商品を見る

記事が見つかりませんでした。

すべての商品を見る