投稿日 2025.02.26 更新日 2025.02.26Sponsored

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熊野古道の玄関口「和歌山県田辺市」の歩き方|海と山、情緒あふれる街の魅力

和歌山県田辺市は、熊野本宮大社へと続く「熊野古道 中辺路(なかへち)」の玄関口。古道歩きだけにとどまらず、海や低山、街歩きの魅力がたっぷり詰まったこの町は、ハイカーの聖地とも呼べる場所であることはご存じですか?

今回は、YAMAPと田辺市が5年前から取り組んでいる「熊野REBORN PROJECT」(以下、リボーンプロジェクト)の様子とともに、低山トラベラー 大内征さんが案内する旅の様子をお届けします。最高の夏旅を疑似体験したあとには、きっと熊野に導かれること間違いなしです。

目次

下山直後に川へとドボン! これぞ「大人の夏休み」

夏の山歩きでびっしょり汗をかいたその足で、里山を流れる川へとドボン! ニッポンの古き良き夏休みの原風景ですが、よくよく目をこらしてご覧になると、そこで年甲斐もなくはしゃいでいるのは平均年齢40〜50歳に迫ろうかという大のおとな達。いつもは地元の小学生でにぎわう天然プールをちょっと拝借し、童心に返って川遊びに興じたというわけです。

それが和歌山県田辺市での夏旅のひとコマ。

田辺市は、2024年に世界文化遺産登録20周年を迎えた熊野古道(紀伊山地の霊場と参詣道)の一部を擁する、和歌山県南部の中心地。熊野本宮大社へと通じる数々の巡礼路をはじめ、街歩きから低山ハイクまでさまざまなトレイルが楽しめる歩き旅にもってこいの地でもあります。

大内征(おおうち・せい)。山里の歴史文化を辿り、ローカルハイクと低山ワールドの魅力を探究。NHKラジオ深夜便「旅の達人 低い山を目指せ!」、熊野古道・サンティアゴの道 共通巡礼アンバサダー、著書『低山トラベル』シリーズ他

そんな同地に足繁く通っているのが、低山トラベラー/山旅文筆家の大内征さん。前述の川遊びシーンは、大内さんのガイドのもと、海から横丁、そして里山まで、田辺市の魅力をぞんぶんに味わい尽くす夏旅でのハイライトなのでした。

実はこの原稿を書いている私(熊山)も、大内さんの手引きでまんまと田辺市の虜となり何度も再訪しているファンの一人。というわけで今回は、歩き旅のプロフェッショナルが贈る“和歌山県田辺市の楽しむ3日間”をあますところなくお届けします。

旅の始まりは”シオゴリ”、そして”サケゴリ”から?

みなさん「シオゴリ」という言葉を聞いたことはあるでしょうか? 筆者は田辺で初めて知ったのですが、漢字で書くと「潮垢離」。つまり、潮(塩)で垢(あか)を落とすこと。中辺路を歩いて熊野本宮大社へと参拝する前に、まずは海水をあびて身を清める儀式を指すのだそうです。

熊野本宮大社への参詣ルートはさまざまありますが、その中でも田辺市中心部はもっともメジャーであった大阪方面から海岸線を南下する「紀伊路」の終点にあたる場所。ここからは内陸(中辺路)へと入るため、最後となる海辺で潮垢離をしてゆくのが巡礼者の習わしだったのだとか。

大内さん率いる大人の夏休み一行も、まずは潮垢離なのか、いったん海へと向かいます。

条件がそろえばウユニ塩湖のようなミラーワールドが広がる天神崎へ。条件がそろった時の絶景は田辺市観光協会HPやインスタグラムにて

やってきたのは近年「和歌山のウユニ塩湖」と評判を呼んでいる天神崎。田辺湾の北側に突き出た岬は、周辺に広がる岩礁に潮溜まりができることで、まるで鏡写しになった奇景が楽しめるのだそう。

この日はあいにくの雨模様でシャッターチャンスには恵まれませんでした。どうしても肉眼でご覧になりたいという方は、「雨風のない引き潮時で、潮位150〜140cmあたり」が狙い目だそうですので、田辺観光協会ホームページの「おすすめカレンダー」とにらめっこして訪れてみてください。

とはいえ、現実は雨がそぼ降るさびしい海岸歩き。しかし大内プロデュースの旅はただでは転びません。

入り口には案内板があるので迷うことはないでしょう

 

「ちょっとこっちへ」と藪から棒に、ではなく藪そのものへと分け入っていくではありませんか。まるでけもの道のような、やや荒れ気味のヤブ道を駆け登った先が、天神崎からすぐの低山「日和山(ひよりやま)」です。標高わずか35mながら汗だくでたどり着いた岩場の山頂は開けており、田辺市街を見渡すことができます。

日和山からの眺望はぜひご自身の目で

「田辺にやってくる旅行者の多くは熊野本宮大社に続く中辺路を歩くことが多いと思うんですが、実は田辺市街地からすぐの場所にも、この日和山はじめ、ひき岩群や龍神山(りゅうぜんさん)、三星山(みつぼしやま)、高尾山(たかおやま)などなど、歩き甲斐のある良い低山が豊富に点在しています」と大内さん。

かつて筆者も地元有志で構成される「田辺低山登山部」といっしょに数々の山行にお付き合いしましたが、丸1日を要するハードなトレイルもございます。ご興味がある方は、田辺市のおすすめ登山・低山ハイク情報をご覧ください。

その名の通り、かつて鬪雞(鶏同士を戦わせる競技)が行われていたとされる「鬪雞神社」

下山後は、八幡神社と出立神社、稲成神社が合体した世にも珍しいスーパー神社「八立稲神社」(やたちねじんじゃ)や、世界的博物学者である南方熊楠の顕彰施設「南方熊楠顕彰館」、そして世界遺産・熊野古道の一部を構成する「鬪雞神社」などを巡ったのですが、あら、潮垢離はどうなりましたっけ?

もちろん忘れておりません。

はや夕刻が迫ろうとするなか、一行が向かったのは田辺市街中心部にほど近い「扇ヶ浜海水浴場」。JR紀伊田辺駅前からまっすぐ歩いて15分ほどの田辺市民いこいの場には、潮垢離場(しおごりば)と呼ばれる碑が建てられており、現在でも敬虔な巡礼者がこちらで身を清めてから熊野本宮大社へと向かうのだそう。

明日以降の熊野詣を前に、海水で身を清めるハイカーたち

明日から中辺路歩きを控えている我々も、素足を海水に浸して潮垢離としゃれこみます。本来は全身で海水を浴びるため、着替えがある方はダイブ推奨。ご安心ください、シャワー完備(海水浴場オープン時期のみ)です。

そんな古くから続くお清めのならわしですが、潮垢離と同時に忘れてはならないのがお酒によるお清め、その名も「酒垢離(さけごり、しゅごり)」です。と言うのは呑兵衛の屁理屈?で、ようは単なる飲み会。実は田辺中心部には「味光路」(あじこうじ)という県内最大級の繁華街があり、狭い路地裏に200店ほどの個性的な飲食店が軒を連ねているのです。

味光路はJR紀伊田辺駅のすぐそば。路地が入り組む約200m四方のエリアには居酒屋、バーなどの飲食店が200軒近くも集まる

あまりに層がぶ厚いため、一度や二度の訪問では攻略できず、大内さんをはじめとした田辺ファンは幾度となく訪れて飲み歩くことになるのです。

これもまた、田辺のトレイルと言えましょう。

この日も南紀の美味しい海鮮を肴に乾杯。水揚げから数時間で提供されるため、もっちりとした食感が楽しめる「もちがつお(写真手前)」は田辺ならではのグルメ

語り部市長とともに熊野古道・中辺路の核心を歩く

潮垢離と酒垢離を経て準備万端の2日目。いよいよ田辺歩き旅のメインとも言える、熊野古道・中辺路に参ります。

ちなみに熊野古道は大きく6つの巡礼路に分別されます。三重県・伊勢神宮から紀伊半島の東海岸をたどる「伊勢路」、奈良県・吉野山から険しい山間部を歩く「大峯奥駈道(おおみねおくがけみち)」、和歌山県・高野山からの「小辺路(こへち)」、大阪から紀伊半島の西海岸を下る「紀伊路(きいじ)」、紀伊路はさらに田辺市で「中辺路(なかへち)」へと接続して熊野三山を繋ぎます。最後に紀伊半島の南側をぐるっと巻くのが「大辺路(おおへち)」です。

昔の人々は当然、自分の足で歩いた紀伊路・中辺路ですが、現代のスタート地点は紀伊田辺駅からバスで45分ほど内陸へ入った山間部に位置し、熊野三山の聖域の入り口とされる「滝尻王子」からとなります。なお、王子(九十九王子)というのはもともと紀伊路と中辺路の沿道にあった神社や祭祀場が、12世紀から13世紀ころにかけて熊野大社の御子神として組織化されたもので、道しるべ的な役割を果たしています。

この日はまず、滝尻王子から高原熊野神社までの山道4kmを、コースタイム2〜3時間ほどで踏破するのですが、ここで道案内役のいわゆる語り部として特別ゲストがジョインしました。それが田辺市長の真砂充敏さん。

真砂市長がかぶっているのは、地元に伝わる貴重な伝統工芸品「皆地笠(みなちがさ)」。現在は職人も限られており入手困難なのだとか

準備体操したのち、さっそく一行を迎えるのが急登。そう、滝尻〜高原コースの最初にして唯一の難所が出だしのそこそこ長く続く登り道なのです。筆者もかれこれ4度目でしたが、わかっていてもやっぱりしんどい。かろうじての救いは樹林帯のしっとりとした涼しさでしょうか。

そんな中、地元育ちで「このあたりは庭」と豪語する真砂市長は、中辺路沿道の史跡から、現在の田辺市が抱える観光や森林の課題まで、あちこちに話題を振りまきながらすいすいと登っていきます。今年で御年67歳だそうですが、マジですか。

滝尻王子から高原熊野神社までの道のり。この日は3時間程度かけて歩きました

なお、滝尻〜高原コースの難易度は、関東では高尾山稲荷山ルートから小仏城山程度、関西では六甲山の風吹岩ルートあたりですので、ご参考までに。実際は王子ごとに休憩を挟み、ゆっくり歩けば2時間ちょっとで高原までたどり着けるでしょう。

そうそう、2025年2月28日までの期間は、デジタルスタンプラリーも楽しめますのでYAMAPとともに事前準備をお忘れなく。

デジタルスタンプラリー「一度参れば二度、三度。何度も行きたい熊野参詣 in たなべ2024」の詳細はこちら

高原熊野神社近くの展望台は見晴らしがよく、周囲には公衆トイレや無料休憩所もありランチタイムにぴったり。たまにコーヒー屋台が出ていたり、近隣にも少しだけ飲食店があります

心地よい汗をかきつつたどり着いた高原熊野神社では、青々とした夏山や旧中辺路町の集落を見下ろしながらお弁当タイム。ここから続いて中辺路を歩き、その日のうちに近露王子か継桜王子まで向かって1泊し、次の日に熊野本宮大社にゴールする1泊2日全39kmの行程が一般的なのですが、今回は美味しいところをダイジェストというわけで、食後は語り部市長とお別れし、一行は車で熊野本宮大社の神域の入口とされる「発心門王子(ほっしんもんおうじ)」まで移動します。

熊野本宮大社、そして大斎原の大鳥居へ

一向は車に乗って、いったん熊野本宮大社前を横切り、発心門王子へ。こちらの麓にはバス停もあるので、全行程を歩き通す自信がないという方も、路線バスを上手に利用すればこうして短めのパートで区切って中辺路を繋いで歩けます。

後半戦は、発心門王子から熊野本宮大社までの約8kmのコース

ここからは、コースタイム2時間半程度で熊野本宮大社です。ルートも険しい山間部ばかりではなく、里山を通る車道やあぜ道、登山道のミックスで田辺の地域の人々の暮らしの中にお邪魔する、まるで遠足のような気分。

しかし空模様は、昨日の雨とは打って変わってときおり夏の午後の太陽が照りつけ、蒸し暑いほど。あともうひと踏ん張りというところで一行の体力をジリジリと奪います。

集落やあぜ道、山間部などバリエーションに富む後半戦。日よけと虫よけも怠りなく

周囲の景色も楽しみながら、ゆっくりと歩を進めたいところではありますが、本日のゴールとなる熊野本宮大社の参拝時間は17時まで。大内さんも一行を焦らせたいわけではないものの、「ちょっとペースあげますよ」とややスピードアップ。水呑王子、伏拝王子とつぎつぎクリアしてゆきます。

焦る一行にようやく安堵の表情が広がったのは、大斎原(おおゆのはら)の大鳥居が見下ろせる展望台でのこと。大鳥居があるのは、明治22年の大水害で流された旧熊野本宮大社が建っていた場所。上から眺めると、現在は土手があるとはいえ、ほぼ河原の延長に位置していたことがうかがえます。

かつて旧熊野本宮大社があった場所は大斎原と呼ばれ、現在は入り口に大鳥居が建っている

ここからは、熊野本宮大社裏参道へと直結する長い下り道を残すのみ。日差しも落ち着き、再びひんやりとした樹林帯を進んで、閉門間際にとうとう熊野本宮大社に到着です。「一度は熊野古道を歩いてみたい」という初訪問が多かった参加メンバーの面々だけに、喜びもひとしお。大内さんの解説のあとは参拝したり、お守りを授かったり、記念写真を撮影したりと、おのおの熊野本宮大社でやりたかったことを果たしたようでした。

熊野本宮大社に詣でたあとは、熊野速玉大社、熊野那智大社と巡礼するのが正式な順番

参拝を終えた一行は、さらに足を伸ばして本宮からほど近い大斎原(おおゆのはら)へと向かいます。つい先ほどは展望台からは小さく見えた大鳥居も、下から見上げると圧倒的な存在感。その鳥居をくぐった先には、目ぼしい構造物がなくただ森の中にぽっかりと広場が開けているだけ。人影もまばらになった夕刻ともあいまって、かえって聖地らしいしんとした空気が漂っておりました。

というわけで旅の核心ともいえる2日目を終えた一行は、近隣のゲストハウスへとチェックイン。世界遺産に登録されて以来、欧米のハイカーを中心に整備されてきた熊野古道沿道だけに、歩き旅をサポートする民宿、ゲストハウスが豊富なのも田辺の特徴です。今宵お世話になるのが「道の駅 熊野古道ほんぐう」横の「ゲストハウスはてなし」。

夕食は田辺周辺で採れた食材を使ったBBQでしたが、「その前に近くの川で汗を流したい!」と少年少女に戻ってダイブしたのがTOPの写真だったというわけです。

基本素泊まりのゲストハウスはてなしですが、ケータリングを利用すればオーガニックな地元食材をふんだんに使ったBBQや朝食、お弁当などを手配可能

熊野古道の景観を未来へと継ぐために

翌朝、まだ空が明けきらない早朝から一行が向かったのは、昨夕も訪れた大斎原の大鳥居。実はこの大鳥居周辺の水田はゲストハウスはてなしのオーナー・てっちゃんが耕作しているもの。

高齢化による農家の減少は、ここ田辺も同様で、「このままでは世界遺産の景観が失われてしまう」という危機感から立ち上がったのが、金哲弘(通称:てっちゃん)をはじめとした若手の有志たち。『大斎原の景観を守る』プロジェクトを立ち上げ、田んぼを保全するため企業や個人を対象に、田植えや草むしり、稲刈りなどの農業体験参加者を募りながら、いわば熊野古道の道普請をおこなっているのです。

大阪で小学校の先生をやっていたてっちゃんは、田辺に惚れ込み家族みんなで移住してきたのだそう

この朝、一行が体験するのは草むしり。みんな裸足になって、泥だらけの田んぼに分け入り、ローラー作戦で雑草をむしっていきます。ぬかるんだ泥に足を取られながら、慣れない中腰が続けば、眉間や鼻筋を汗がしたたり落ちてゆく。しかし、のんびりしている暇はありません。夏の太陽が登りきればとんでもない暑さになってしまいますからね。草むしりは時間との戦いでもあるのです。黙々と作業する、その隣で大斎原の杜からはミンミン蝉の鳴き声がこだまします。

後から聞いたところによると、「実は泥遊びが子どもの頃から苦手で」という方もいらっしゃったようですが、体験した後は「意外と平気でむしろ楽しかった」と一言。なにごともトライしてみないとわかりません。また、この日お世話をした田んぼで採れたお米は、後日参加者に郵送されたとのこと。その味もひときわ美味だったことでしょう。

こうして俯瞰すると、お米作りもまた、熊野古道の景観を構成する大事な営みであることがわかります

早朝の野良仕事を終え(ふたたび川へとドボンしつつ)、朝食を取った後は、いよいよ田辺歩き旅のラストを飾る山歩き「大日越」です。熊野本宮大社を参拝したあと、多くの巡礼者が訪れるのが日本最古とも謳われる温泉・湯の峰温泉。そこへアクセスするには路線バスやタクシーが一般的なのですが、当然、中世日本では歩いて向かっていたわけでして、それが大斎原から標高約300mの峠を越えるルート「大日越(だいにちごえ)」なのです。

最後に待つのは「大日越」

わずか標高300m、距離にして2.5km程度といえども、前日は10km以上歩き、今朝も1時間近く草むしりにいそしんだ一行のカラダはそこそこお疲れ気味。しかも滝尻王子同様、大日越もスタート直後が急登続きで足腰に容赦なくダメージを与えます。さらには途中から激しく雨まで降ってくる始末。さっきまで晴れていたのに!

アタックザックだけの身軽さとはいえ、連日の行動と暑さ、さらには雨で疲労困憊のメンバーたち。でも、あと少し!

筆者も大日越は2度目でしたが、ここは毎回しんどいパート。湯の峰に着いたら、あとは温泉に入ってゆっくり休むだけだと頭が勝手にゴールしているので、最後の峠がやたらと堪えるのです。

それでも歩いていればいつかは終わるもの。雨に濡れた葉からボタボタとしたたる水音を聞きながら、びしょ濡れで黙々と歩き続けること90分。誰一人リタイヤすることなく無事に湯の峰温泉へとゴールイン。おのおの汚れと疲れを温泉とビールで洗い落としましょうぞ。ちなみに潮垢離、酒垢離にならって、温泉で体を清めることを「湯垢離(ゆごり)」と呼ぶそうです。

しかし、真面目に最後はつらかった。逆にゴールに温泉もビールもなかったら、筆者はどうにかなっていたかもしれません。

入浴できる世界遺産「つぼ湯」(予約が必要な場合あり)もオススメ

と、もろもろ端折りつつメインの歩き旅の模様を中心にご紹介しても、たった3日間でこれほど濃密な体験が味わえるのが和歌山県田辺市の魅力。もちろん旅程すべて田辺中心部を拠点に低山歩きと味光路巡りにあてるもよし、全編ガチで中辺路歩きにあてるもよし、と目的や体力、日程に応じてアレンジできる懐の深さも兼ね備えています。

5年目の熊野リボーンプロジェクトを終えて

そんな田辺歩き旅の3日間でしたが、この集まりはそもそも和歌山県田辺市とYAMAPが5年前より取り組んでいる関係人口創出事業「熊野リボーンプロジェクト」の第5回目(2024年7月開催)の模様なのでした。

ワークショップの構成立案や現地ガイドはプロジェクトが始まって以来ずっと大内征さんが担当。と言いますか、自治体と民間企業の取り組みゆえ担当者が変わることが常でして、このプロジェクトにずっと関わり続けているのは大内さん、そして語り部の真砂市長、田辺市熊野ツーリズムビューロー会長の多田稔子さんのみ。裏を返せば、同地を知り尽くした大内征プロデュースによる、濃密すぎる田辺歩き旅が提供されているとも言えます。それだけに満足度も驚異的で、アンケート調査によるとプロジェクト参加OBの実に9割が再訪するほど。

詳しくは、続くパート2に譲るとしまして、実は筆者ももとはプロジェクト第1回目の参加者の一人。もはや5年前なのですが、以降プライベートで何度も訪れてしまうのは、大内さんとの旅の面白さや田辺の風土の奥深さもさることながら、いつ遊びに行っても快く迎えて遊んでくれる田辺市のみなさんの人柄によるところが大きいように感じます。

最後は大鳥居の前で「おつかれ山」!

そんな熊野リボーンプロジェクト。次回の開催は未定ではありますが、この記事を含め過去のアーカイブをご参考いただくと和歌山県田辺市の歩き旅の楽しみ方、そのヒントが散りばめられています。もし第6回が開催されるのでしたら参加のご検討を、そうでなくともプライベートでもぜひ訪れてその魅力を感じていただきたい。歩くことが大好きなYAMAPユーザーならきっと気に入ってもらえる、それが田辺市です。

最後に、今回参加した熊野リボーンプロジェクト第5期のメンバー紹介で締めくくりましょう(※50音順)。

大島晶子(おおしま・あきこ)さん

会社員

山岳信仰の家系というルーツを深堀りするため全国の修験場を訪れる。今後は経験とともに知識も蓄えたい

小野健一(おの・けんいち)さん

飲食店経営

事前に紀伊路から入り、事後の小雲取越えや玉置神社にも訪れました。皆地笠を予約したのでまた取りに来ます

小野里美(おの・さとみ)さん

デザイナー

いつも旅行前に作っている自前の旅のしおり。今回は田辺の魅力を多くの人に伝えるガイドブックを自作しました

北村早紀(きたむら・さき)

プロジェクトマネージャー

農業や林業といった営みがあるからこそ熊野古道(観光)があることを実感しました。こんどは夫と一緒に訪れたい

越川裕幸(こしかわ・ひろゆき)さん

メーカー研究開発職

「土地を愛すること」とはどういうことか?それが知りたい。今後は居住地の地域活動にも参加したいと思います

古賀聖名子(こが・みなこ)さん

医師

ホスピタリティが素晴らしく、童心に戻って旅が楽しめました。もっとゆっくり長く楽しむ田辺の旅を計画したい

佐々木晃平(ささき・こうへい)さん

会社員

普段はソロでの山歩きが基本ですが、こうしてみんなで歩く、学んで歩くことの楽しさに気づきました

巽絵理(たつみ・えり)さん

作業療法士

熊野古道を歩くことが健康に繋がることを科学的に証明したい。和歌山在住なので田辺低山登山部に入部しました。

鴇田博子(ときた・ひろこ)/写真右

会社員、ときどき鍼灸師

田辺は自然も食も本物志向。とくに川、海、田んぼと水が素晴らしい。メンタル面でのリボーンになりました

俣野剛志(またの・つよし)

システムエンジニア

自分なりのハイク道を熊野古道で見つけたい。泥が苦手だったけど草むしりで克服しました。最高のリフレッシュ

村尾玲子(むらお・れいこ)/写真右

飲食店パート

趣味はトレラン。食べることも好きなので、味光路とてっちゃんの宿でいただいた食事は次回も深堀りしたい

 

吉本正和(よしもと・まさかず)

会社員(田辺市出身)

熊野RP参加を機に地元の魅力を再発見しました。今後は自分もハブとなってつながりの濃い関係人口を増やしたい

文章:熊山 准
写真:横田 裕市
協力:和歌山県田辺市