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登山用一眼カメラを選ぶ基準は表現力と軽さ|写真家が解説
山頂から望む景色やテント泊で眺めた星空、季節の花が咲く様子など、数々の絶景に出会うことができる登山。登山者なら誰もが一度は「この景色を美しい写真に残すことができたら…」と思ったことがあるのでは? でも、たくさんあるメーカーや機種から自分にあったものを選ぶのは難しいですよね。
そんなお悩みを解決するため、今回は人気写真家の川野恭子さんに「登山用一眼カメラの選び方」を教えていただきました。
目次
私が登山中の撮影に「一眼カメラ」を使う理由
山で絶景に出会うと、写真を撮りたい衝動に駆られますよね。そして「目で見ている感動をそのまま写真に残したい」と思いながらシャッターを切るのではないでしょうか?
私が初めて一眼カメラを手にしたのは、デジタル一眼カメラが売り出される少し前のころ。フィルムのカメラを購入したのですが、その理由は「きれいな写真を撮りたい」からでした。駅に貼られているポスターの写真を見て感動し、その足で家電量販店に向かい、カメラを購入しました。時代はフィルムからデジタルに変わりましたが、恐らく、大半の方にとって「きれいな写真を撮りたい」という購入理由は変わらないと思います。
「きれいな写真が撮れる」という意味をもう少し具体化すると、「画質が良い」とか「感動を残せる」が当てはまると思います。これらの意味で言えば、スマートフォンでもきれいな写真を残せるようになりました。
それでも私が一眼カメラを選ぶ理由は、以下に述べるとおりです。
一眼カメラを選ぶ理由 その①:レンズ交換で様々な世界を楽しめる
一眼カメラは、レンズを交換できることが大きな特徴であり、魅力です。
レンズを交換すると見える世界が大きく変わり、肉眼では見るのが難しいマクロの世界、背景がぼけてとろけるような世界、望遠鏡を覗いたような世界など、カメラひとつで様々な世界を楽しむことができます。一眼カメラを買って良かった…と思えたのは、レンズの表現力によるところが大きいです。
特に私は「山の空気感」を大事にしています。私は、「空気感=程よいボケと美しいグラデーション」と定義しているのですが、空気感を感じる写真が撮れるかどうかはレンズの性能に大きく左右されます。現時点ではまだ、スマートフォンではここまでの空気感は出せないと感じています。
だから、一眼カメラで撮影することが好きなのです。
一眼カメラを選ぶ理由 その②:スマートフォンのバッテリーを温存できる
近年、スマートフォンは安全登山に欠かせないツールになりました。YAMAPなどの登山GPS地図アプリを利用すれば現在地の把握ができますし、遭難したときに電波があれば救助要請することもできます。
安全登山のために大事な役割を果たすスマートフォンですが、いざというときにバッテリー残量がなければ意味がありません。なので、出来る限り写真を撮る役割は一眼カメラに任せるようにしています。
ソロで山を歩くとき、縦走で充電が難しいとき、雪山など低温状態でバッテリーが安定しないときこそ、スマートフォンの電源は温存したいですよね。
ちなみに「一眼カメラで撮影した写真は、YAMAPの活動日記の地図上にきちんと表示されるの?」というご不安をお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、ご心配なく。カメラの時計をきちんと設定しておけば、スマホで撮影した写真と同様、活動日記の地図上に写真が表示されます。
自分に合う一眼カメラの選び方
私自身が一眼カメラを使う理由を述べさせてもらいましたが、多くのメーカーや機種が存在し、初めて一眼カメラを持つ方にはどれを選んだら良いのか分からないと思います。
そんなみなさんへ、今回は登山用カメラ選びのポイントをご紹介します。
point① 自分の体力に合わせる
私が山を歩いていて実感するのは、疲労が重なると撮影意欲が削がれるということです。体力に合わない山行や、重い荷物を背負っていると、山を楽しむ余裕が無くなります。
なので私の場合は、解決方法として「荷物を軽量化すること」を選択しました。ウルトラライトとまではいきませんが、大きくて重いギアを重点的に…ザックやテント、もちろん一眼カメラも含めて見直したことで、私の少ない体力でも山の撮影を快適に行うことができるようになりました。
私の基本の撮影機材はこちら。交換レンズは2本持っていくことがほとんど。数日間の山行の場合は日数によってバッテリー類を増やします。
ちなみに、カメラが小型軽量であることのメリットには、「三脚も小型軽量ですむ」という点もあります。つまり、荷物の全体の軽量化につながるのです。
参考までに、ここからは日帰り登山と一泊二日程度のテント泊登山を想定した場合の私の基本装備をご紹介します。
日帰り登山の場合
一泊二日程度のテント泊登山(夏)の場合
point② 何を撮りたいかを考える
私の場合、動画を撮る頻度は少ないですし、景色や花などの動かない被写体がメインです。強いて難しい被写体を上げるとすれば、星空が撮れれば十分。欲を言えば、目で見る以上に美しい写真を簡単に残せたら良いな…と思いますが、みなさんはいかがですか?
山で何を撮りたいのかを洗い出すと、どのようなカメラが必要か見えてきますよね。
最近のカメラは動画を美しく撮れるものや、動く被写体を撮るのが得意なものなど、多機能かつ高機能な機種がありますが、機能が増えるのに比例してカメラが大きくなる傾向にあり、さらにはレンズも大きくなります。
つい、「あれもこれも欲しい…」となりますが、ザックが大きくなると必要以上に物を入れて重くなるように、カメラも機能が多くなれば大きく重くなります。体力に自信がない私は、山で撮影するのに必要な機能…景色・花・星が簡単に美しく撮れたらOKとしています。
初めての一眼カメラ選びでは、画素数を基準にカメラを選ぶ方もいらっしゃるようですが、大きなポスターなどを作るのでないのなら、必要以上に高い画素数は不要です。
point③ 山中の環境下でも気軽に撮ることができる機材を選ぶ
「山で一眼カメラを持ち歩くと壊れないか心配」という声を聞くことがあります。天候急変による雨、高山や雪山などでの低温、土埃や花粉など、カメラにとって厳しい環境であることは間違いありませんし、気を遣いながらでは撮影意欲も低下します。
私はガスに包まれた山の景色も好きですし、雨粒に濡れた草花も大好きです。もちろん、雪山の厳しくて美しい景色も。厳しい環境でも、「防塵・防滴、耐低温」性能が備わっているカメラであれば気兼ねなく撮影することができます。
そして、「手ぶれしない」というのも重要なポイントです。テント泊や縦走登山ではザックが大きくなりがちですが、撮影のたびにザックを下ろし、三脚を取り出すのは体力の消耗に繋がります。
山という厳しい環境では、小さなストレスも避けたくなります。撮影時のストレスをいかに減らせるか?いかに手軽に撮れるか?というのも大事な選択肢なのです。
「OM SYSTEM OM-5」が山に向いている理由
一眼カメラの選び方として、
1.体力に合わせる…小型軽量であること
2.山で何を撮りたいか?を考える…撮りたいものに合わせた機能が備わっていること
3.気軽に撮れる…防塵・防滴、耐低温、手ぶれ補正が強力であること
という、3つの条件をあげましたが、この条件下で私が選んだ一眼カメラは「OM SYSTEM OM-5」でした。OM-5はプライベートの山行でも、仕事の山行でも使っています。YAMAP MAGAZINE の取材でも活躍しているカメラです。
OM-5を選ぶ理由① 小型軽量なボディー
OM-5を選ぶ一番の理由は「小型軽量」だから。
OM-5はカメラ本体が約414g。500mlペットボトル1本よりも軽く、愛用レンズ ED 12-45mm F4.0 PROと合わせても約668gしかありません。
ペットボトルの大きさと並べてみると、ボディもレンズも小さいことがよく分かりますね。こんなに小さくても、表現力豊かな写真が撮れてしまうのですから驚きます。
OM-5を選ぶ理由② 山で欲しい撮影機能が搭載されている
OM SYSTEMのカメラには、カメラひとつで表現力豊かな写真が撮れる「コンピュテーショナル フォトグラフィ」機能が優れているのが特徴です。OM-5には山で撮影するとき「こんな写真が撮れたら嬉しいな…」と思う機能が十分に揃っています。
【カラークリエーター】
30段階の色相調整と8段階の彩度調整が可能です。具体的には「朝夕の空の色を赤くしたい」「緑を鮮やかに残したい」など、彩度やカラーフィルター効果を細かく調整出来るので、印象的な作品に仕上がります。色にこだわる私にとって欠かせない機能のひとつです。
【星空AFとライブコンポジット】
山といえば美しい星空ですが、撮影するにはハードルが高い被写体ですよね。
ですが、OM-5は「星空AF(オートフォーカス)」が搭載されているので簡単に星にピントを合わせられます。また、星の日周運動を軌跡として写せる「ライブコンポジット」が搭載されているので、手軽に美しい星空写真を残せるのが魅力です。
ちなみに上に載せた2点の星空の撮影には、アーティスティックな表現を楽しめるフィルター機能「アートフィルター」を使用しています。カメラひとつで表現力の高い写真が撮れるので、撮影時の気分が上がるのですよね。
【ハイライト&シャドウコントロール】
暗部だけ、明部だけ、中間部だけ…と、領域ごとに明るさを変えられる機能です。白飛びや黒つぶれを抑えながら明るさをコントロール出来るので、山中で出会う明暗差の激しい状況でも、目で見た印象に近い明るさに仕上げることができます。
【ライブND】
川や滝の流れなど、動く被写体をぶらして撮影した写真は憧れますよね。OM-5では、そのような写真も手軽に撮影できます。
ライブNDは、NDフィルター(サングラスのように減光できるフィルター)を装着した時のようなスローシャッター効果を得られる機能です。効果の段数はND2、4、8、16と4段分まで選べ、液晶画面やファインダーで効果を確認しながらの撮影が可能です。
物理的にNDフィルターを持ち運ばずとも、ボタン操作のみでNDフィルターを装着した効果を得られるのは嬉しいですよね。
【手持ちハイレゾショット】
高解像度の写真を撮りたいときに便利な機能です。連続撮影した12枚の画像をもとに約5000万画素の高解像写真を生成します。PCでの加工不要&三脚不要で撮影出来るので重宝しています。
ハイレゾショットによる高解像写真のメリットは、大きなサイズの紙にプリントしても美しく印刷できることがあげられます。他にも、デジタル処理で2倍に拡大して記録できる「デジタルテレコン」を併用すれば、うっかり望遠レンズを置いてきてしまったときも2倍にズームアップしたような画像を得られるので便利です。
OM-5を選ぶ理由③防塵・防滴 & 強力な手ぶれ補正
【 IP53の防塵・防滴性能、-10℃耐低温】
OM-5は、IP53(※1)の防塵・防滴性能が対応されているので、レンズも防塵・防滴搭載のものを選べば、雨が降るたびザックにカメラを仕舞う必要がなく、気兼ねなく雨天時の撮影を楽しめます。
※1 IP規格(International Protection):機械や器具等を対象に、塵や埃、水滴などの侵入保護構造の等級を表すもの
【強力な手ぶれ補正でチャンスを逃さない】
OM-5は、ボディー内5軸手ぶれ補正(※2)搭載、ボディー単体で最大6.5段、対応レンズと組み合わせたシンクロ手ぶれ補正で最大7.5段の補正能力があり、手持ち撮影でも滅多に手ぶれすることはありません。ですので、星空撮影などの長秒露光をする予定が無ければ三脚を持たずに登っています。
※2 5軸手ぶれ補正:カメラが前後左右に振れることによって起きる角度のブレ(2軸)、上下左右に平行移動するブレ(2軸)、カメラが左右に回転することによる回転ブレ(1軸)の計5軸に対応する手ぶれ補正のこと
手ぶれ補正が強力なおかげで、ライブNDやハイレゾショットも三脚不要で撮影できますし、撮りたいと思った瞬間を手持ちで撮影出来るので、本当に助かっています。
OM-5を選ぶ理由④ レンズも小型軽量だから、携帯&交換がしやすい
私がOM SYSTEMを選ぶ最大の理由に、「レンズも小型軽量」ということがあげられます。
小型軽量の一眼カメラは他メーカーでも販売していますが、レンズがOM SYSTEMより大きい傾向にあります。せっかくボディが小さくても、レンズが大きくては荷物が重くなりますし、交換レンズを持つ気力も失せてしまいます。
また、レンズが小さいと便利なことは、何より「レンズ交換が容易になる」ことです。ドリンクホルダーに収納可能なほどレンズが小さいので、ショルダーベルトに装着したドリンクホルダーにレンズを入れていても素早く取り出せます。
ドリンクホルダーが落下しないよう、しっかり固定することが重要ですが、この方法を思いついてからレンズ交換がとても楽になりました。レンズもこんなに小さくてコンパクト。それでいて防塵・防滴(※3)なのですから、まさしく山のために存在するカメラシステムだと思っています。
※3 防塵・防滴仕様のレンズのみ。
何度登った山でも新鮮に向き合えるのが、一眼カメラの魅力
一眼カメラを持っていて良かったな…と思うこと、それは、何度登った山でも新鮮に向き合えることです。
カメラを持つと、いつもは急ぎ足で過ぎていた登山道を観察するようになるので視点が広がります。レンズを交換すると、肉眼では見られなかった世界を見ることができます。そして、景色や感動、山の空気感を持ち帰ることができます。
写真が美しく撮れたら本当に嬉しいですし、写真として残しておくと、数年先、数十年先、写真を見返したとき、当時の感動が色鮮やかに蘇ります。自分が撮った山の写真は間違いなく、温度や湿度、香りなど、五感で感じたものが写っているはずです。それらを写したいから私は一眼カメラを持って山に登っています。
カメラが軽くなれば荷物が軽くなり、山歩きや撮影が楽しくなります。小さいカメラでも山を美しく撮りたい、スマホからステップアップして一眼カメラを使ってみたい方はぜひ、OM SYSTEM OM-5を検討してみてはいかがでしょうか。
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川野 恭子|写真家
「日常と山」を並行して捉え、自身に潜む遺伝的記憶の可視化を試みた作品制作を行う。ここ数年は山小屋勤務を経験しながら山の歴史・文化に造詣を深めることに努めている。メディアへの写真提供、撮影、執筆、講師、テレビ出演(NHKにっぽん百名山ほか)など、多岐に渡り活動。
WEB : https://kyokokawano.com
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執筆・写真:川野恭子
協力:OMデジタルソリューションズ
写真家
川野 恭子
「日常と山」を並行して捉え、自身に潜む遺伝的記憶の可視化を試みた作品制作を行う。ここ数年は山小屋勤務を経験しながら山の歴史・文化に造詣を深めることに努めている。メディアへの写真提供、撮影、執筆、講師、テレビ出演(NHKにっぽん百名山ほか)など、多岐に渡り活動。京都芸術大学通信教育部美術科写真コース非常勤講師。著書に、写真集『山を探す』(リブロアルテ)、『はじめてのデジタル一眼撮り方超入門』(成美堂出版)、『yamadori』(私家版)、織田紗織氏との共著『山の辞典』(雷鳥社)ほか多数。
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