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幕山で梅のトンネルを楽しむ日帰り山歩コース|神奈川・湯河原の桃源郷【冬〜春のおすすめ低山】
万葉集にも登場する、歴史ある温泉地の湯河原。この地を代表する幕山(626m)は、例年2月上旬から山麓の梅林が色づきはじめ、3月上旬までに見ごろを迎えます。JR東海道線を利用すれば、東京駅から湯河原駅まで最短1時間半で、下山後に地元グルメやお酒を楽しんでも十分に日帰り圏内。登山ガイドの鷲尾太輔さんが、山歩きの初心者からベテランまでゆったり楽しめる休日山歩を提案してくれました。
目次
幕山のおすすめポイント
①梅林の中へと続く登山道。2月〜3月の梅の見頃は桃源郷のよう
②山頂からながめる相模湾や、相模灘へと突き出した真鶴半島の絶景
③公共交通機関でアクセスしやすく、地物を肴に飲んで帰れるお店も充実
観梅とあわせて幕山への山歩をおすすめしたい一番の理由は、梅林の中へと登山道が続いていることです。澄んだ空気と一緒に梅の甘い香りを吸い込みながら歩けば、足取りも自然と軽くなります。
幕山へ向かう道のりや山頂からは、海の眺望も見事。相模灘へと突き出した真鶴半島はもちろん、空気が澄んでいる冬は大島をはじめ伊豆諸島までも望めます。まさに自分の足で歩いた人だけのご褒美ともいえる絶景。
お酒好きの人は、湯河原駅のそばで地物が味わえる居酒屋も多くあるので、公共交通機関でアクセスし、登山後に飲んで帰るという、充実した山歩旅が過ごせます。
幕山の中腹にある幕岩は、首都圏から近いロッククライミングの名所。上級者向けのイメージが抱かれがちですが、実は初心者でも気軽に楽しめる山です。ここからはおすすめの2コースを紹介します。
登山口は約4,000本の紅白梅が広がる幕山公園
相模灘へ注ぐ清流、新崎川(にいざきがわ)に沿って広がるのが、幕山の登山口に位置する「幕山公園」。春の桜、初夏のアジサイ、初秋のキンモクセイ、冬のサザンカなど、年間を通してさまざまな花を楽しめる自然公園です。
幕山公園がもっとも美しく彩られるのが、例年2月上旬〜3月上旬。幕山(626m)山麓の斜面に植えられた約4,000本の紅白梅が咲き誇る様子は、さながら桃源郷のよう。湯河原梅林とも呼ばれ、梅のじゅうたんとも形容される絶景です。
観梅を楽しむだけでも十分に魅力的なスポットですが、背後にそびえる幕山への山歩もおすすめ。幕山梅林をより堪能できるだけでなく、さらなる絶景が待っています。
おすすめコース①|幕山往復コース【2時間半】
ポイント
①梅のじゅうたんとなった幕山公園を見下ろせ、桃源郷気分
②真鶴半島から伊豆諸島まで見渡せる眺望のよさ
③ランチタイムにゆったりできる広々とした山頂
コース情報
コースタイム:2時間30分
歩行距離:2.8km
累計標高差(上り):436m
累計標高差(下り):436m
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幕山公園から幕山を往復するコースは、体力や天候次第で引き返せるので、初心者でも安心。梅のトンネルの中を登り進めていくと、梅林を上から見下ろせ、ここまででも登った甲斐があります。
中腹からはジグザグのやや急な登りに変わりますが、途中には立派な東屋が設置されています。ここで休憩して、水分補給やお菓子をつまんでひと息つくのもおすすめ。
途中、展望が開けた場所からは湯河原の街と海を一望。相模灘の沖にはちょこんと初島が、その奥には大島が浮かんでいます。空気が乾燥していてクリアな視界が得られる冬ならではの絶景です。
広々とした草原が広がる幕山山頂は、休憩にぴったり。ベンチやテーブルはないので、レジャーシートなどを持参するのがおすすめ。お弁当を食べたり、太平洋の眺望を楽しんだりしたら、来た道を下りましょう。
なお、本コースのトイレは山麓の幕山公園のみ。湯河原駅で寄り忘れたら、山歩スタート前後に立ち寄って利用しましょう。裏手に飲料の自動販売機もあります。
おすすめコース②|幕山〜南郷山 縦走コース【3時間半】
ポイント
①源頼朝の伝説が残る池・自鑑水で源平合戦に思いを馳せる
②冒険ムード満点!ハコネザサのトンネルを歩く
③真鶴半島・伊豆諸島・湘南海岸まで!山頂からの海の絶景
コース情報
コースタイム:3時間30分
歩行距離:6.4km
累計標高差(上り):580m
累計標高差(下り):661m
モデルコースを詳しく見る
普段から登っていて、もう少し歩きごたえのあるコースがいい人には、東に連なる南郷山(610m)へ足を延ばして、幕山公園バス停からふたつ手前の鍛冶屋バス停へ下る縦走コースがおすすめ。幕山からひと下りでこの標識に出たら、しばらくは森の中を進みます。
南郷山へ向かう道のりの見どころが自鑑(じがん)水(自害水)という小さな池です。伊豆国に流罪となっていた源頼朝が挙兵するも、石橋山の戦いで平家に破れて敗走。この池の水面に映った自身のやつれた姿を見て、いったんは自害を決意しますが、髪の乱れを正して勇気を奮い起こしたとされる場所です。
もうひとつの見どころが、ハコネザサの群落です。その名の通り箱根周辺の山々に多い植物ですが、このようにトンネル状になっている中を進んでいくと、何やら冒険心を掻き立てられます。
南郷山の山頂からも、海の眺望が見事。真鶴半島・伊豆諸島はもちろん、三浦半島や湘南海岸までを一望できます。
湯河原梅林「梅の宴」|舌でも早春の幕山を満喫
幕山公園では、2024年2月3日(土)〜3月10日(日)に「湯河原梅林『梅の宴』」というイベントも開催中。甘酸っぱさが歩いた後に嬉しい梅ソフトクリームや、身体を温めてくれる甘酒をはじめ、地産品や土産物の出店も多数。
入場料は200円とお手頃で、湯河原町内の宿泊客は無料になります。期間中は湯河原駅からの臨時直通バス(おとな片道290円)や、土日には無料送迎バスも運行されており、アクセスも便利です。
幕山の余韻にひたって寄りたい湯河原の名所
登山後の絶品グルメも湯河原の魅力
山の上から海を見た後に、新鮮な海の幸を味わいたくなるのが登山者の人情。湯河原駅から東京方面にひと駅戻った真鶴駅から徒歩15分ほどの福浦漁協直営「みなと食堂」のランチは特に人気で、YAMAPユーザーの活動日記にも登場します。
湯河原駅周辺にも海鮮の名店が盛りだくさん。ミシュランガイドで星を取った「割烹 しらこ」(湯河原駅徒歩約3分)や、湯河原温泉街にある「湯河原 やまき」(JR湯河原駅からバス8分、見付町バス停から徒歩約2分)などが知られています。
他にも「居酒屋にのみや」「串焼厨房 山海」など、大衆居酒屋も多数。梅の開花時期や土日祝は満席の場合があるので、前日までに予約していくのがおすすめです。
車利用の場合には、湯河原から東京方面への帰路、真鶴の先にある「いしだ商店」(小田原市江之浦)は、名物の干物2種類を選んで自分でその場で焼いて食べられる定食があり、クライマーにも人気。
海鮮以外にも本格フレンチやイタリアンを味わえるレストラン、ラーメンの名店、美味しいパン屋なども多く、湯河原はまさにグルメタウン。訪れた人の嗜好にぴったりの地元グルメがきっと見つかります。
日帰り温泉でポカポカ
温泉地として知られる湯河原には、日帰り入浴を受け付けているホテル・旅館も多数。時間がなければ、湯河原駅前にある手湯で、効能豊かな湯に触れられます。
みやかみの湯
2019年オープンの新しい日帰り温泉施設。湯河原初の炭酸温泉「みやかみラムネ湯」は効能抜群です。
・住所:神奈川県足柄下郡湯河原町宮上42-15
・詳細はこちら:公式サイトを見る
フォレストリゾート 湯河原温泉 ホテル城山/湯河原ラドンセンター
湯河原駅から徒歩2分の好立地にあるホテル城山の日帰り入浴施設。天然温泉とラドン温泉を楽しむことができます。
・住所:神奈川県足柄下郡湯河原町城堀207
・詳細はこちら:公式サイトを見る
大滝ホテル
湯河原温泉の名勝「不動滝」に隣接し、地下350mから湧く自家源泉をかけ流しで満喫できる露天風呂が魅力です。
・住所:神奈川県足柄下郡湯河原町宮上750-1
・定休日:日帰り入浴は平日を中心に受付
・詳細はこちら:公式サイトを見る
こごめの湯
湯河原町営の日帰り温泉施設。湯河原の自然を一望できる大浴場をはじめ、休憩室・喫茶室・マッサージ室もあります。
・住所:神奈川県足柄下郡湯河原町宮上562-6
・定休日:月曜日
・詳細はこちら:公式サイトを見る
湯河原惣湯Books and Retreat
その名の通り、数々の文人墨客に愛された湯河原温泉ならではの、ゆっくりと本のページをめくりながら過ごせる温泉施設です。
・住所:神奈川県足柄下郡湯河原町宮上566
・定休日:毎月第2火曜日
・詳細はこちら:公式サイトを見る
ニューウェルシティ湯河原 いずみの湯
湯河原エリア屈指の大露天風呂「いずみの湯」からは、竹・岩・木・緑など「和」を感じさせる景観が広がっています。
・住所:静岡県熱海市泉107
・詳細はこちら:公式サイトを見る
お土産は湯河原みかん
年間を通して温暖な湯河原の名産品が「湯河原みかん」。みかん狩りは例年10月〜12月のみ体験可能で観梅の時期には合いませんが、年間を通して旬の品種を栽培しています。
湯河原駅から徒歩5分ほどの柑橘問屋 石澤商店ではお土産用から贈答用まで、さまざまなみかんを販売。町内各所に、無人直売所も点在しています。
幕山へのアクセス
公共交通機関利用の場合
・東京駅から湯河原駅までJR東海道本線で約80分〜120分
・湯河原駅から幕山公園まで箱根登山バスで約18分
幕山公園までのバス時刻表を確認する
マイカー利用の場合
・真鶴道路・福浦インターチェンジから幕山公園駐車場まで約10分
トップ画像=まじこさんの活動日記
執筆協力=鷲尾 太輔(登山ガイド)
山岳ライター・登山ガイド
鷲尾 太輔
登山の総合プロダクション・Allein Adler代表。山岳ライターとして、様々なメディアでルートガイドやギアレビューから山登り初心者向けのノウハウ記事まで様々なトピックを発信中。登山ガイドとしては、読図・応急手当・ロープワークなどの「安全登山」から、写真撮影・山岳信仰・アウトドアクッキングなど「登山+αの楽しみ」まで、幅広いテーマの講習会を開催しています。とはいえ登山以外では根っからのインドア派…普段は音楽・アニメ・映画鑑賞や、読書・料理・ギター演奏などに没頭しています。
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