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足のトラブルよ、さようなら|正しい「山の歩き方」を徹底解説
「下山中に膝が痛くなって困った」、「登山靴を履くと必ず靴擦れしてしまう」など、登山での足の悩みを抱えている人は多いはず。そこで今回、登山ガイドさんなど山のプロに膝痛や靴ずれを防ぐ正しい歩き方を教えてもらいました。さらに、YAMAPユーザーさんの登山靴の悩みについての質問にも回答。最後まで読んでいただけたら、あなたの足のトラブルを解決するヒントがきっと見つかるはずです!
目次
まずは基本をマスター|「平地歩き」と「山歩き」の違い
みなさんは、山を歩くとき、平地で歩くのと同じ感覚でいませんか? じつは平地と山を歩くときでは、歩き方を変える必要があるんです。まずは、平地歩きと山歩きでは、どんな違いがあるのかを見ていきましょう。
<平地歩きの特徴>
アップダウンのない平地を歩くときは、前足をかかとから着地し、つま先へと体重を移動。そして、後ろ足を前に持ってくるためにつま先で地面を軽く蹴ります。このような歩き方は、つま先やかかとなど“点”の動作が多く、大股でスピーディに歩くことができます。
<山歩きの特徴>
山の歩き方は、平地とは大きく変わります。ポイントは、“点”ではなく“面”で着地すること。前足は、登山靴のつま先からかかとまでの“面”で、スタンプを押すようにそっと着地します。さらに前足にじわっと体重を乗せていくのも重要です。前足に一気に体重をかけてしまうと“面”で着地しても、浮石などでの転倒リスクが高くなってしまいます。
ゆっくり体重を移動することで、不安定な場所であっても足を適切な位置に戻すことができるので、バランスを崩しにくくなります。忍者の歩き方をイメージすると分かりやすいかもしれません。
また、歩幅は靴一歩くらいの小股が基本。急斜面なら、靴半歩でもよいでしょう。そうすることで、軸足に体重が残り、滑りにくくなります。ただし、この歩き方だと時間がかかってしまうので、平坦なところはスピードを優先した大股で、斜面のときは小股で…というように、メリハリをつけるとよいでしょう。
登山靴の選び方:山のお悩み①
Q:岩稜帯歩きのために購入した登山靴。奥穂高岳に行ったときはラクだったんですけど、尾瀬や上高地のようななだらかな場所を歩くと、疲れる気がします。それぞれの場所で、どんな靴が良いのか教えてください。
A:岩稜歩きなら足首が固定されるハイカット/ミッドカットシューズ、比較的平坦な場所のハイキングならローカットシューズがおすすめです。
登山靴の種類
登山靴は、足首周りのホールドの有無によって、「ハイカット/ミッドカット」、「ローカット」の2タイプに大別できます。
<ハイカット/ミッドカットの特徴>
ハイカット/ミッドカットの登山靴は、堅牢なつくりで足首が固定されているのでバランスを崩しにくいのが特徴。適している登山スタイルは、足場が不安定な岩稜歩きや、テント泊などで重い荷物を背負った山行など。ただし、重量のあるミッドカット/ハイカットのシューズの場合は、平地などで歩きにくく感じることもあります。初心者は軽量なミッドカットを選ぶとよいでしょう。
<ローカットの特徴>
ローカットの登山靴は軽くて足首まわりがフリーなので、軽快に歩くことができます。しかし、山の歩き方に慣れていなかったり、足首の筋力が弱いとバランスを崩してしまい、転倒や怪我のリスクにつながります。比較的平坦な場所が多い、上高地や尾瀬などのハイキングに向いているといえるでしょう。
【登山靴の特徴】
ハイカット/ミッドカット→岩稜帯や重い荷物を持った山行
・足首のグラつきを抑えてくれるのでバランスを保ちやすい
・岩稜帯や荷物が重い登山に向く
・転倒等のリスクが少ないので初心者におすすめ
ローカット→平坦な場所な荷物の軽い山行
・軽くて足首がフリーなので、速く歩ける
・平坦な場所や荷物が軽い登山に向く
・足首の筋力が必要なので経験者におすすめ
最近は、岩稜帯のあるアルプスなどはハイカット/ミッドカット、日帰り低山ならローカットと、山行スタイルで登山靴を使い分ける人も増えてきました。どちらのタイプも一長一短があるので、適した靴をチョイスした方が快適に登山を楽しめます。さらに、使い分けることで登山靴自体の寿命を長持ちさせることもできます。
山の正しい登り方と下り方
平地と傾斜のある場所での足さばきの違いがわかったところで、今度は山を歩くときの姿勢や体の使い方についてお伝えします。アップダウンのある山道を歩くには、登りと下りとでそれぞれにちょっとしたコツがあり、これを押さえておくと格段に疲れにくく、何より安全に山歩きを楽しむことができるのです。
登りは「一直線」がキーワード
<正しい登り方>
登りのときは、頭、肩、腰が一直線になるように意識し、2~3歩先を見て歩くと膝や腰の負担が少なくなります。さらに目線を上げると上体が起きて呼吸もしやすくなり、体のブレも少なくなるので、余計な筋力を使わなくてすみます。
<間違った登り方>
逆にNGなのは、前屈みになり、上体がブレてしまう歩き方。疲れてくるとどうしても上体が折れてしまいがちですが、そうなるとお尻が下がり、足を上げる度に太腿の筋肉に負担をかけてしまいます。その状態で登り続け、膝痛の原因となってしまうケースが多いので注意しましょう。
下りは「前傾姿勢」で小さな一歩を心がけよう
<正しい下り方>
上体を軽く前傾にして、小股でゆっくりと下るのがポイントです。前足に重心移動する(軸足を移す)ときは、足の裏全体でスタンプを押すようにゆっくりと体重をのせていくと、踏ん張り疲れを軽減できます。
<間違った下り方>
下りを怖いと感じる人は要注意。気づかぬうちに腰が引けてしまい、ザックの重さもあるので後ろ重心になりがちです。さらに歩幅が大きくなると、それだけ踏ん張らないといけなくなり、太腿の余計な筋力を使ってしまいます。山、特に下りで疲れやすい、怪我をしやすい…といった傾向がある人は、重心や歩幅に気をつけましょう。
段差のある場所の正しい下り方
坂のような一つづきの傾斜のある場所ではなく、階段など「段差のある場所」では、どうしたらいいのでしょう? ここでも、特に「下り方」の観点で押さえておきたいポイントがあるので、ご紹介します。
<段差のある場所の正しい下り方>
まず、地面に対して横向きになり、膝を捻らずに足を運びましょう。1回1回体を横に向けるのは多少面倒に感じるかもしれませんが、ぜひ試してみてください。きっとすごくラクに足を出せるようになるでしょう。もっと言うと、このような下り方は後ろ足に体重が残るので、浮石に乗ってもすぐに足を戻せるという利点もあります。
もう一つのポイントは、着地時に音がしないくらいのイメージでそおっと下るということ。体重移動もゆっくりと。なるべく後ろ足重心で体重移動しましょう。このような歩き方を心がけることで、膝痛にもなりにくくなります。
なお、筋力がない人へのワンポイントアドバイスとして。体を横向きにした際には、さらに「手を膝に当てて」下ってみてください。踏ん張る力が軽減されるので、疲れにくくなりますよ。
<段差のある場所の間違った下り方>
段差のある下りで、前足に体重を乗せてドスンドスンと歩いてしまう登山者が目立ちます。こうした歩き方では膝に負担がかかってしまいます。また、カーブのある段差では膝をひねってしまう人が多いですが、これもNG。膝は真っ直ぐにすることを心がけてください。
安定感抜群でストレスフリーで歩き続けられる|KEENの最新登山靴「ザイオニック」
快適な履き心地を追求するブランドとして、数多くのファンを持つKEEN(キーン)。そんなKEENが、今シーズン自信を持ってリリースしたのが、FAST & LIGHTをコンセプトにしたトレイルシューズ「ZIONIC(ザイオニック)」です。このシューズの大きな特徴は、大きく分けて3つあります。
1.自然な推進力と抜群の安定性
ひとつめは、つま先が反ってかかとがフラットな形状に設計されていること。前足部分が反り上がっているので、重心を移すだけで自然に足が前に出るのです。このように靴自体が推進力を高めてくれるため、筋力をセーブすることができ、膝への負担を軽減してくれます。しかも、かかとが比較的フラットなので着地も非常に安定しています。さらにEVAのミッドソールは、中足部からかかとまでのアッパー側面を包み込む壁のように設計されているので、歩行時の左右へのブレも防いでくれます。
2.高いホールド感と軽快な足さばき
KEENのシューズは、幅広の木型を使用した、つま先部分に余裕を持たせた設計が大きな特徴。シューズ内で足指を動かしやすくなり、踏ん張りを効かせることが可能となります。ザイオニックは、そんなKEENの伝統的なスタイルを踏襲しつつも、より流線的なデザインにすることで足に密着するようなフィット感を生み出し、素早い動きにも対応するサポート性を向上。スピードハイクのような軽快な足の動きにも対応できるつくりになっています。
3.驚くほどのグリップ力の高さ
アウトソールのラグパターンは、楕円形の突起を多数配置。あまり見たことのないパターンですが、このような形状にすることで、地面に吸い付くような高いグリップ力を実現できました。試し履きをすると実感できるので、ぜひショップに行ってザイオニックに足を入れてみてください。これまでにないほどのグリップ力に驚くはずです!
今回ご紹介した、ローカットの防水タイプ『ザイオニック ウォータープルーフ(ZIONIC WP)』は、メンズが3色、ウィメンズが2色のカラー展開。ZIONICシリーズはこの他にも、ローカットの非防水タイプ『ザイオニック スピード(ZIONIC SPEED)』や、ミッドカットの防水タイプ『ザイオニック ミッド ウォータープルーフ(ZIONIC MID WP)』が登場しています。カラーや他商品の詳細はぜひ下記ボタンよりご覧ください。
登山靴のメンテナンス:山のお悩み②
Q:登山靴は下山後に水洗いしてもいいのでしょうか? 正しいお手入れ方法を教えてください。
A:登山靴は、下山後のメンテナンスをすることで耐用年数をのばすことができます。家に帰ってきたら、その日のうちに必ずお手入れをしましょう。お手入れの手順は以下になります。
登山靴の正しいお手入れ方法
①靴紐を外し、フットベッド(中敷き)を外に出す
②フットベッド(中敷き)を洗う
③アッパーの泥や汚れを濡れタオルなどで拭き取る
④ソールの間に詰まった小石や泥を取り除く
⑤陰干しなどでしっかりと乾かす
汚れがひどい場合は、中性洗剤を使って外側とフットベッド(中敷き)だけを洗いましょう。防水メンブレンが使われている登山靴の内側は、内部のメンブレンが劣化してしまうことがありますので洗ってはいけません。(登山靴によっては丸洗いOKのものもありますので、詳しくは購入した商品の取り扱い説明書を参照してください)。
そして、大切なのは、しっかりと乾燥させること。登山靴は、湿気が残っていると素材が加水分解を起こしてソールが剥がれやすくなります。また、カビやバクテリアが繁殖してイヤな臭いがしてくることも。陰干しをしたり新聞紙を何度か詰め替えたりして、完全に乾燥させることが重要です。
アーカイブ動画、公開中!
この記事は2023年8月にYouTubeで公開されたYAMAPの動画配信イベント「山の歩き方相談室 presented by KEEN|登山靴や歩き方の悩みを解決しよう!」の内容を元に作成されました。YAMAP公式YouTubeチャンネルでは、そのアーカイブ動画をフル視聴できます。
また、動画説明欄の目次から、今回ご紹介した山の歩き方や登山靴のお手入れ方法など、気になるパートをご覧いただくことも可能です。
ぜひご覧ください!
※本編は7:00より始まります。
※YouTube概要欄にある目次のチャプターをクリックいただくと、山の歩き方や、お悩み解決Q&A、KEENの最新シューズ紹介などをピンポイントでご覧いただくことができます。
<教えてくれた人>
岩田京子さん
日本山岳ガイド協会認定 登山ガイド。
国内では山のガイド、海外ではツアー登山やトレッキングの添乗をしている。プライベートでは8000m峰のマナスル、エベレストなど4座に登頂。以前は、足首、膝、腰の痛みに悩まされていたが、自分で歩き方を見直すことで改善できた。
山下舞弓さん
雑誌、CM、TVなどで活動するモデル。2012年に八ヶ岳の赤岳を登ったことをきっかけに登山を開始。2019年には長野県に移住し、年間に約50山登っている。自身のYouTubeチャンネル「オトナ女子の山登り」は、登録者数6万人を越える。8月には山と溪谷社より初めての著書『わたしの山登りアイデア帳』を刊行。
山﨑皓平さん
アウトドア・フットウェアブランド「KEEN」のプロダクトマネージャー。大学卒業後からシューズ業界に従事。2016年にKEEN JAPAN入社し、現在はプロダクト開発を担当しているシューズ作りのプロフェッショナル。
原稿:大関直樹
イラスト:大西土夢
協力:キーン・ジャパン合同会社
フリーライター
大関直樹
小中学校はボーイスカウト、高校はワンダーフォゲル部で自然に親しむ。好きなものは、タバコとお酒と競輪。最近は、山頂で一服すると周りの目が厳しいので肩身が狭いのが悩み。「みなさんが山で嫌な思いをしないように風下でこっそり吸いますので、許してください」
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