投稿日 2022.11.01 更新日 2023.09.26Sponsored

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「フィールドで長く使えるもの」を目指して、アークテリクスがGORE-TEXと進む先

1998年に初めて防水透湿素材を使用したハードシェルを発表して以来、固い絆でむずばれてきたArc'teryx(アークテリクス)とGORE-TEX。近年、アウトドアメーカー各社から自社素材を使用したウェアが発表される中、アークテリクスはなぜゴア社のファブリクスにこだわるのか。その理由と、両者の深い関係性に迫りました。

目次

「GORE-TEXキャンペーン2022」を実施中

アークテリクスでは、11月1日から「GORE-TEXキャンペーン」を開催中。期間中対象のゴアテックス製アパレル製品をお買上で、専用の洗濯洗剤をプレゼント。さらに購入証明を添付して応募すれば、アークテリクス契約ガイドと行くスペシャルトリップが当たります。

長い時間を自然の中で過ごすためのアウトドアウェアにとって、防水透湿性は、もっとも重要な機能のひとつ。「GORE-TEX」は、近代アウトドアウェアの常識を大きく塗り替えた革新的素材として、50年以上の歴史のなかで進化を続けながら、多くのアウトドアブランドに採用されてきた、防水透湿素材のパイオニアです。

近年では、各ブランドがこぞってオリジナルの防水透湿素材を開発していますが、アークテリクスは、初めて防水透湿素材を使用したハードシェルを発表した1998年から現在まで、一貫してGORE-TEXファブリクス以外の防水透湿素材を採用していません。デザインや素材、パーツに至るまで、多くのオリジナルを生み出してきたアークテリクスが、なぜ防水透湿素材だけGORE-TEXにこだわるのか、ゴア社とアークテリクス間にどんな関係性があるのか、アウトドアアパレルの近代史をけん引してきた、2つのブランドの背景にあるストーリーを読み解いていきましょう。

GORE-TEXの機能を担う「メンブレン」の存在

「GORE-TEX」は、アメリカの素材メーカー、ゴア社が開発した防水透湿素材。フライパンなどに使われる「テフロン」と同じ素材を、無数の微細な孔(あな)があいた薄い膜状にしたものが、「GORE-TEX メンブレン」と呼ばれる、防水防湿機能の要です。

ePTFEメンブレンは、シェルジャケットなど多くのゴア製品に採用されているゴアソリューションの中核となる素材。この高い防水防湿機能が、活動中の身体の快適さを支えている

メンブレンにある孔の大きさは、水の分子よりも小さく、水蒸気よりは大きいため、外からの水の侵入を防ぎながら、内側にこもった水蒸気は外に排出することが可能。これによって、雨のなか着続けて汗をかいても、衣類の内部がムレず、ドライな環境を保つことができます。

ウェアの使用目的に応じて使い分けられる「ゴアテックス ファブリクス」

このメンブレンに生地を貼り合わせたものが、「GORE-TEXファブリクス」と呼ばれる状態。メンブレンに1枚の生地を貼り合わせた2層構造と、メンブレンを表と裏から生地で挟んだ3層構造のものがあり、アークテリクスが使うのは後者の3レイヤーと呼ばれるもの。張り合わせる素材の厚さや特性などの組み合わせによって、個性の違う防水透湿ファブリックを作ることができます。

「GORE-TEX」と「GORE-TEX以外」の決定的な違い

GORE-TEXは防水透湿素材の代名詞的存在ですが、GORE-TEX以外にも、防水透湿素材は多数存在します。仕組みや機能面にはそれぞれの個性がありますが、メンブレンに生地を貼り合わせるという、基本的な生地構造はどれも同じ。ただ、GORE-TEXと他社の防水透湿素材には、素材供給の方法に決定的な違いがあります。

GORE-TEX以外の防水透湿素材は、通常素材メーカーから供給されたメンブレンに、各ブランドが生地を貼り合わせて、ファブリックに仕立てます。

一方で、ゴア社は「GORE-TEXメンブレン」を提供するのではなく、メンブレンに生地を貼り合わせるまでを自社で行ない、「GORE-TEXファブリクス」の状態にしてからブランドに供給します。

その理由は、メンブレンに生地を貼り合わせる工程が、技術的に非常に難しいということこと。作業を行なう工場の技術や管理体制の違いによって、製品精度や剥離強度にバラつきが生じる可能性があり、それを避けるために、メンブレンに生地をラミネートするまでを、ゴア社が一貫して行なうのです。

さらに、ゴア社は素材メーカーでありながら、GORE-TEXファブリクスを使って各ブランドが作る「製品」に対して、保証を付ける制度を設けています。製品に付けられている大きなタグは、その製品に対してゴア社が発行する「保証書」なのです。

それと引き換えに、ゴア社は製品に対して、徹底した管理を行ないます。すべての製品サンプルは企画段階でゴア社に送られ、厳格な製品テストをクリアしたものだけが、世の中に出ることを許されます。

オリジナルの防水透湿素材を開発するブランドが多いのは、この負担を軽減する目的が大きいのでしょう。もちろんそれはアークテリクスにとっても小さな負担ではありません。しかし、徹底した姿勢はゴア社の素材や技術に対する自信の証であり、そのクオリティに絶対的な信頼を寄せているから、アークテリクスはGORE-TEXを使うことにこだわるのです。

創造と革新を引き出すアークテリクスの環境

製品が世に出るまでには、実にさまざまな段階で、何度もテストが繰り返されます。ゴア社が品質保証のために行なうものだけでなく、アークテリクスもGORE-TEXファブリクスに対して、独自の基準でテストを行ない、その機能を徹底的に検証します。

さらに労力をかけて行なわれるのがフィールドテスト。新しい機能やアイディアが浮かぶと、すぐにそれを盛り込んだサンプルが作られ、アウトドアフィールドでの着用テストで、デザインやパーツを含めた機能性、操作性、快適性をテストします。

テスターは、アークテリクスが契約するアスリートや、デザイナーやプランナーといった本社デザインセンターで働くスタッフたち。彼らは全員が自社製品を必要とするアクティビティの愛好者であり、すべてのデザイナーは、ただイメージを紙に描くだけでなく、自らが生地を裁ちミシンを踏んで、頭の中にあるものを形にするスキルを備えています。

デザインセンターには、GORE-TEXファブリクスを含むあらゆる素材がストックされ、品質検査を行なう施設や、金型やパーツが作れる工房までも備えられています。すぐ近くでコミュニケーションがとれ、希望やニュアンスを言葉で伝えられる環境だからこそ、左右でデザインや素材を変えたサンプルも、ミリ単位でパターンを変えたテストも、失敗を前提とした大胆なトライアルも可能。自社内でここまでの試作環境を備えるのは、アークテリクスの大きなアドバンテージといえるでしょう。

一点の改良に、時には10年の歳月をかけることも。アークテリクスのテスト環境下では、日々妥協のない改良が重ねられている

しかも、本社のあるノースバンクーバーは、車を小一時間走らせたところに、手つかずの厳しい自然環境が広がる場所。アイディアをすぐに形にし、フィールドに持ち出して試し、すぐに修正するという作業を、何の負担も制限もなく繰り返すことができます。もっと改善するところはないか、どうしたらよりよいものになるか、アークテリクスの探求心や向上心を遮るものは、ここには何もありません。

アークテリクスとGORE-TEXが築いたパートナーシップの歴史

アークテリクスの歴史は、クライミングハーネスの製造からスタートしました。ノースバンクーバーのクライミングエリアにある小さなガレージで、2人のクライマーが手作りしたハーネスが次第に話題を呼び、前身となる「ROCK SOLID」社として、製造を本格化させたのが始まりです。

アークテリクスの名を世界中のクライマーに知らせるきっかけとなったのは、1992年に発売された「ベイパーハーネス」。イケアで買ってきたゴミ箱を加工して、デザイナー自ら作った金型で、それを利用して成型した3Dフォームを、世界で初めてクッション材に採用したのです。それまで誰も考えつかなかったこのアイディアは、従来のハーネスの弱点を見事に克服し、多くのブランドにも採用される、ハーネスのスタンダードスタイルとなりました。

誕生から6年がたった1995年、アークテリクスはそれまでのハーネスやバックパックに続き、アパレル製品の開発を始めます。

本社があるノースバンクーバーは、世界的にも非常に雨の多い地域。製品テストや新しいデザインのインスピレーションを得るために、ことあるごとにフィールドに出かけるスタッフたちは、多くの確率で雨に降られます。

そのなかで彼らが考えたのは、既存の製品に感じていた不満を自分たちで解消して、今までにないオリジナルのハードシェルを作ること。その素材として目を付けたのが、GORE-TEXです。

彼らは、自分たちの理想のシェルづくりに必要な素材の開発を、ゴア社に持ちかけます。すでにクライマーからの認知度は高かったものの、アパレル生産の実績はまったくない当時のアークテリクスは、ゴア社にとって、さほど重要な取引先ではなかったはずです。しかし、ゴア社はその無謀とも思える要望を受け入れ、製品のライセンスを与えて素材の共同開発を始めます。ベイパーハーネスで見せた、世の中にないものを創り出す情熱や、それを自分たちの力で形にする技術力、その結果生まれた製品から受けた衝撃に、ブランドの将来性を見出したからなのでしょう。

開発に際して、アークテリクスが一番に求めたのは耐久性。必要な防水透湿の数値をクリアしつつ、雪や氷、雨や風などの厳しい自然環境のなかでも、安定して長く機能が発揮され、丈夫で長く使えるものの開発をリクエストしました。


それと並行して、アークテリクスは自らの判断で、シームテープの幅を細くすることに取り組みます。

シームテープは、防水シェルにとってなくてはならない重要な働きをするものですが、テープ自体に透湿性がないため、貼る面積が広いほど、ジャケット自体の透湿性を低下させてしまいます。しかも、テープの厚みで風合いが硬くなり、動きを妨げると同時に重量も増やします。

これを解消するために、当時ゴア社が基準としていた23㎜幅のシームテープのスリム化を独自に進め、発売時には17㎜にまで細くすることに成功。これは、長年の経験の上に成り立っていた常識を覆す革新的な一歩として、ゴア社に大きなインパクトを与えることになります。

複雑な縫い目に合わせて正確に細幅のシームテープを貼る技術は、当時も今も決して簡単なことではありません。その後も次第に精度を上げて、現在アークテリクスは、わずか8㎜幅のシームテープの使用を製品の基準にすることを実現しました。これはアークテリクスにしかできない高度な技術です。

こうして開発に3年の年月を費やし、1998年に発表されたアークテリクス初のアパレル「アルファ SV ジャケット」は、その年のアウトドア製品の展示会で、業界に衝撃を与えました。

厳しいことで知られるゴア社のライセンスを、アパレル新規参入のアークテリクスが手に入れたことに加え、それまでのハードシェルジャケットに比べて、300gという大幅な軽量化に成功したことは。非常に大きな注目を集めました。

「アルファ SV ジャケット」の誕生以降も、アークテリクスは理想とする製品作りに必要な素材を、次々とゴア社と共に開発し、長い年月を経た現在も、さらに深いパートナーシップで結ばれています。スタート時の2社の間には、与える側と恩恵を受け取る側という関係が成り立っていましたが、繰り返されるコミュニケーションのなかで、ゴア社にとってもアークテリクスは、多くのものを与えてくれる存在へと変わっていきます。

今では、企業の垣根をこえて、ものづくりのもっとも深い部分に互いが入り込み、同じ目線でアイデアを共有し刺激しあう関係へと進化しました。それは、ゴア社スタッフの「我々は、アークテリクスのプッシュによって、次々とイノベーションを作ることができている」という言葉からも、確かに感じ取ることができます。

アウトドアウェアの「耐久性」が意味するもの

時代の変化に合わせて、素材やデザインのアップデートを重ね、9代目となった「アルファ SV ジャケット」。使用するGORE-TEX素材も進化し、現行モデルに採用されている「GORE-TEX PRO most rugged technology」は、アークテリクスのリクエストにより開発された、GORE-TEX史上最高の耐久性を備える素材。油汚れによる剥離への耐久性を、透湿性を損なうことなく大幅に向上させることに成功しました。

ハードシェルの耐久性というと、引き裂きや摩耗などが頭に浮かびますが、着用や手で触れることによって素材に染み込む汗や皮脂が、メンブレンと生地のラミネートに与えるダメージが、製品の耐久性を下げる大きな要因となるのです。

アークテリクスは、なぜここまで徹底して、製品の耐久性にこだわるのか。

それは、厳しい環境からユーザーを守るというアウトドアウェアの使命だけでなく、丈夫で長く使えることが、環境への負荷を減らすということを常に意識しているからにほかなりません。

長持ちさせること以外にも、製造時の水やエネルギーの使用量を大幅に減らす染色法「ドープダイ」や、リサイクル素材の積極的な採用など、環境負荷を減らすアプローチにも取り組んでいます。ムダをそぎ落としたデザインや、いつの時代も自然の中にあるカラーを取り入れることも、時間を越えて長く愛されるものが、最後には地球を守ることを理解しているからです。

長く愛用するために「使い手」にできること

環境のために行なう取り組みは、「作り手」だけの力では成し遂げられません。製品の魅力を理解し、長く行動を共にするパートーナーとして手に入れた「使い手」にも、しなくてはならない、大切なことがあります。

それは、製品の機能を充分に活かすためのメンテナンス。「洗濯をする」ということです。

ウェアを買い替える大きなきっかけは、「以前のような快適性が得られなくなった」などの機能低下への不満でしょう。アークテリクスのGORE-TEXウェアは、目的やシーンに合った製品を選んでいれば、使用中のダメージに神経質になる必要はありません。

ただ、ウェアの汚れで本来の機能が発揮できないと、驚くほど快適性が低下してしまいます。日常で使う衣類なら、汚れで気になるのは見た目やニオイなどでしょうが、ミクロ単位で水や空気をコントロールしている防水透湿素材にとって、繊維に付着、浸透する汚れは致命的。逆に言えば、洗濯をするだけで元の機能を簡単に取り戻すことができるのです。

ハードシェルは、普段着のコートとは違います。1シーズンに1度のクリーニングではなく、雨や雪、汗や皮脂、泥や土埃で汚れたと思ったら、その都度洗うのが正解。最初は抵抗があるかもしれませんが、シェルはクリーニングに出すよりも、洗濯機によるメンテナンスが向いています。

「こまめな洗濯」を前提に作られているので、汚れや傷みを気にして使うのを控えたり、汚れが目立ちそうなカラーをあきらめたりする必要はありません。どんどんフィールドに連れ出し、思い切り自然を楽しんで、思い切り汚してしっかり洗う。ほんの少しのコツと注意事項さえ最初に頭に入れてしまえば、だれにでも簡単にでき、気持ちよく清潔に着られて、長く使えるのなら、そして、それが環境を守ることに繋がるのなら、洗わない理由は何ひとつ見つからないはず。

大切なカメラやバイクをメンテナンスするように、お気に入りのアクセサリーを磨くように、シェルを洗うことを楽しみましょう。

それでももし、洗濯や仕上げに不安があったり、傷んでしまったウェアのメンテナンスに迷ったりしたら、アークテリクスのブランドショップを訪れてください。アークテリクスのスタッフは、ワクワクする新製品の話と同じくらい、古く汚れたウェアが見てきた景色の話を楽しみにしています。

キャンペーンもお見逃しなく

11月1日からアークテリクスではゴアテックスキャンペーンを開催。期間中対象のゴアテックス製アパレル製品をお買上で、専用の洗濯洗剤を先着順でプレゼント。さらに購入証明を添付して応募すれば、アークテリクス契約ガイドと行くトリップやスペシャルエディションのタンブラーが抽選で当たるキャンペーンを実施中。

同時に、アークテリクス直営店では、ReCAREとしてDrop&Washサービス(有料)を実施。お持ち込みになったアークテリクス製ゴアテックスアパレルを店舗スタッフが検品し、アウトドアウェア専門クリーニング店にて洗濯してもらえるサービスを期間限定で行います。

取材・原稿:小川郁代
協力:アメアスポーツジャパン株式会社