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No Totebag, No Hike! トートバッグの使い方はあなた次第
私たちの身近にあって、だけれども深くは考えたことのなかった「トートバッグ」という存在。しかしその歴史を紐解き、機能性を深掘りすれば、山にこそ持っていきたい多機能ギアであることが見えてきました。今回の旅する道具偏愛論は、低山トラベラー大内征氏がトートバッグについて、徹底的に語ります。明日からでも気軽に実践できる活用法は必見です!
低山トラベラー大内征の旅する道具偏愛論 #12/連載一覧はこちら
目次
意外と知られていないトートバッグの成り立ち
登山をするぼくらにとって、荷物を背負って運ぶための道具はザックだ。ところがアウトドアをきっかけに生まれた、さらにシンプルにしてタフな運搬道具が、この世には存在する。それが今回のテーマに選んだ「トートバッグ」である。
なんだよ、トートかよ!
って思った人、ここで離脱せずにもうしばらく話に付き合ってほしい。
そもそも“tote”とは、英語で“運ぶ”とか“背負う”とかを意味する俗語。キャンプなどで氷塊を運ぶ用途でつくられた「シンプルな構造で丈夫な生地でできた袋」がトートバッグの起源であり、これを世に送り出したのがL.L.Beanだった。そのブランドロゴがはいった厚手のキャンパス地のトートを、セレクトショップなどで見たことがある人は多いと思う。
※トートバッグのトリビアについて、より詳しく知りたい方はL.L.Bean公式サイトで詳細が解説されている。
じつのところ、ぼくはトートバッグが大好きでいくつも持っている。そんなに持ってても仕方ないじゃんと言われそうだけれど、それが偏愛というものなのだ。しかもかなり使い倒している。そんなわけでここからは、シンプルな構造にして丈夫な生地でできた袋こと「トートバッグ」について考察していきたい。もはやこれがなければ山旅は成立せず。No Totebag, No Hike!なのである。
トートバッグの使いみちに“正解”なし!
いまやアウトドアに限らず日常生活の中でふつうに使われているトートバッグ。登山はもとより、通勤、通学、買い物に稽古事……。暮らしに浸透しすぎている道具であるがゆえに、これを“特別な道具”として熱い視線をおくる人は、そう多くはいないと思う。しかしながら、山旅においてはかなり使えるアイテムで、ぼくのザックには必ず忍ばせてある。
トートバッグは構造がシンプルだから、アイデア次第で使い方は無限。加えて、どのブランドのトートも生地やプリントの種類に凝っていて多彩。大きさや形状は、それこそ多種多様だ。そういうところがTシャツと似ていて、選ぶのも楽しいしコレクションするのも楽しい。だからだろうか、Tシャツ大好きなぼくがトートバッグを好きになってしまったのも、やはり自然なことなのだろう。
持ち手の長さ、マチの広さ、コンパクトになる素材
さて、そんなトートバッグだけれど、購入時に注目したいポイントがある。登山に持っていくことを前提とすると、たとえばこんな具合だ。
①肩に掛けられるくらいの持ち手の長さ
トートバッグは持ち手の長さひとつで使い勝手が大きく変わる。それが長ければ手に持つことはもちろん肩掛けすることも楽ちん。つまり、持ち手が長いというだけで“2way Bag”になるわけだ。ちなみに、写真のように約25cmも余裕があれば、身長178cmのぼくでもストレスなく片手で肩掛けすることが可能。それ以上短いと肩に掛けるときにすこし面倒だし、それ以上長い場合は手に持ったときに地面で擦ってしまいがち。だいたい25cmが理想かな。
②衣類の仕分けも登山靴の運搬もできる10cm以上のマチ幅
たとえば登山口まで車でアクセスする場合、山行中に使わない荷物は車に置いていく。下山後に立ち寄る温泉セットなどは、こうしてあらかじめ分けておくと後々の行動がスムーズになってよい。ツアーなどでバス移動する場合も座席に置いておけるケースが多いだろう。
その際、使わないものをザックから出して散らかしていると、万が一他人のものと混じったときにややこしい。だからトートバッグのような大き目の簡素な袋がもっとも便利になってくる。山小屋に泊まって荷物をデポするときも同様で、自分の荷物をトートバッグにまとめておけば他人のものとごちゃ混ぜにならず安心できる。長い持ち手で口の部分を縛っておけばベターだ。
とくに冬場は着替える衣類の数が多かったり、ひとつひとつが厚手だったりするから、荷物がカサばるのだ。マチが広いと、そういうことの解決になる。夏山縦走のときなどは、下山してからサンダルに履き替えて登山靴から脚を開放したいだろう。そんな場合こそ持ってきたトートバッグに登山靴を収納して持ち帰る。まあ、大型のザックにしまえるなら、それにこしたことはないのだけれど。
③もっとも大事なのはコンパクトに持ち歩けること!
広げるとそれなりの大きさになるトートバッグだけれど、使わないときはクルクルっと丸めてザックに忍ばせておく。持ち手が長ければ、丸めたうえでぐるりと回して挟めて止める。真ん中のトートバッグは、その方法で固定した状態。向かって右側のものは自作したバンジーコードのストッパーでとめている状態。どちらも500mlのナルゲンボトルと同じくらいの大きさだから、ザックの片隅に無理なく入れておくことができる。
テント泊なら“頭”と“足先”で活躍!
せっかくのテント泊なのに、お気に入りのエアピローを忘れたときの失望感はものすごい。枕がないとよく眠れないのだ。そんなときはトートバッグの出番。着替えなどを丸ごと詰め込んでこしらえた枕は、意外と眠りやすい。スタッフサックはつるつる滑るし、目覚めると枕から頭が落ちて意味がないってことはよくある。その点、コットン製のトートなら適度に摩擦力があるからそんな心配はない。
足先が冷たいとき、ザックに両足を突っ込んで防寒の足しにするのはテント泊のテクニックのひとつ。トートバッグも同じように足先にかぶせれば、ちょっとした防寒対策にはなるだろう。そこに熱湯を入れたナルゲン湯たんぽがあれば最高にぬくい。
ザックの中の表側や背中側にさし込んで使う
このキューベンファイバー製のトートバッグの利点は、折りたたむと強度のあるシート状になることだ。それをザックの中に突っ込む。表側や背中側に充てて収納することで、中のゴツゴツした道具から背中を守ったり、表側の型崩れを防止することに役立てる。ぼくは写真のようにして愛用しているザックに突っ込んで使うことが多い。こうすることでフレームが入っていない軽量なザックもしっかり形状を整えることができるわけだ。
荷物を仕分けしたり、お土産を入れたり、帰り道でサンダルに履き替えたりする場合は、これを取り出して使えばよい。場合によっては座布団の代わりにすることや、食事のラグマット代わりにすることもある。そう考えると、使い方は本当にアイデア、というか閃き次第。こういう何気ない創意工夫こそが登山の楽しさのひとつだと、ぼくはいつも感じている。
重さを感じないほど超軽いトートバッグ
SEA TO SUMMITのULTRA-SIL NANO SHOPPING BAGは、その名の通りものすごい軽量のバッグである。広げれば容量25Lもあるので温泉セット用にバッチリだし、旅先で買ったお土産を入れるのも◎だ。ただ、中に入れる物の形状と重さには注意が必要となる。うっかり破ってしまいかねないほど、とても薄い生地だから。とはいえ耐荷重は20kgらしい。試してみたいけどちょっとこわい気もする。
バッグの隅っこについている小さなサックにくしゃくしゃっと丸めて収納すると、見ての通りの手のひらサイズとなる。ゴルフボールより少し大きい程度で、測ってみると26.5gだった。ゴルフボールがだいたい45gというから、その半分くらいの軽さ。持った感じがしないほど本当に軽い。
コンビニに行くときにはこれをポケットに入れて出かける。レジ袋代わりとしても優秀だ。山菜採りなんかにもよさそうではないか。
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と、こんな感じで考察してきたトートバッグ。アウトドア用品店ならさまざまなブランドのものを比較しながら購入できるから、気になった人はぜひお店に行って手に取ってみよう。ちょっと重しになるものをお店に借りて中に入れ、肩掛けしたり地面に擦ったりしないかチェックすることも忘れずに。
個人的にはこの記事のトップ画像に写っているパタゴニアのマーケット・トートがとっても熱い。毎年のように新作がリリースされているので、それをチェックしているだけでも楽しくなってくるし、いい柄が出るとついつい買ってしまう。やや縦長の形状にしてマチが15cmというのも、ぼくにとって理想的なサイズ感だったりする。
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文・写真
大内征(おおうち・せい) 低山トラベラー/山旅文筆家
低山トラベラー/山旅文筆家
大内 征
歴史や文化を辿って日本各地の低山をたずね、自然の営み・人の営みに触れる歩き旅の魅力を探究。ピークハントだけではない“知的好奇心をくすぐる山旅”の楽しみ方について、文筆・写真・講演などで伝えている。
NHKラジオ深夜便「旅の達人~低い山を目指せ!」コーナー担当、LuckyFM茨城放送「LUCKY OUTDOOR STYLE~ローカルハイクを楽しもう~」番組パーソナリティ。NHKBSP「にっぽん百名山」では雲取山、王岳・鬼ヶ岳、筑波山の案内人として出演した。著書に『低山トラベル』(二見書房)シリーズ、『低山手帖』(日東書院本社)などがある。宮城県出身。
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