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山ごはん初心者が覚えておきたい3つのマナー&片づけ楽チンレシピ
山ごはんを楽しむうえで押さえておきたい"山食"マナー、ご存知ですか? 音やニオイの注意点、片付けのコツ、ゴミのまとめ方など。山ごはんの基本マナーを知ることは、他の登山者や自然、動物への配慮につながります。逆にマナーを守らなかったことで、思わぬ危険を招いてしまうことも。山ごはんのマナーと、片付け楽チン山ごはんレシピ2品「梅かつお炊き込みご飯」と「さば缶のスタミナキムチ鍋」を紹介します。
ヤッホー‼さん&shihoの山ごはんを始めよう #04/連載一覧はこちら
目次
山ごはんにルールはない! でも…
ヤッホー!!さん:今回のテーマは山ごはんのお作法ってことだけど、何を言えばいいか迷うなぁ、これまでずっと「山ごはんにルールはない!」と言ってきたから…(汗)
shiho:このお作法っていうのはルールではなくて、マナーとかエチケットっていう意味だと思うよ。だから「人に迷惑をかけない、人を不快にしない」っていうことを考えればいいんじゃないかな。
ヤッホー!!さん:そうか~。つまりは「他のハイカーへの配慮」ってことだね。それなら、前にも言った「安全への配慮」「環境への配慮」も加えるべきだろうね。
shiho:熟練のハイカーさんの中には、環境問題とかに厳しい人もいるから、そこはしっかりと踏まえておかないと、トラブルのもとになるでしょうね。
ヤッホー!!さん:それだけじゃない。実は食べ残しの生ゴミなどが原因で起こる、熊など野生動物の被害だって知っておきたいところ。自分の身を守ることにもつながるってことを伝えたいな。では、この機会に山ごはんのお作法を考えみよう。
山ごはんのマナー① 音・ニオイで他のハイカーへ迷惑をかけない!
shiho:他人に迷惑をかけないというのは、山ごはん以前の問題かもしれないけど、迷惑になるかならないかって、その世界の「常識」を知らないと気付かないこともあるよね。本人にその気はなくても、知らないうちに迷惑になっているなんてことも。
ヤッホー!!さん:そうだね。例えば、夜の山はとても静かだからテント場や山小屋はちょっとした音でも大きく聞こえる。調理の音は自分が思っているよりも周囲のテントに響くので、寝ている人がいたら迷惑になるよね。夕食は明るいうちに、朝食は明るくなってから準備するように心がけたほうがいい。スケジュール上、日の出とともにスタートしたいのであれば、前日のうちにおにぎりなどを作っておいて、朝食は簡単に済ませる。暗い中からガチャガチャと音を出すことは避けたいな。
shiho:昼間だって、周りの人が不快になるほど大きな声を出したり、休憩している人のすぐ近くで調理をしたり、長時間ベンチを独占するのも迷惑だよね。それと…ニオイにも気を遣ったほうがいいと思うな。
ヤッホー!!さん:肉好きの僕は、冷凍した厚切り肉を持って行って、山でステーキを焼くこともあるけど、かなりニオイが出ることは確かだね。
shiho:自然のきれいな空気を吸楽しみながら一休みしているハイカーの隣で、ステーキをジュージュー焼いてニオイをまき散らしては、やっぱり迷惑なんじゃないかな。
ヤッホー!!さん:こういったときは、できる限り他のハイカーから離れて風下に行き、ニオイのこもらない場所を探すことにしている。ヘトヘトに疲れていては他人に心配りが出来ないから、体力に余裕をもって行動することも大切だね。
山ごはんのマナー② 軽量・コンパクトなパッキングで山行に負担をかけない!
shiho:みんなに美味しい山ごはんを食べてもらおうと、張り切って準備したら、たくさんの荷物になってしまうこともあるよね。荷物が重くなるとその分、ペースが遅くなって、結局、一緒に登っている人に迷惑をかけちゃう人もいるんじゃないかな。
ヤッホー!!さん:やはりここでも自分の体力を知るということが大切。体力があれば重くかさばる食材を持っていくことも可能だよね。山行スケジュールに負担かがかかるほどの荷物は絶対に避けたほうがいいなぁ。
shiho:それで言えば、調理時間も短いほうがいいよね。みんなを待たせて、のんびり調理なんてNG。レシピを考える時には、どれだけ小さくパッキングできるか、どれだけ手早く調理できるかがポイントになってくるよね。調味料は家で用意して合わせておけば、かさばらないし、調理の時短にもなるから、きちんとこだわって、より美味しいものを作ったほうがいいと思うよ。
ヤッホー!!さん:我が家では基本、小型のクーラーバックを使って、そのなかにすべての食材・調理器具が入るように工夫しているね。
shiho:ぶっちゃけて言うと、こういった記事を書くために山ごはんを作る場合は、撮影用の機材や、美味しく見せるためのお皿など、普通では山に持って行かないものもたくさん持っていくので、かなりな荷物になるよね(笑)。だからこそ、より小さくパッキングできるレシピを考えよう!って心から思うよ。
ヤッホー!!さん:すべて背負うのは僕だけどね(笑)。
山ごはんのマナー③ ゴミ・食べ残しの放置はNG! 片付けまでが登山の食事
ヤッホー!!さん:「火気の使用が許されてないところでバーナーを使ってはいけない」とか「ゴミは家に持ち帰ろう!」なんてことは当然すぎて、いまさら言うまでもないよね。
shiho:そういえば、果物を食べている人が、皮を山に捨てているところを見たことがあるよ。
ヤッホー!!さん:当人としては「自然に返るものだからゴミじゃない」と思っているのかもしれないけど、やっぱりそれは生ゴミだよ。そもそも山は低地より涼しく、微生物の動きが活発ではないから、生ゴミなどを分解しきれないことがあるんだ。みんなが山に生ゴミを捨ててしまえば環境破壊につながる。
そして、日ごろは自然界のものしか食べていない野生の動物が、捨てられた食べ物の味を美味しいと感じてしまうと、その後ハイカーを襲って食べ物を取ろうとすることだってあり得るんだ。最近でも、後片付けをちゃんとやっていなかったがゆえに、登山者が熊に襲われた例もある。こうなると他人への配慮どころか、自分の身を危険に晒すことになるんだ。
shiho:「ゴミは家に持ち帰ろう!」ではなく「すべて家に持ち帰ろう!」ってことだよね。
ヤッホー!!さん:そう、食器(鍋)を洗った排水を流すのもNG。だから、食器は一切洗わない。例えば、ラーメンを食べた時にはスープまで残さずに飲んで、食器をティッシュ(トイレットペーパー)で拭いてから、袋に入れてそのまま持ち帰るんだ。
shiho:ちょっとした工夫も知っておくと役立つよね。例えば、
・食材・調味料は小分けにして持っていく
・そもそも飲めないような汁の量にしない
・万が一残ってしまった汁物は水分を入れてきたボトル容器などに入れて持ち帰る
・ゴミをまとめられる予備のビニール袋(ジップ付きだとなお良し)、ゴミを束ねられる輪ゴムを携帯する
・山行が長くなる場合は、外付けできるゴミ専用のバックを持っていく
なんかはすぐにできることだよね。いずれも、ニオイや汁を外に漏らさず、できるだけコンパクトに後片付けをするってことが一番の目的だね。
shiho:パスタのゆで汁も捨てることはできないから、第2回の記事で紹介した「鶏肉とねぎの和風パスタ」のように、ゆで汁を出さないような調理法で作る必要があるよね。こういった工夫も、家ごはんと山ごはんの大きな違いの一つだね。
片づけ楽チン山ごはんレシピ① 〆まで美味しい梅かつおの炊き込みご飯
shiho:ここからは、私がレシピをご紹介します。まずは梅かつお炊き込みご飯。炊き込みご飯は、鍋にご飯がこびりつくこともありますが、〆でお茶漬けにすることによって、鍋をきれいにして、後片付けしやすくなります。
*材料(1~2人分)
無洗米:1合
水:230ml
梅干し:2個
(減塩タイプではないもの)
白だし:大さじ1
鰹節:1パック(2.5g)
白ごま:小さじ1
*つくり方(調理時間:25分)
【下準備】無洗米に水を入れて30分以上浸水させておく
※ナルゲンボトルで浸水させておき、あまり動かさないようにパッキングして持ち運べば、山頂ですぐに調理に取り掛かることができる
【1】浸水させておいた米と水を鍋に移し、白だしも加えて軽く混ぜ、平らにならす
【2】梅干しを置いて蓋をして、中火~強火にかける
※沸騰の状況が分かりづらい時は、数回程度なら蓋を開け閉めしても出来上がりには影響はありません。
【3】沸騰して噴きこぼれそうになってきたら、弱火にして13分加熱する。お焦げを作りたい場合、最後は強火にして30秒ほど加熱する
【4】火を止めて10分蒸らす
【5】鰹節・白ごまを加え、梅干しをほぐしながら全体を混ぜる(種は取り除く)
【6】〆にお茶漬けにする
ヤッホー!!さん:炊飯はちょっと時間がかかるけど、その分、本当に美味しいご飯が食べられる。最後にお茶漬けにするのがいいよね。
shiho:あっさりした味付けの炊き込みご飯なので、から揚げ(コンビニのものなどでOK)に刻みのり・温かいお茶をかけてお茶漬けにすると、違った味わいを楽しめるよ。
片づけ楽チン山ごはんレシピ② さば缶のスタミナキムチ鍋
shiho:鍋は山ごはんに欠かせないメニューです。主食・主菜・副菜がカバーできるので、栄養バランスも整いやすいし、ごはんや麺などを入れて〆を楽しめば、汁まで残さず食べることができます。
*材料(1人分)
さば味噌煮(90g入りパウチ):1袋
鍋用カット野菜:1人分
にんにく:1片
鍋の素(キムチ味):1個(キューブや濃縮タイプのものが便利)
水:200ml
白すりごま:大さじ1
ごま油:大さじ1
塩・こしょう:適宜
*つくり方(調理時間:10分)
【下準備】にんにくはシェラカップなど硬いもので潰しておく
※皮つきで潰せば、カップも汚れにくく、皮もむきやすい
【1】鍋にごま油とにんにくを入れ、弱火にかけて香りが出るまで加熱する
【2】水・鍋の素を入れ、火を強めて沸騰したら鍋用野菜・さば水煮・白すりごまを加え、野菜に火が通るまで煮込む。味を見て足りなければ塩・こしょうを足す
【3】〆にご飯、うどん、中華麺などを入れて食べる
shiho:野菜は皮をむくと廃棄が出てしまうから、ゴミを少なくするためにはカット野菜を使うと便利。彩りも良いししっかり洗浄・消毒されているので衛生面でも安心。
ヤッホー!!さん:にんにくやキムチを食べると元気が出て、どこまでも登っていける気がする。〆にうどんを入れたら汁まで残さずに飲めるね。
shiho: 食べ終わった後、鍋やカトラリーなどはペーパーで汚れをぬぐって袋などにひとまとめにしておく。ゴミはなるべくコンパクトに折りたたんで、汁気や臭いが出ないようにジップ付きの袋にまとめておくといいね。
shiho:いかがでしたか? 今回は山ごはんのお作法を考えてみましたが、自然や山が大好きな人からとっては、ごく当然のことばかりだったと思います。
ヤッホー!!さん:人にも自然環境にも配慮しながら、楽しい山登り&山ごはんを楽しんでください。
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管理栄養士・山の料理研究家
ヤッホー‼さん&shiho
登山ガイド・ヤッホー!!さんと、アウトドア料理研究家・shihoさんによる「山ごはん」ユニット。共に管理栄養士の資格を持ち、登山経験も豊富。各種メディアやイベントを通じ、山ごはんの楽しさを広めている。現在ヤッホー‼さんが「山の炊き込みごはん」365日連続投稿に挑戦中! https://www.instagram.com/ikiikitozan/
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