これからの登山文化をつくるメディア

阿蘇 一ノ峯~冠ヶ岳登山 峰をつないで花畑の尾根を歩く|阿蘇の登山ガイド #04

南阿蘇郡西原村から取り付き、一ノ峯・二ノ峯を経て至る冠ヶ岳。阿蘇外輪山の南西側に位置し、天気の良い日には、頂上から外輪山や阿蘇五岳の絶景を眺めることができます。また、登山口からニノ峯まで、穏やかな山容に伸びる一本道もこのルートの魅力。山頂だけではない、尾根歩きも楽しい山旅の様子をお伝えします。

2019.11.25

米村奈穂

フリーライター

INDEX

眺望と花を楽しむ稜線歩き

ラクダのコブのようにきれいに二つ並んだ峰。阿蘇南外輪山の西端に位置する俵山に登った時、山頂から南西に見えた不思議な山容に目を奪われた。山の中なのに、まるで海が波打っているようにも見える。地元の方に聞くと「一ノ峯、二ノ峯ですよ。一ノ峯からこの俵山や隣の冠ヶ岳へも登れます。秋は野の花がきれいですよ」と教えてくれた。魅力的な山容を見ると歩いて確かめたくなる。季節は9月、ちょうどマツムシソウの頃だ。一ノ峯から登り、二ノ峯、冠ヶ岳へと南外輪山の稜線まで足を延ばし、峰をつないで歩いてみることにした。

一ノ峯山頂から二ノ峯へ続く尾根道を見下ろす。ゆく道が見えると歩みが進む

阿蘇は九州外からのアクセスも良好

一ノ峯の登山口までは熊本空港から車で30分。飛行機を降りてわずか30分で登山口というアクセスの良さは魅力だろう。九州に住んでいると気がつかないが、阿蘇の山々は意外にも県外からのアクセスが抜群なのである。

一ノ峯は登山口が分かりにくいと聞いてはいたけれど、南外輪山の西山麓、西原村宮山の奥の細道をYAMAPの地図頼みで行きつ戻りつしながらなんとかたどり着いた。花の見頃だからか、朝7時前にも関わらず駐車場にはすでに先客が5台ほど止まっていた。これは期待できそう!

登山口から一ノ峯までは1本道が続く。誘われるように山頂へと足を進める

一ノ峯・二ノ峯をつなぐ花の道

駐車場先の左手に、見逃してしまいそうなくらい控えめな看板がある。そこから少し登るとすぐに、熊本市内が一望できる大展望となる。まだ低い朝日に目を細めながら登って行く。足元にはポツポツとマツムシソウが顔を出す。最初はその都度足を止め写真に収めていたけれど、次第に数えきれないくらいの群生に。まずは一ノ峯を目指して先を急ぐ。われわれを誘うように一本道が山頂へ続く。振り返ると草原の中を登山者が登って来ているのがはっきりと見える。上下前後左右、とにかく見晴らしがよく気持ちいいスタートだ。

道の両脇にマツムシソウ。長い首をこちらに向けて「見て見て」と語りかける

一ノ峯山頂から次のピーク二ノ峯を見下ろす。どこまでも歩けそうな気がしてくる

尾根に上がると、いよいよ登山道は両側マツムシソウの花道となる。見とれているうちにあっという間に一ノ峯山頂に到着した。右手にはアイスクリームのように滑らかな尾根と谷が広がる。目の前には次なるピーク二ノ峯が。さっきから地図をほとんど見ていなかったことに気づく。このルートは、これから歩く道を目で確認できるのだ。足元には秋の野の花、目線にはススキたなびく尾根道。スキップでもしてしまいそうなくらい足取り軽く進む。二ノ峯山頂には大きな岩が二つ。上に登ってみるとさらに視界が広がる。遠くに雲仙も見える。もうここまでで十分と思える展望と花たちの歓迎。しかしここは阿蘇。冠ヶ岳を目指して外輪山の上に登り、反対側に見えるであろうTHE阿蘇の景観を見なければ。

センブリ。胃腸薬として煎じて飲まれる薬草で、湯の中で千回振り出してもまだ苦いことから「千振」

線香花火のようなヤマラッキョウのつぼみ。その名の通り食べられる。山では見て楽しみましょう

ホソバノヤマハハコ。名前の由来は諸説あるが、愛らしい花が子。花を支える綿毛をまとった優しい茎が母と勝手に思っている

冠ヶ岳山頂から眺める阿蘇の絶景

二ノ峯から先の道は、先ほどまでの牧歌的な雰囲気とは打って変わりひたすらガレ場を登る。鉄塔を過ぎた先で右手の取りつきからヒノキ林へ入り、暗い森の中をしばらく進む。二ノ峯までにしておけばよかったかな…などと考えながらうつむき加減で登っていると、南外輪山縦走路に合流しホッとする。背丈ほどあるスズタケの道を抜けると急に視界が開け、ガラッと景色が変わった。正面には噴煙をモクモクと上げるTHE阿蘇の景観が。やっぱりここまで来てよかった。阿蘇登山は、阿蘇五岳そのものに登るか、山の上から阿蘇五岳を眺めなければ始まらない。途中、再び足を取られそうなガレ場の急登やハシゴを通過し冠ヶ岳山頂へ。ベンチもあり広々とした頂上には子どもたちのグループや、年配のご夫婦が。冠ヶ岳の南東側にある地蔵峠登山口からだと1時間半ほどで登ることができ高低差もさほどなく登りやすいそうだ。

阿蘇五岳を背に登る。左端が杵島岳、中央に尖った烏帽子岳、噴煙を上げる中岳の横に高岳、右端にギザギザした根子岳

下山路は、西の尾根から周回して下る予定だったが、林道に出た先のピークにつられ登ってしまい、最後は舗装路を永遠と歩くことに。

しかし、西陽に照らされた草原の丘の間を抜けるこの道の景観が見事だった。右手に今日登った道程が確認できる。一ノ峯の上にはまだ登山者の姿が。花散策をしている人だろうか。そんな風にのんびりこの辺りを歩くのもいいかもしれない。ずっとこの景色の中を歩いていたい気分だった。

ゴソゴソっと音がしたかと思うと草原から牛が出て来た。われわれの後ろを追いかけてくるというには遅すぎる速度でついてくる。牛歩戦術とはよく言ったものだと笑っていると、諦めたのかすぐに姿が見えなくなった。お花畑の尾根歩きに、阿蘇五岳の大展望、輝く草原、牛との遭遇。阿蘇のフルコースを味わえた1日だった。季節を変えて何度でも訪れたい道をまた一つ見つけた。

帰り道、一ノ峯、二ノ峯のふたコブが並んで見えた

草原に牛の姿は、牧歌的な阿蘇登山になくてはならないもの

一ノ峯(857m)・冠ヶ岳(1,154m)

一ノ峯は阿蘇南外輪山縦走路の西山腹に、冠ヶ岳は縦走路に位置する。一ノ峯とその先の二ノ峯までは特に危険箇所はない。冠ヶ岳への縦走路中に足元が滑りやすいガレ場があるので要注意。山行タイムは一ノ峯から冠ヶ岳への周回で約4時間半。ただし、下山路が分かりにくい。今回は冠ヶ岳の西尾根から鉄塔の下に出て、その先の1,040mのピークを越え林道を下った。冠ヶ岳単体であれば、地蔵峠登山口から登られることが多い。一ノ峯の登山口にも、地蔵峠登山口にもトイレはない。

下山後のお楽しみ

俵山交流館 萌の里

熊本市内から南阿蘇へ向かう最短ルートの俵山トンネルルート。そのトンネルを抜けたすぐの場所にある。地元の新鮮な野菜や果物、名産品の販売の他、季節の味を楽しめるオリジナルソフトクリームも人気。9月下旬から10月にかけては、目の前の丘に100万本のコスモスが咲き乱れる。俵山の登山口でもあり、山々を眺めながらピクニックを楽しむ人も多い。
住所:熊本県阿蘇郡西原村小森 2115-3
TEL:096-292-2211
Webサイト:https://moenosato.net/
営業時間:9:30~17:30
休日:不定休

阿蘇五岳

阿蘇カルデラの中央に連なる火山群、烏帽子岳、杵島岳、中岳、高岳、根子岳の総称。稜線がお釈迦様の寝姿に見えることから「涅槃像」とも呼ばれる。

米村奈穂

フリーライター

米村奈穂

フリーライター

幼い頃より山岳部の顧問をしていた父親に連れられ山に入る。アウドドアーメーカー勤務や、九州・山口の山雑誌「季刊のぼろ」編集部を経て現職に。